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同期演奏の備忘録

 ライブに同期演奏を取り入れてから約3年が経とうとしているので、自分の経験から書き残しておいた方が良さそうなことをここに記しておく。
 ちなみにここで言う同期演奏は、予め用意しておいた音源に合わせて演奏することを指す。
 Ableton Liveで実現できるらしい、人間の演奏に音源が追従するような方法ではない。


メリット、デメリット

 同期演奏の手段は何通りも存在し、初期費用もかなり抑えられていることに対し、同期演奏を取り入れるバンドはかなり少ない。
 特にインディーズバンドではほとんどいないのではないかと思われる。
 これが何を意味するか、察しの良くない方でも分かるだろう。
 以下に挙げた通り、メリットに対してデメリットが多過ぎるのだ。
 しかもここに挙げたデメリットから派生するデメリットがいくつも存在する。

メリット

  • 準備さえすればどんな音でも出せる。

  • 人数以上の音圧を稼げる。

デメリット

  • 準備が面倒臭い。

  • やり過ぎるとカラオケっぽくなる。

  • クリックに合わせながら演奏する必要がある。

  • トラブルの要因を増やすことになる。

  • 転換の時間が延びる。

 正直なところ、相当なこだわりがない限りは同期演奏なんてするべきではない。
 特にサイケデリックなスリーピースバンドや勢い重視のパンクバンドなんかは良さが失われる可能性の方が高い。
 絶対に同期音源が必要だと確信できるなら是非とも試してみて欲しいが、あまりおすすめはしない。

必要な機材

 極論だが、音を出力できれば何でも良い。
 が、人間というのは選択肢が多過ぎると何もできなくなるので、以下に一応の選択肢を提示しておく。

MTR

 どこでも誰からでも推奨される。
 すなわち、導入することも運用することも簡単で、多数の人に信頼されている手段ということである。
 なので迷ったらとりあえずMTRを使っておけば良い。
 自分もMTRを採用しているが、個人的に何が良いかと言うと、一つの機器で完結すること、壊れにくいこと、ボタンで操作できることである。
 これはライブでは何が起こるか分からないので準備も操作も極力簡素にすべきという考えによる。
 トラブルが起きた場合、原因をできるだけ早く判断する必要があるので、その原因となりうるものはとにかく少なくしたいのだ。

オーディオインターフェース

 元々DTMをやっていて、わざわざMTRなんて買いたくねぇよっていう人はそのままオーディオインターフェースを使えば良い。
 だって音が出るし。出力も標準プラグやし。
 ただ、PCやタブレット、スマホなどと接続しないと使えないことや、操作がボタン一つという訳にはいかないのがMTRより難易度が上がってしまうところである。
 まぁ慣れれば何の問題もないはず。とにかく音が出たら良いので。

同期音源を出力する機器の使い方

 これはMTR、オーディオインターフェース、どんな機器でも同じになる。
 とにかくシンプル。
 同期音源とクリックを出力できれば手段は何でも良い。
 同期音源をモノラルにしてLRの片方に、クリックはもう片方に、というやり方もあるし、機器の機能によってはクリックだけを独立して出力することもできる。
 その場合は同期音源をステレオで出力できるので表現の幅が広がる。
 とにかく同期音源とクリックを出力すれば良い。
 それだけである。

同期音源の作り方

 これは目的によるが、バンドの生演奏と合わせるということを前提にすると、特殊な効果を求めない限りは基本的には以下のことを守れば良いと思う。

非圧縮で書き出す。

 圧縮すると特定の帯域がカットされて、生演奏と合わせると不自然になるかもしれない。

全曲の最大音量を揃える。

 可能であればVUメーターで揃える。
 曲によってバラバラというのは意図がない限りはやめておいた方が良い。
 PAさんも困るし。

EQはかけない。

 イコライジングした音源は生演奏と合わせると不自然になりやすい。
 例えばバッキングギターの低音をカットしてしまうと音源では気にならないが、ライブハウスの爆音で聴くと綺麗過ぎて浮いてしまう。
 勿論、意図があれば構わない。

コンプレッサーはできるだけかけない。

 ただし、あまりにも音量差が激しい場合はかけても良いし、リズミカルなフレーズなら逆にかけた方が良い。

コーラスの音量は思っているよりも少し大きめにする。

 ハイハットやシンバルによってかき消されやすいので。

補足

 補足に過ぎないが、生演奏とより馴染むような同期音源を作る場合は以下を心がけると良い。

リフやソロのような目立つフレーズは入れない。

 反対に、効果音などの装飾的な音やギターのバッキングなどの伴奏は積極的に入れる。
 輪郭のはっきりした目立つフレーズを同期音源で鳴らしてしまうとカラオケっぽくなってしまう。
 伴奏は音像を厚くしてくれるので入れておいて損はない。

特に狙いがなければパンは固定する。

 生演奏でパンが変動することはまずないので。

ハイハットやシンバルなど、金物を入れるのは避ける。

 いかにも音源から鳴っているという音になりやすく、かなり違和感が出てしまう。

最後に

 同期演奏は使い方によって毒にも薬にもなるので、使えば必ず良くなるというものではなく、あくまで手段に過ぎない。
 自分の目指す演奏に同期演奏が必要なら是非とも手段の一つとして取り入れてみて欲しい。

写真:https://www.instagram.com/yui.kita26/

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