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NO成長,NO存続。 企業の「成長戦略」について掘り下げてみたよ、という話。


経営どころかマーケター0年生のアラフォーです。今年度より社内の経営戦略勉強会「Tribal Professional Academy」、通称「TPA」に参加しています。そして、地図も持たずによくぞビジネスの世界を生きてきたものだと、いまさらながら震えています。

「TPA」の第2回、テーマは「成長戦略」です。

前回の講義のはじめに、講師であり私たちの代表の池田(@ikedanoriyuki)が言ったこと。

「経営者にとって最も重要なことは、企業を存続させること」

ともすると“経営”というと、収益を上げたり、競争を勝ち抜いたり、ステークホルダーに応えたりすることを目的としていると考えがち。(私だけ?)けれど、経営の本質的な目的は「企業の存続」

成長戦略を考えるとき、この前提は重しのように効いてきます。そして、もうひとつ重要な真理。

「成長なくして存続なし」

経営の最大の目的が「企業の存続」とするならば、生き残るための唯一の方法こそが「成長」、ということになります。

どんなに安泰と思われる事業も、人の一生同様もいつか必ず衰退するもの。(この考え方の元に設定されている戦略フレームが「PLC」:プロダクトライフサイクル)

よって、断続的に事業の現在地を確認し、さらに永続的に全体を成長させていかなければ、企業は継続しない、ということ。いわば「NO成長・NO存続。シビアだけれど、これが真実。成長戦略は生命線ということになるんですね。


経営戦略全体像と成長戦略

さて、企業を存続するため、何をして、どのように成長すべきか? を検討するのに役立つツールが「成長戦略」の理論やフレーム。 

経営戦略の全体像に位置付けるとこんな感じ。(手書きで失礼!)

成長戦略(=戦略)はベクトルなので、起点と終点を決めないことには検討が始まらない。


ミッション:なぜ目指すか?(WHY)
ビジョン:どこを、いつまでに目指すのか?(WHERE,WHEN)
戦略:どのようにビジョンに到達するのか?(HOW)
組織:戦略を遂行するための配置
バリュー:戦略を遂行するために定義する自分たちのアイデンティティー
カルチャー:バリューを下支えるの企業文化

戦略は環境によって左右されるため、組織(人事)は固定ではあり得ない。また、カルチャーによって定義したバリューを実現できるのかどうかが左右される。

ちなみに。
カルチャーこそが今後、最も模倣困難な競争優位の源泉、というのは池田(@ikedanoriyuki)の言。上の図をささっと書いて、我々がどこに、どうやって、なぜ、行くのかをことあるごとに全社に話します。


数々の企業で働いてきたけれど、トライバルメディアハウスは、この「カルチャー」を大切に育てていると感じています。この経営戦略勉強会もそんな「トライバルらしい」カルチャーのひとつなのですね。


生き残りをかけて。成長戦略理論を考えるツール

というわけで、成長戦略理論は歴代の大家が様々な熱のこもったコンセプトや理論、フレームを設定している。
おおよそは自社の強みになる経営資源を見極めて市場に目を向け、戦い方を決めるための手法と言えそう。超有名なのでここではメモメモメモ。

【前提】


RBV(リソース・ベースド・ビュー):競争優位の源泉は企業内部の経営資源にあるという考え方

【己を定義する】


ドメイン:自社の強みが適用できることを前提として設定できる「戦いの場」。”心中したい相手”とも言える。
例)カゴメ:トマト リクルート:情報流通 トライバルメディアハウス:ソーシャルエコノミー

【己を知る】


コア・コンピタンス:企業の中核となる強み
ケイパビリティ:バリューチェーン全体に及ぶ組織能力
上記2つのコンセプトは、無形の経営資源として模倣困難性が高いのが特徴
VRIO分析:組織がもつリソースの有効性をチェックするフレームワーク。
①Value(経済価値)に関する問い
②Rirty(希少性)に関する問い
③Imitability(模倣困難性)に関する問い
 ー独自の歴史的条件(時間圧縮の不経済性、経路依存性)
 ー因果関係の不明性(暗黙知とか組織文化とか)
 ー社会的複雑性(カルチャー)
④Organization(組織)に関する問い

資源とか利権とか壮大な歴史を有している企業には対抗できようがない(①②)。つまり、多くの場合は③が企業にとって中長期的な優位性に関わる、ということ。カルチャーって、働きやすいとか肌が合うとかではなく、成長の源泉なんだなあ、まさしく。


【成長戦略を考える① 全社の資源配分を考える】

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)
事業別に「その事業はキャッシュが必要か」「その事業はキャッシュを生み出すか」の2軸で事業への投資判断を行うツール。各事業バランスよく配置され、絶え間ない成長の流れを作れそうかを見極めることが大事。
PLC(プロダクトライフサイクル)
どのような製品やサービスも人間同様のライフステージ(導入期・成長期・成熟期・衰退期)がある、という考え方。事業ごとの市場成長率と投下資金を見える化するツール、と言えそう。


【成長戦略を考える② 戦い方を決める】


アンゾフのマトリクス
新規事業の方向性を考えるためのツール。4象限の成長マトリクスで表される。
魅力度×優位性マトリクス
アンゾフのマトリクスで定めた方向性を、具体的に狙いを定めた市場に参入するかどうかを決定するためのツール。「市場の魅力度」と「競争優位の可能性」の2軸で成功の可能性がある複数の戦略代替案を検討するのが代表的。狙いたいのは右上。市場の魅力度(規模、経済性、収益性など)×競争優位構築の可能性大(市場占有率、相対的収益性、シナジー、組織文化)


こうしてみると、初めて読んだ前回よりもずっとずっと、解像度が上がってる!わーい!


”餅は餅屋”では生き残れないから。


今回の課題図書「成長企業の法則」では、ずっと不思議だった新規事業の「多角化」展開に対して、成長戦略の観点から触れていたので最後に。

本書ではグローバルに成長している企業(G企業)の特徴を、頭文字「LEAP」をとって定義しています。それぞれの頭文字に2つずつ意味が持たされており、前者は静的な特長、後者は動的な特長を定義づけられています。

概要はTPAチューターをしてくれている亀ちゃん(@kameidaiki) によるこちらを。

不思議に思っていたこととは、突拍子なく思われる新規事業を選ぶ企業達のこと。古くはダスキンがミスドを。ワタミが介護を。本業とシナジー効くの!?という疑問は、成長戦略理論をちょっとかじったぐらいではモヤモヤが晴れない。きっと第三者からは見えない、よっぽどのナレジがあるんでしょう……


そんな中、本書では上記のような静的な要素と動的な要素の二律背反を有する成長企業にも性質別に2種類が存在すると言っています。

クオリティ企業:トヨタ、アップルなど
オポチュニティ企業:グーグル、リクルートなど


クオリティを重視しながらも軸を「ずらす」ことで成長し続けるじっくり大きく飛躍する「クオリティ企業」に対して、機会に飛びつき素早く高く飛躍する「オポチュニティ企業」。驚くような新規事業展開を繰り出すのは、もちろん後者。


この性質の違いもやはり「カルチャー」に起因するものなんでしょう。そして何より、企業存続を賭けた成長戦略として、考えに考えた結果、決して奇策というわけではなさそうです。

そういう不思議を知りたくて、特定企業のビジネス本なんかが出版され、売れているんだなあ。新卒でビジネス書を編集していた私は、20年も経ったいま、やっと気づいたのでした......。


ああ、まだ入り口にも立ってないなあ、マーケティング。仲良くしてね!


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