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AIとやってみた 第1111話・2.18

「さて、帰ろう」と緊張感が高い用事が終わったので、ついつい声に出してつぶやくと、突然至近距離で機械的な電子音のような音が聞こえる。「帰ろうというのはどういうことだ」「何?」もう一度声を出す。するとその声に反応したのか、突然エコーが聞いたような声が聞こえるのだ。
「帰ろうというのはどういうことだ」
「はあ、今から家に帰るんだよ。ていうかお前誰だ?」突然話しかけられた相手、不気味な周波数音階の電子音で話しかけられたのも不愉快だし、そもそも相手が見えない。そのうえ余計な質問をぶつけられたものだからいよいよ不機嫌がアップする。
「帰ろう」声に出さずに心の中で唱えると、そのまま家に向かって歩き出す。

すると「帰るなら家庭から家庭への伝統的な儀式を新しい視点から解釈して、新しい帰宅の文化を創出するのはどうだ」と言ってきた。
 そもそも訳のわからないことを言っているし、向こうが名乗りもしない相手だ。名乗らないどころか存在すらわからない。いったいどの方向から聞こえる電子音だろう。方向がわからない。前後左右どこから発している音なのかまったくわからないのだ。
「ではこれでどうだ」電子音が勝手に話しかける。慌てて後ろを向くがやはり誰もいない。直後に「帰宅する際の交通や時間管理を検討し、週毎や月毎の新しい家族活動を作る」と言い出す。
「???」何を言っているんだ。わからない。何を言っているんだ。家族活動とは?いったい何者、ロボット、それとも今話題のAIか?

「次に冷たい環境や家庭の心配を軽減するパッケージのサービスを提供することで、家族帰宅を促進する」謎の電子音は理解できない状況下に、こちらがパニくっていることをあざけるかのように意味不明なことを言い出す。
「クソ、こいつ!」俺は相手をせずに無視を押し通したかったが、どうもそれが出来なかった。とにかくこの謎の声が一体、何を言いたいのか、またそのようなことを言い出したことに対して何を求めているのかが気になって仕方がない。

「おい、何が目的だ。お前はAIか、とにかくわかる言葉で話せ!」ついに怒鳴り声を出す。これで相手が威嚇できるのかはわからないが、どう反応が変わるか見てみたかった。相手は至って冷静、感情を持っているような存在ではないようだ。
「もしくは携帯電話などのデジタル機器を使用して、家族帰宅の安全確認や家族活動を楽しめる新しいサービスを開発する」
 今度はこんなことを言ってきた。やはり何を言っているのかわからない。わからないが、今度はいま言った謎のキーワードを思い出す。「デジタル機器を使用して、新しいサービスを開発とか言ってたな。もしやこのAIはアプリの押し売りか?」

 そんな機能があるとは信じられないが、声の主がもしかしたらポケットにあるのではと直感した。ポケットの中にはスマホが入っている。そのような電子音で語るようなアプリは入れていないはずだが、何らかの理由で動画が勝手に起動している可能性があった。いずれにせよこの電子音は至近距離で聞こえる。周りには何も見えない。何度見てもその周辺で一定の音で電子音が聞こえるはずがないのだ。

「こいつか?」ついにスマホを取り出して画面を見る。するとやはりそうだ。見た目は何も起動していないはずなのに、何らかのアプリが意図せずに反応したとしか思えない。
「どこだ、何も起動していないが」とスマホを操作していると「あとは学校などの普段の訪れる施設で帰宅意識を高めるための、教育プログラムを提供する」との電子音が聞こえる。また意味がわからないが、明らかにスマホからその声が発せられたことを突き止めた。
「このAI野郎!こうなったら、再起動だ」そう思ってスマホの電源を強制的に切ると、もういちど起動させる。

「これでどうだろう」しばらく様子を見た。だがあの時のような謎の電子音は聞こえなくなる。念のために変なアプリがインストールされていないか確認したが、それらしきものを見つけることができない。
「様子を見るか」というわけで、様子を見ることに。その結果、二度とおかしな電子音は聞こえることは無かった。原因はわからないままで、スマホ自身は問題なく使えている。ちょっと寂しい気もしたが、そのまま数日が経過した。

「さて、帰ろうか」と、つぶやいたとき「帰ろうというのはどういうことだ?」また電子音のように聞こえた。慌ててスマホを取り出したが。直後に胸をなでおろす。なぜならば、すぐ横で会話がなされていたからだ。
「だって、明日早いんだ。もう帰る」「ち、つまんねえ奴だ」このとき後から言った人物の声、電子音ではないがどことなくそれに近いAIのような気がした。

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