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日々掌編短編小説(そよかぜの千夜一夜物語)

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2020年1月1日から、ほぼ毎日掌編小説を執筆中。東南アジア小説をはじめ、興味のあるあらゆるジャンルをネタにして作品を発表しています。ちなみにこちらには「書き下ろし」としてしばら… もっと読む
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#30日noteマラソン

将軍への道のり

単独作品ですが、こちらの続きでもあります。 ---- 「あれ、どうなっているんだ?」石田圭は…

春節もテトもそして建国記念の日も実在しない?

「今日は建国記念の日か」  妻のホアがパソコンの前で、誰かと真剣な眼差しでネットのやり取…

新しいふとんと大きな犬

「エドワード、家までもうすぐだから頑張って」 「でもさ、ジェーン。これネットで買えばよか…

2月9日にどこかで遭遇した個体たち

 ここはおそらく東シナ海海域? 雲ひとつない鮮やかな青空が広がる海水の中。一匹のトラフグ…

郵便局員に継がれる万年筆

「ねえ、知ってる。今日2月8日ってって〒マークの日なんだよ」「へえ、おまえ何でも知ってるな…

かつて公方がいた古河で味わった鮒(フナ)の味

「おい、また鮒か。それ。20日正月の特集記事でやったんだけど」  グルメ雑誌編集長の茨城は…

上席の5人は海苔と抹茶がお好き

「あ、懐かしい写真が出てきた!」  ピンクのワンピース姿の田中ひとみは、嬉しそうにそばにいた黒いTシャツ姿の山田和夫に声をかける。 「お、それは君と初めてデートしたときの、マレーシア・ペナン島の写真じゃないか!」「あのときはデートと言うより、一応私が在住者として島の案内することになっていたのね」  ひとみが見つけた写真に視線を合わせて懐かしむ和夫。「懐かしいな。俺が平成から令和に変わるタイミングで、ペナン島に来て出会ったんだもんな」 「でも、あの後和夫君と付き合うようになっ

双子で作るチョコレートケーキ

「里美どうしたの?」里美そっくりの双子の片割れ、美里が心配そうに話しかける。 「うーん、…

季節を感じて向かう西

「切符を拝見」「切符? え、あ。持ってないです」角刈りで色黒の車掌は、若者の顔を睨むよう…

Lichun(立春)の日に決断したあること

「立春。占いの世界では新年か」四柱推命を学んでから15年。それなりの占い師として周囲から一…

節分で食べるべきものは手作りで

「やっぱり高いわ」伊豆萌は、海苔巻きの販売コーナーを見て、腕を組みながらため息をだす。 …

「電車の先走り」って何?

「ふーん。京都市電開業記念日かぁ」「市電開業? ホアちゃんそれなに」  タブレットを操作…

青い瞳が握りしめる籃球

「確かに青い瞳だ」ワシはひとりでこの壮大な湖を眺めていた。本来透明な湖の水。上空からの青…

もうひとつの栃木・蔵のリノベーション

「宇都宮餃子に対抗するには焼売しかない」これは久留生昭二の口癖である。  栃木市で生まれ育った昭二は、幼いころからのコンプレックスがあった。それは栃木県栃木市が県庁所在地ではないという点である。県と市の名前が同じの場合、通常はその市が県庁所在地。青森市、京都市、鹿児島市と言ったところがそうだ。名古屋市や金沢市のようにその県に同じ名前の市がない場合であれば理解できる。しかし栃木には同じ市の栃木市があるのにもかかわらず県庁所在地は宇都宮市。  昭二はそのことが内心悔しくて仕方が