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日々掌編短編小説(そよかぜの千夜一夜物語)

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2020年1月1日から、ほぼ毎日掌編小説を執筆中。東南アジア小説をはじめ、興味のあるあらゆるジャンルをネタにして作品を発表しています。ちなみにこちらには「書き下ろし」としてしばら… もっと読む
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2022年9月の記事一覧

クルミとミルク 第979話・9.30

「くるみとみるくって、回文だよね」今はそんなに時間がないのに、俺はまた、くだらないことが…

時間がない 第978話・9.29

「うわあ、時間がないわ」女は焦っている。女は坂を転げ落ちるように走っていた。女は腕にはめ…

巨大風船が 第977話・9.28

「なにやっているの?」家の裏山の上にある小さな祠の前で、女の子が風船を片手に何かを探して…

ゆるキャラ覚醒 第976話・9.27

「いやあ、わざわざ今日は島までありがとうございます」フリーターの山口は、島民たちからの意…

蟹のツメの間に 第975話・9.26

「はっきり島影が見える。今からあそこに行けばいいのね」私は愛知県の知多半島にいた。半島の…

海に行けるのか? 第974話・9.25

「海に行こう!」田島は突然叫んだ。「どうしたんですか田島さん急に?」田島の横にいた森屋は…

移住先は未来の死後の世界 第973話・9.24

「みずがめ座か、現実世界でも見えているだろうなあ」ひとりの男が、そういって夜空を見た。だが彼がいるのは現実世界ではなく精神世界。死後の世界といった方が正しいのかもしれない。  遥か昔、西暦21世紀ごろに初めててメタバースと呼ばれる仮想空間が誕生する。メタバース界は年々進化を続けていたが、約100年ほど前についに画期的なことが行われた。   それは死の直前にいる人の意識そのものをメタバース界に移植・移住させることに成功したのだ。  それまでのメタバース界ははあくまでリアルな

彼岸に見える星 第972話・9.23

「ねえ、あの星の名前なんだったっけ」私、真理恵は、夜空に浮かぶ星のひとつを見て静かにつぶ…

面白い体験 第971話・9.22

「ああ、トイレで考え事をしてしまった」私は時計を見た。気が付いたらトイレに入って15分も経…

呑みながら受ける相談とは? 第970話・9.21

「先輩、この辺りどうでしょうね」「立ち飲みより、席に座れる方が良いんだけどな」今日は会社…

席に座りたい。第969話・9.20

「今日は本当に歩いたわ」駅に向かっている女は、顔の表情が険しく足を引きずって歩いている。…

秘境の駅から歩いて県境を越える 第968話・9.19

「ぐえ、ここから歩いて3時間か」男はめまいがした。そのダメージは目の前の風景を、一瞬反転…

反転する夢と現実 第967話・9.18

「そっか、昨日一緒に住もうといったからなあ」目が覚めて、そう呟きながら現状に嘆いている自…

クラフトビールと店長の愚痴 第966話・9.17

「最近、疲れているんでしょうかね。テレビをつけっぱなしにして寝てるんですよ」ここは都内にあるクラフトビールの専門店。店長で、日本語が達者なフィリピン人ニコールサントスは、カウンター越しに常連客の相手をしている。 「そりゃあ、ダメですね。店長、しっかり休まないと」常連客のひとりのつぶやきに口元を緩めるニコール。「休みたいけどお店も大変だからね。それで疲れちゃってるのかしら。はあ、良い味出してるビールが多いのに」そう言って一瞬天井を見つめるニコール。それを聞いた常連客はついつい