【8/28の日記】遺言怪談を観に行ったよ

 遺言怪談という、不穏なタイトルの怪談イベントへ行った。なんでも、出演者の一人である伊藤えん魔氏が以前脳梗塞で倒れており、「人間いつ死ぬかわからないのだからやりたい事はどんどんやっていこう」というような意味合いらしい。素敵だな、と思った。元々伊藤えん魔氏のファンであったし共演者も好きな方ばかりであったので、これなら時間と金が無駄になることもあるまいと思い、行くことにした。ケチくさい性分なのである。

 共演者は私の大好きなインディ氏と、はるばる四国からやって来たノンストップくそ&シガー氏(略称くそシガ氏)である。何度聞いてもすごい名前だと思う。一度聞いたら忘れる事叶わぬであろう。略し方もすごい。何しろ「くそシガ」である。だが伊藤えん魔氏の「くそさん」という呼び方はさすがに略しすぎである。「『シガ』付けないとただの悪口ですよ!」と、くそシガ氏が突っ込んでいたが、全くもってその通りである。

 このイベントは二部制になっており、第一部が伊藤えん魔氏のソロ・パフォーマンス、第二部が共演者を交えてのフリートーク及び怪談、という構成であった。第一部は一話目から圧巻で、またたくまに会場全体がえん魔氏の空気に飲み込まれてしまった。さすがとしか言いようがない。何しろ本職が俳優であるから、演技力は間違いない。臨場感が違うのである。専業怪談師は下手に語りの中に演技など取り入れない方が良い。本職にかなう訳がないのだから。
 えん魔氏は何しろ演技力が凄いので、ラジオドラマでも聞いているかのようで楽しい。自分は元来、下手な演技を耳にすると尻の辺りがモゾモゾしてしまって落ち着かない性分なのだが、えん魔氏のパフォーマンスには絶対そんな事が有り得ないのも助かっている。大好きな怪談を、落ち着いて聞いていられないというのは非常につらい。だが、えん魔氏なら安心して聴いていられる訳だ。何が起こるかわからない緊張感というものも大事だと思うが、ここではそれは全く必要ないのである。
 他にも、NHKで放送しそうな「漢字の怖い成り立ち」コーナーもあり面白かった。やはり演劇業界の人であるから、パフォーマンスにはこだわりがあるのだろう。

 第二部は三人での怪談会であったが、くそシガ氏が人怖と心霊を一話ずつ語ってくれたのが個人的に嬉しかった。どちらかに特化している人も勿論面白いが、こんな風にどちらも自在に語れるのも貴重である。どちらも非常に面白く、聞きごたえのある怪談であった。
 インディ氏も勿論怪談を語ったのであるが、この面白さは筆舌に尽くしがたい。何とも楽しそうに満面の笑顔で語るのである。しかし語っている内容は、体験者が酷い目に遭う話である。インディ氏いわく「『悪い奴』が酷い目に遭う話でしか笑わない」とのことだがそれにしても楽しそうだ。あまりにも楽しそうなのでこちらもつい笑顔になってしまう。この空気は生で観ないと伝わらないかもしれない。インディ氏がYoutubeやDVDに出たがらない訳が何となくわかった。
 インディ氏のイベントは特にそうなのだが、やはり配信ではなく、現地で実際に参加するイベントというのは独特の楽しさがある。配信では流れない幕間のトークが面白かったり、画面越しでは伝わらない空気感があったりする。関東に住んでいて良かったと思うのは、怪談イベントの多さである。やはり怪談オタクに田舎暮らしは出来そうもない。たまにえん魔氏のイベントが羨ましくて大阪へ引っ越しそうになるが、やはり東京のイベントの多さは随一である。夏が終われば怪談イベントはやはり減るが、東京であれば零になる事はない。オタクに季節は関係ないのである。一年中いつだって、怪談イベントは楽しい。

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