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育児の名著を読んだら、"よい親"になろうとしていた私は天に召された【本気の読書まとめ】

初めての子育て。間違った育て方はしたくないし、与えられるものは与えてあげたい。どんなふうに育てたら、魅力的で友だちになりたくなるような"いいヤツ"に育つのだろう?そんな問いの答えを求めて、産前休暇に入った頃から育児書を10冊ほど読みました。すると根本的に間違っていた、とは言わないまでも、自分の中での"よい親"の定義が変わったので、本腰を入れてまとめてみようと思います。

本と著者の紹介(書籍の「著者紹介」より引用)

この記事で引用するのは以下3冊の育児書です。

菅原裕子『子どもの心のコーチング 一人で考え、一人でできる子の育て方 』(2007年)

1952年、三重県生まれ。NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事。有限会社ワイズコミュニケーション代表取締役。1977年より人材開発コンサルタントとして、企業の人材育成の仕事に携わる。従来の「教え込む」研修とは違ったインタラクティブな研修を実施。参加者のやる気を引き出し、それを行動に結びつけることで、社員と企業双方の成長に貢献。1995年、企業の人育てと自分自身の子育てという2つの「能力開発」の現場での体験をもとに、子どもが自分らしく生きることを援助したい大人のためのプログラム“ハートフルコミュニケーション”を開発。各地の学校やPTA、地方自治体主催の講演会やワークショップでこのプログラムを実施し、好評を得る

須賀義一『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』(2015年)

1974年生まれ。東京都江戸川区の下町に生まれ、大学で哲学を専攻するも人間に関わる仕事を目指して、卒業後、国家試験にて保育士資格を取得。その後、都内の公立保育園にて10年間勤務。子どもの誕生を機に退職し、主夫業の傍ら保育、子育てについての研究を重ねる

佐々木正美『はじまりは愛着から 人を信じ、自分を信じる子どもに』(2017年)

児童精神科医。1935年、群馬県前橋市に生まれる。1966年、新潟大学医学部を卒業後、ブリティッシュ・コロンビア大学に留学し、児童精神医学の臨床訓練を受ける。帰国後、国立秩父学園(重度知的障害児居住施設)厚生技官、東京大学医学部精神神経科助手(併任)文部教官を経て、財団法人神奈川県児童医療福祉財団・小児療育相談センター所長、社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団参与、ノースカロライナ大学医学部精神科TEACCH部非常勤教授、川崎医療福祉大学医療福祉学部教授を歴任。専門は児童青年精神医学、ライフサイクル精神保健、自閉症治療教育プログラム「TEACCH」研究。糸賀一雄記念賞、保健文化賞、朝日社会福祉賞、エリック・ショプラー生涯業績賞などを受賞。『〇歳からはじまる子育てノート』(日本評論社)、『自閉症療養ハンドブック』(学研)、『子どもへのまなざし』シリーズ(福音館書店)など、多数の著書がある。2017年6月永眠。


まずは各書の目次から、頻出ワードを拾ってみた


多く出てくるワードは重要である可能性が高いと考え、「子ども」「子育て」などの本旨とは異なるワードを除いて抽出しました。

・「愛」…9件
ワードが含まれる目次の一部抜粋。以下"抜粋")はじまりは親子の愛着から、親に愛されなかった子は自分も人も愛せない
・「叱」…8件
抜粋)叱るよりも受容する気持ちが大切、叱ることがしつけではない
・「信」…6件
抜粋)人を信じ、自分を信じる、根拠のない自信を育てる大切さ
・「しつけ」…5件
抜粋)自尊心を育てるしつけ、叱ることがしつけではない
・「満」…4件 ※満足、満たすなど
抜粋)ヘルプは親の自己満足、満たされた子どもは手がかからない
・「サポート」…4件
抜粋)親は子どもをサポートし
・「怒」…3件
抜粋)親は叱っているのでなく、自分の都合で怒っている
・「甘」…3件
抜粋)甘えとわがままの意味、「甘えを受け入れる」と「甘やかす」

まずは目次だけ見てみましたが、すでに子育てのポイントや問題点が見えつつある気がします。

そして目次の頻出ワードを念頭に置きつつ本を読み、共通して書かれている内容をまとめました。

子育ての極意 各書に描かれている共通項


①愛着と受容が子育ての出発点

愛着とは子どもから見れば、親から無条件に、十分に、そして永遠に愛されるという実感を基盤にして、乳児期から早期幼児期に、母親との関係で育まれるものです。ーはじまりは愛着から
子どもの心に育みたい「元気のもと」の一つ目は、「親から満足され、愛されている」という実感です。
まず親が子どものよい面を見つけて、そのことに喜びを抱きながら、日々の生活を送るという意識を失わないように心がけなければなりません。親は、子どものありのままの姿を肯定的に受けとめ、歓迎しましょう。子どもの欠点や弱点を見いだして修正する養育や教育は、あくまでそのあとのことです。ーはじまりは愛着から
人が生きていくうえでもっとも大切な感情が「自己肯定感」です。
自己肯定感とは、自分の存在を肯定する感覚です。自分はここにいるべき人間であり、まわりの人は自分の存在を喜んでいる。自分の存在が家族に幸せをもたらしていて、そんな自分でいることがうれしい。「私は自分が好きだ」という感覚です。この感覚は、私たちが自分として生きていくうえでもっとも基本となるもの。存在することへの自信です。(中略)死んでしまいたくなるようなつらい体験をしても、それでも生きていられるのは、愛してくれる人がいると知っているからです。この苦しみに耐えれば、必ず輝きがもどると知っているのです。それが自己肯定感です。自己肯定感は私たちの「生」を支える感情です。ー子どもの心のコーチング
自己肯定感は、人生の初期に、自分を保育してくれる人たちに愛されることによって、身につけることのできる感情です。ー子どもの心のコーチング
人間の子どもというのは、他の生物に比べて圧倒的に未熟な状態で生まれてきます。それは大人の保護を前提として生まれてくるということです。
それゆえに子どもには大人の保護を求める強い欲求というものがあります。
自分が十分に保護されていないと子どもが感じるとき、子どもは安心・安定した状態ではいられなくなります。ー保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」
「受け入れる」「受け止める」というと、「甘え」ということがそのひとつに浮かんでくると思います。
「甘え」を受け止めるというのも、もちろん「受容」です。
しかし、それだけが「受容」ではありません。
例えば、「かわいいねー」と子どものことを見ていて口に出したり、「大好きだよ」と伝えたり、子どもと過ごす時間を大切にして絵本を読んであげたり、こういうことも立派な「受容」なのです。
子どもはそれによって自分が大人に見守られている、受け入れられているという安心感をもらうことができます。(中略)子どもはこの受容されるという経験を通して、自分が肯定されているという実感を得ていくのです。ー保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」

表現にはばらつきがありましたが、子どもは愛されている・受け入れられていると感じることで自己肯定感を身につけられること、自己肯定感は生きていくうえで心の支えとなることが書かれていました。愛着と受容は、子を育てていくうえでの出発点といってもいいと思います。

※個人的には"受容をきちんとされて自己肯定感のある子どもは、自分の気持ちを臆せず出すことができたり、その自己肯定感が自分の自信となるのでなにかに取り組む際のモチベーションが高かったり、自分の成長にも前向きになることができる"とあり、ますます受容の必要性を感じました。

②甘やかさず、甘えさせる

①の愛着と受容の延長線上にありますが、「甘え」についても書かれていました。

子どもは幼いときから、依存と反抗、言葉をかえますと、「甘え」と「わがまま」を繰りがえしながら、自立していきます。
そして、子どもは幼いときほど、心から信頼できる人にしか、甘えやわがままを言いません。心の底から信じたいと思っている人にだけ、思いきり甘えたりわがままを言ったりして、自分への愛情をたしかめようとしています。
そうすることで、自分はこんなに愛される価値のある子どもなのだということを確認したいのです。この確信を得ることが、安心して生きていく意欲や力のもとになるからです。ーはじまりは愛着から

子どもが精神的に自立をし、自分で安心感をつくりだしたり、自分で自分を癒したりできるようになるまでは、親はぎゅっと抱きしめてあげたり、話を聞いてあげたりといった「子どもの甘えを受け入れる」ことが必要だそうです。これは自立の準備のため、年齢に関係なく、保育園児でも小学生でも応じる必要があるのだといいます(逆にこれを受け入れないと、いつまでも形を変えつつ、親の注意をひくようなことをしてしまうそう)。

一方で「甘やかし」とは、必要以上に子どもの世話をやくこと。子どもができることを親が奪ってやってしまうのを避けると同時に、例えば子どもが自分でできることをやってほしいと親に言うときは、ただやってあげるのではなく、コントロールする(適切ではない行動を制限し、正しいルールを教える)ことも必要だそうです。これは以前NHKのすくすく子育てでより詳しく話していました(ちなみにこの番組、とっても勉強になります)。

③叱ることがしつけではない

しつけは「子どもが自立して幸せに生きることができるよう、基本的な生活習慣や社会的マナーを親が子どもに伝える行為」と言うことができるでしょう。
しつけはまず、親が「子どもを幸せにする基本的な生活習慣や社会的マナー」が何であるかを定義することから始まります。ところが、ほとんどの場合、親ははっきりした定義をもっていません。ただ漠然とした「理想の子ども像」をもって、それにそって思いどおりにならないと子どもに怒りをぶつけているだけなのです。ー子どもの心のコーチング
私たちの子どもに対する期待は無意識です。無意識なので、自分が期待していることにすら気づいていません。そして、無意識のその期待どおりに子どもがやっていないと、「しつけ」と称して小言を言うのです。
それは、親の「理想の子ども像」にもとづき、現実の子どもに向かって「お前はこの子(理想の子)じゃない」と言い続ける行為です。そしてその行為は、「この子じゃないから愛せない」「この子になったら愛してあげるよ」というメッセージとして伝わる危険性があるのです。ー子どもの心のコーチング

そもそもしつけの目的とは、"子どもが自立して幸せに生きることができるよう、基本的な生活習慣や社会的マナーを親が子どもに伝えること"だといいます。

ですが親の理想通りに子どもを育てることをしつけと混同してしまい、親の言う通りにしないと愛してもらえないと子どもが勘違いすること、さらには子どもが親の望む"いい子"であるように努めることで、行動を起こす動機が親の一挙一動になってしまい、自らやる気を出せなくなってしまう懸念があることは注意すべき点です。

基本的には叱ることと怒ることはしない方がよい*1 。これは各書から読み取れました。

*1 命が危険にさらされるという緊急を要することはその場で教える必要がある

子育てする人は、子どもが望ましくない行動をしたときに注意したり叱る、ダメ出しといった、「NO」という種類の関わりをすることが子育ての方法なのだと無意識に考え、そのようにしてしまっています。しかし、はっきり言ってしまうと、このような子どもへの関わり方は、かえって子どもが大人の言葉に耳を貸さなくなるといった、意図とは逆の結果をもたらす可能性を多分に含んでいます。ー保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」
基本的に子どもは親を信頼しています。しかし、ダメ出しなどの規制、「して」などの指示といった支配的な関わりをやたらと多用していると、その大人への信頼感がだんだんと損なわれていって、子どもは「いうことを聞かない子」となってしまいます。
「子どもから大人への信頼感」というのは、子育てにおいて最良のツールなのです。それを大人が自分から損なってしまっては、子育ては大変なばかりになってしまいます。
では、どうすればいいでしょうか。
子どもには、自分を保護してくれる大人の気持ちを鋭敏に察する感覚があります。
「叱らなくていい子育て」のためには、この感覚を伸ばしていくといいでしょう。ー保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」

叱ることがしつけなのではなく、大人の気持ちを敏感に察してもらい、どうしてほしいか伝えていく。この"大人の気持ちを敏感に察する感覚"は、

・「楽しいね」「うれしいね」などのプラスの感情も伝え、共感し合う
・子どもが困ること、嫌なことをしたら「そういうことしたらママ困るな」「悲しいな」と、相手がどんなに小さい子であっても、きちんと言葉で伝える
・口先だけでなく本当に「困る」「悲しい」という気持ちを表情や態度でも示す
ことで養われるそうです。

たくさんの心地よい心の交流をその大人と築いていくと、「それは困る」「してほしくない」といったネガティブな気持ちも通じるようになると書かれていました。

この"心のパイプ=信頼"がつながってさえいれば、しつけをしていくこともできるようです。しつけは「愛情」や「基本的信頼」など信頼感情のもてる人からが前提だとしたうえで、繰り返し教え、自主的に実行するのを待つことが必要だと書かれていました。

「しつけ」に際しては、しつけとして大切に思うことを、できるだけ穏やかに、必要に応じて必要なだけ、そのときどきに繰りかえして教え、伝えます。そしてもっとも大切なことは、教えられたことを子どもが納得し、きちんと自主的に実行するのを、待っていてやることです。そうなるまで、手を貸して助けてやることです。
真の意味の自律性、自主性や主体性、自発性は、待っていてやるなかで育ちます。子ども本人がこれをやろうと決め、実行するのを待っていてやるから、「自分を律する力」が育つのです。ーはじまりは愛着から

また、マナーに関しては、人の役に立つ喜びを知ることで身につけることができるともありました。具体的な方法についても引用します。

私たち親は、社会的マナーとして「お年寄りに席をゆずろう」とか「困っている人には親切にしよう」と子どもに教えます。これらのマナーの基本は、人の役に立とうとする気持ちです。
「人の役に立つ喜び」を教えることができれば、マナーの内容を逐一言って聞かせる必要はありません。子どもは自然に人に親切にするようになります。「人の役に立つ」というのは、副作用のない動機づけであり、すべてのマナーの基本です。
まずは親の役に立ってもらうことから始めましょう。親の用事をやってもらうのです。二歳にもなれば、いろいろと親の役に立つことができるようになります。新聞を取ってくるような簡単なことから始まり、子どもにできるお手伝いはたくさんあります。どんどん手伝ってもらってください。
子どもが手伝ってくれたら、子どもをほめないことが大切です。「いい子ね」「えらいぞ」というほめ言葉ではなく、子どもが手伝ってくれたことに感謝し、喜んでください。子どもが親のために働いたときに、親がどう感じたか、気持ちを教えてあげてほしいのです。
「ありがとう」「お父さん助かったよ」「うれしかった」という具合に、自分の働きが親にどのような影響を与えたかを教えてあげてください。(中略)子どもにとって親は絶対です。とても大きな存在です。その大きな存在に対して、自分が役に立てる――これは喜び以上のものがあります。自分を、そんな存在として受けとることができるのです。ー子どもの心のコーチング

④親は子を援助(サポート)する。助ける(ヘルプ)するのはできないうちだけ

子どもの成長はめざましく、まもなく保護も支配も必要のない時期がきます。
しかし、その成長に気づかない親は、それまでの延長で、変わらず子どもの保護と支配を続けます。それは「かわいい子どもを守りたい」「きちんとしつけ、いい子に育てたい」、そして「自分もいい親でありたい」という、ごく当たり前の願望のあらわれです。
ところが、実際はそれが子どもの自由を奪い、自ら伸びようとする芽を摘んでしまうのです。子どもの「できる」を認めず、「できない」ままの存在として保護し続けることで、子どもの自立をさまたげてしまいます。ー子どもの心のコーチング
こどもの人生の主役は子ども自身です。生きているのは子どもで、体験するのは子どもです。親にできるのは、またやってもいいのは、やるべきことをこどもに見せ、できるようになるまで待つことです。(中略)コーチの仕事は選手の才能を開花させることです。選手がよりよいプレーができるようサポートするのが仕事です。次の三つの条件を満たしたとき、親は子どものコーチになれます。
①子どもはできることを知っている。
②子ども自身がもっとよくなりたいと思っていることを知っている。
③子どもが望んでいることが起きるまで待ち、必要なサポートは何でもしようとする柔軟性がある。
この条件を満たし、常にこの姿勢を保つことで、親は子どもの尊敬を得ることができます。親としてコーチとして、子どもの尊敬を勝ちとらなければ、サポートは難しくなります。また、親が常にこの三つの姿勢を保てば、子どもは愛されていると感じるでしょう。ー子どもの心のコーチング

生まれたばかりの頃はそれこそ泣くことしかできず、すべての世話を親が行い保護しますが、できることが増えるにつれ、親は在り方を変えていく必要があるようです。

まとめ

子どもは、絶対に守ってもらえるという安心感があるとチャレンジしていけるそうです。親はこの安心を得られる場所になるために、①愛し受け入れる、②甘えさせる、③叱らない、④援助する、を常に行う必要があるのではないでしょうか。

親がまずすべきなのは、安心の基盤づくりである。これまで私は、子どもに「してあげたい」「与えたい」と施しをメインに考えていたように思います。ですが子どもの行動を起点に「受け入れる」、「見守る」、さらには行動が起きるまで「待つ」といった行動がとても大切だということを学びました。

子どもにとっての"よい親"を目指して。日々意識して行動しつつも、最終的には親子間で気持ちのよい関係を築いていきたいです。

最後は、『はじまりは愛着から』の著者佐々木正美さんの言葉で締めようと思います。

"ほかの人たちが、どのように感じ、何を言おうと、母と子が互いにいい母、いい子と実感しあえていれば、それでいいこと、それがいいことだと思います。"


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