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当事者から見た『silent』

 今話題のドラマ『silent』。
大好評でTVerでは最高記録を出し、ネット上にも沢山の賞賛の声が上がっています。
そんな中、私はずっと気になっていたことがありました。

ろう者にはどう見えているんだろうか?

 これだけの盛り上がり。内容としてとても素敵なドラマだと察します。
それに水を差すつもりはありません。
でも日本の誰かに悲しみを与えるドラマになっていないか
これはとても大事な視点だと思います。

 恐らく今までの、日本のどのろう者を扱うドラマよりも良いということは、手話通訳者の私でも分かります。
でも、私には見えていない違和感があるなら知りたい。
そしてやっと、ろう目線で書かれた記事が出ました。

 早速検証していきたいと思います!

ろう俳優 忍足亜希子さん

 ろう者の俳優さんって実はたくさんいらっしゃることをご存知でしょうか?
忍足さんはその第一人者と言われています。
1999年公開の映画「アイ・ラヴ・ユー」に主演されています。

 もしかしたら、忍足さんを別の視点でご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
「ハマの番長」ベイスターズの三浦監督の義妹(弟の妻)さんです。

忍足さんの嬉しかったこと

1. “ろう者がやる” という感動

 以前私も記事に書きました。

「『silent』に江副悟史さんと那須映里さんのろう者2人が出演していることが感動するほど嬉しいです」

yahoo!記事より引用

 このドラマの画期的なところだと思います。
ピンとこないかもしれませんが、
ろう者がろう者役をやる
というのはろう者の悲願であり、それが当然になることを願っています。

 那須映里さんはご両親もろう者の「デフファミリー※」で、
お父さんはNHK手話ニュースでキャスターもされている業界の有名人です。

 ※因みにデフファミリーって実際にはほとんどいません。
 ろう者は9割が聴者から生まれ、ろう者が産む9割が聴者だからです。
 デフファミリーは貴重なのです‼︎

 ろう者に直には確認していませんが、
デフファミリーの生粋のろう者が演じていること
そして「那須さんちの映里ちゃんが!」とろう者界隈ではかなり盛り上がっているのではないかと察しています。
江副さんもNHKなどでよく見る有名俳優さんです!

 もちろん聴者がやるな、とは言いません。
でも違和感は拭えなかったでしょうし、否定する権利は聴者にはないでしょう。
忍足さんもこうおっしゃっています。

さまざまな役柄を演じるのが俳優の仕事ですが、やはりろう者の役は本当のろう者が演じる方が自然だと思います。もし私が聴者の役を演じたら、リアルに感じるでしょうか。私は生まれつき音も声も聞いたことがないですから、聞こえる方がどんな風なのか想像しながら演じたとしても、やはり不自然になってしまうと思います。ろう者をろう者が演じないというのは、それと同じ感覚なんです

yahoo!記事より引用

私もろう者がやっているという点、とても評価できると思っています。
これからもっと盛り上がってほしいところです。


2. ろうの視聴者を無視しない

 手話は無視される。
これはどの場面でもです。
首相の会見についている手話通訳は、ニュースで画面上ばっさりカットされています。
たとえ映っても、手話が終わらないうちに日本語音声の終了と同時に切れます。
これがろう者の日常です。

「手話が途切れることなく、最後までしっかり写っているのが良いですね。目黒さん、川口さんはじめ俳優の皆さんは『手話とはろう者にとっての第一言語である』ということをきちんと理解し、手話表現ひとつひとつを噛みしめながら演技していると感じました。短期間で手話を習得されるのはエネルギーのいることですが、責任を持って全身全霊で表現されているからこそ、伝わってくるものがあるんだと思います」

yahoo!記事より引用

 私もそこまでは見ていませんでした。
確かに言われてみれば奈々の手話を読み取ることができたので、きちんと最後まで手話も映すという意識はあるのだと思いました。

3. 手話が社会に浸透

 忍足さんがろうだと分かると手話で「ありがとう」と言ってくれる方がいたり、ニコニコと手話を見る方が増えたそうです。

「手話が社会に浸透して、みんなが自然に手話で挨拶をしたり、ちょっとしたお話しが出来るようになるといいなと思います。やはり、障害者ということで差別されたり嫌な思いをした経験があります。私としては『ただ聞こえないだけなのになぁ』という気持ちなので、ドラマで手話に興味を持った方は、手話を外国語を学ぶような感覚で楽しみながら、ろう者と交流してみて欲しいと思います。そうすれば、ろう者に対するイメージや固定概念が変わるはずです」

yahoo! より引用


結論・考察

 こうして並べると、ドラマはやはり概ね高評価を得ているようです。
ろう者の現状、現実社会と直結して

ろう者を無視しない、
対等に扱うように心がけている、
手話のイメージの向上に繋がる

部分が評価の理由と思われます。
これは私たちの評価とは違う、やはり当事者意識で感じるところです。

 もしかしたら明言できない、強く出せない違和感は、少なからずあるかもしれません。
それでも、大きな前進を感じていることは確かだと思います。

 ここには書ききれなかった、忍足さんの声から感じ取れることが他にも沢山あります。
これまでのドラマに対する違和感、聴覚障害者の違いなどは、私が記事※に書いたものに近いと思います。
yahoo!記事を読んでsilentがつまらなくなる心配は全くありませんので、
ぜひ忍足さんの声を読んでみてほしいと思います。


※以前書いた記事

ドラマの違和感2記事


聴覚障害者の違いの記事


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