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ケニア人の商売の仕方が面白かった話

いま、イタリアのヴェネツィア(ベニス)へ向かう列車の中で
この記事を書いている。

ヴェネツィアは118の小島から成り、
それぞれが橋で結ばれている。

多くの運河が走ることから
「水の都」と称されいるのは有名である。


さて、昨日は二日連続でバチカン市国に行き、
300段以上の階段を登って
頂上からの景色を見たりした。

この日は午前中にローマ教皇が訪れていたみたいで、
やけに人が多かった。

日本人らしき人はほとんどいなかった。


パリの大きな橋では、

バラと引き換えにお金をくれとせがんでくる女の子や、

一緒に写真を撮る代わりに
お金を払わなきゃいけない白塗りの女性がいたりしたが、
バチカンでもこの手の商売人?はチラホラいた。


その中でも、とあるケニア人の戦略が面白かったのと、
つい勉強になってしまったので書き記しておく。


ケニア人の彼は、まず僕らに向かって、
「I love Japan」と連呼した。


話を聞くとどうやら本気で日本が好きらしく、
熱烈にアピールしてくる。

そして、

「日本が好きだから、
その気持ちとしてこのブレスレットをあげるよ」

と英語で言ってきた。


ケニアの象が描かれている、革製のブレスレットだ。


最初、

「いやいや、絶対に有料でしょこれ。
どうせ払えと恐喝してくるでしょ?」

と斜に構えていたのだが、
本当にFreeだよ、と言う。


何度か確認しても、

「日本が好きだから、
その気持ちとしてこのブレスレットをあげる」

と連呼してくるのだ。


目が本気だったのと、
言葉に想いが乗っかっていたので、
素直な気持ちとして受け取った。

日本が好きと連呼されて嫌な気持ちはしない。


それに無料なら…と思い、
ケニアで製造されたらしい
そのブレスレットを手首にハメた。


僕はニコッと笑いながら
「Thank you〜」と言い、少し歩いた。

でも彼は付いてきて、
何やら英語でごにゃごにゃ言っている。

スマホの画面をこちらに向けて、

「ケニアに家族、小さな子供もいる。可愛いだろう?」

と、気持ちよさそうにブランコで揺れている
子供の動画を見せてきた。


確かにすごく可愛かった。

ケニアなので全身真っ黒。

そういえば世界には色々な肌の人がいるな、と思った。


「これは個人的なお願いなので
聞き流してもらってもいいけど、
この子供のために、少しでもいいからチップをくれないか?
もうしばらく会っていないんだ」


そんなことを早口で言ってきて、
なるほど〜そういう戦略だったのか〜と思わず感心した。


僕はOKOKと言い、
財布から10ユーロを出そうと思ったが無かったので、
5ユーロを差し上げた。

財布の中に入っていた20ユーロを見られて、
「20ユーロで頼む」と言われたが、
それだと日本円で3000円くらいだなと思ってやめた。


彼は5ユーロを受け取り、
そそくさとその場を立ち去っていった。

これ、「Freeって言ってたじゃん」
という視点で捉えたら、
小さな詐欺だと思うかもしれない。

実際、こういうマイルドな詐欺・恐喝に気をつけろ
という記事もたくさんある。

ヨーロッパでは多いのだ。


でも僕は今回、全く嫌な感じがしなかった。

それはなぜだろうか。


まず、日本が好きだという
日本へのリスペクトが本気だったこと。

これは演技の可能性もあるが、
だとしたら役者になれるレベルの熱量だった。

日本が好き、好き、大好きなんだ、
と連呼された嫌な気持ちにはならなかった。


そして0円でブレスレットを貰えたこと。

正直、100円だとしてもいらないレベルだったが、
0円ならまぁ…日本とケニアの友好の証にとか言うし…
という感情で、受け取ってしまった。

0円というのはいつの時代もどこの国でも
破壊力があるなと再認識した。


0円でプレゼントを受け取り、
友好の証を築いたあと、
唐突なエピソードと子供の写真。

しばらく会えていないんだ、というセリフ、表情。

その子供の写真も本物かわからないけど、
すごく可愛くて、つい微笑んでしまった。


そして最後、
この子供のためにチップをくれないか?
というオファー。


0円でブレスレットをもらっている以上、
返報性の原理が働く。


これはつまり、
人は他人から何らかの施しを受けた際に、
お返しをしなければならないという感情を抱く原理のことである。


加えて、短時間で築かれた信頼関係と、感情的ストーリー。

(しかもその感情的ストーリーは
オファーを飲み込まなきゃいけない、
という直接的な因果になっている)


「このブレスレットを買ってください!1つ300円です」

というアプローチだと「300円」と固定されてしまうが、

子供のためにチップを...
とフォーカスポイントをすり替えることで、
300円が1000円以上に化けることだってある。


つまり彼は、ブレスレットの売り子に見えて、
本当に売っているものはブレスレットではなかった。


むしろブレスレットを犠牲にして、
別の形でオファーしてきたわけだ。

おそらく彼はバチカンで長く商売をしてると思うのだが、
そう考えると、このやり方が一番売れているのだと思う。

彼の知恵の結果だ。

もしかしたらこの手法を完全にテンプレ化し、
10人くらいの組織を作って
その元締めをしてるのかもしれない。

子供の映像は若干変えて。


そしたら日給1〜3万くらい稼げる。

まさか月商100万規模のビジネスだったりして…


と、そんなことを考えてしまう日だった。


バチカンにはカトリック教会の総本山の機能を担う
「サン・ピエトロ大聖堂」などがあり、

その荘厳さにはため息が出るほどなので、
僕のように無宗教の人でも
行く機会があればぜひ行ってみてほしい。


ヴェネツィア(ベニス)まではあと2時間。

wi-fiが弱いので、
この記事もちゃんと公開できるのか不安である。


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(by 20代起業家)

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