【#教育004】「片づけ、持ちもの準備はどこまで手伝う?」知っておきたい2つの視点
「片づけられない」「忘れものが多い」など、整理整頓や持ち物準備についての悩みは比較的多い相談の一つ。お子さん一人でできるようになるため、どこまで親が手伝ってあげればいいのか、その加減はご家庭によってまちまちです。
整理整頓については「散らかりすぎていて嫌だから」と保護者の方が片づけてしまうこともありますし、持ちものについては「忘れて先生に注意されたほうが自覚するだろう」と、手伝わないで自分で準備させるご家庭もあります。
このように、どこまで手伝うか、あるいは手伝わないかは、ご家庭の子育てについての考え方や思いが出やすいようですが、ここではどのご家庭も共通して知っておきたい2つの視点をご紹介します。
支援の段階をふまえた対応を
まず1つ目の視点は「支援の段階」をふまえた対応です。子どもが何かを身につけていくときには、一人では全くできないところから完全にできるようになるまでに、いくつかの段階があります。ここでは支援の段階を大きく4つに分けて考えていきます。
--支援の段階--
1:やってあげる
2:手伝う、一緒にやる
3:報告させ確認する(見守る)
4:任せる
では、それぞれがどのような段階なのか。ここではトイレトレーニングを例に考えてみましょう。
赤ちゃんはオムツをしますので、トイレについては「1:やってあげる」の段階といえます。少し成長すると、トイレに座らせてあげる、拭いてあげるなど「2:手伝う、一緒にやる」の段階に進みます。これらが一人でできるようになるようになったら、「トイレができたよ」とお子さんに伝えてもらい汚れていないかを確認する「3:報告させ確認する(見守る)」の段階に。最後は、お子さんがトイレに行きたい時に一人で行って戻ってくる「4:任せる」の段階になります。
これは一つの例ですが、整理整頓や持ちもの準備についても、お子さんが1~4のどの段階にいるのかを、まずはよく見てみましょう。それによって、どこまで手伝えばよいのかが分かってきます。
片づけられないお子さん、特に小学生のうちは「2:手伝う、一緒にやる」が必要なお子さんもまだまだいます。保護者の方も「一緒にやってあげている」ではなく「片づけ方を少しずつ教えている」ような気持ちで手伝ってみましょう。また、保護者の方自身が身の回りを(できる範囲でかまいませんので)片づけておくことも大切です。片づいた環境の中で育つと、どのような状態にすればよいのかを子どもは自然と理解していきます。
持ちもの準備については、小学校低学年では「2:手伝う、一緒にやる」のお子さんもまだまだ多いですが、少しずつ「3:報告させ確認する」にしていき、足りないものを一緒にそろえるくらいにしておくのがいいかもしれません。「いつもふでばこを忘れている!」など、お子さん自身の気づきにもつながるからです。
お子さんの生活に支障が出ていないか
この支援の段階を考える時に気をつけたいのが「できていたことができなくなることがある」という点です。
例えば小学生までは持ち物準備ができてたのに、中学生になって急に持ち物が増え管理しきれなくなるお子さんもいます。また、年度初めは担任の先生のやり方が変わるだけでなく提出物も多い時期ですので「3月まではできていたのに……」ということもあるでしょう。このように支援の段階も時期や環境の変化に合わせて見直していく必要があります。
この見直しの際におさえておきたいポイントが「お子さんの生活に支障が出ていないか」という2つ目の視点です。
本来やるべき活動ができなくなったり提出するはずのものが出せなくなると、授業に参加できなくなったり、時には学校に行きたくなくなるなど、お子さんの生活に支障が出てきます。すると元々その活動で伸ばしたかった力を伸ばせなくなってしまうおそれもあります。ですので「生活に支障がないか」というのを、環境変化の大きい時期や、できていたことができなくなったタイミングで見てあげることはとても大切です。
「反抗期でものを触られるのを嫌がる」など、お子さんの年齢にによっても親の手伝いの受け入れ度合いは変わってきます。それはそれで自立に向けては大切ですので、お子さんの気持ちも尊重しつつ、どこまで手伝うかを都度見直していきましょう。
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今回は、物の管理についてどこまで手伝うかを考えるための2つの視点、「支援の段階」と「お子さんの生活に支障が出ていないか」をご紹介しました。
片づけや持ちもの準備は、ご家庭の考え方が出やすいと先ほどお伝えしましたが、同じ家族内であってもそれぞれ得意不得意が違うこともあります。例えば保護者の方が几帳面で、お子さんがあまり気にしたいタイプですと、親の基準を子どもにも求めがちで、知らず知らず求める最低ラインが高くなってしまうこともあります。
これはお子さんの反抗や癇癪のきっかけになることもありますので、まずは今回お伝えした2つの視点を元に、お子さんとも話し合いながら、根気強く対応していきましょう。
(山崎 衛 公認心理師/臨床発達心理士/特別支援教育士)