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「おかえりモネ」、東北のこれまでの10年間と未来の物語

うぉーーーーーっ!
全部見終わった!!(ガッツポーズ)
朝ドラを全回視聴したのは、「あまちゃん」以来。
毎日楽しく、ときに哀しく、笑って泣いての、5か月ちょっと。
余は満足じゃ。

「おかえりモネ」を見ようと思った理由は、二つある。

一つは、とにかくキャストに、「あの」西島秀俊、「あの」内野聖陽、「あの」浅野忠信という、私の大好き俳優3人が勢ぞろいするのだから、見ないわけにはいかない。
(そのうちの2人が出てる、「きのう何食べた?」劇場版も観に行きたい。そちらの脚本も、安達奈緒子さん。)
西島さんの安定感、内野さんの深さ、浅野(最上級の愛を込めての敬称略)については後述。
それぞれの演技が素晴らしかった。

もう一つは、東日本大震災の被災・復興を題材にしているから。
私は東日本大震災のことを取り上げた作品が好き。
というと、とても語弊があるのだけど、強く惹かれ、見れるものは見るようにしている。
私は、東北を応援している。
そんな言い方は、なんだか恩着せがましい感じがして嫌だが、2011年以来、折に触れて東北のことを思ってきた。
私自身は東北の人間ではなく、震災発生時は関東にいて、揺れの大きさには腰を抜かすほど驚いたが、無事だったし、家も壊れなかったし、津波も見ていないし、家族も失っていない、「おかえりモネ」で言うところの「外の人」。
私一人の小さな力が、誰かのためになるなんて思わないけど、自分の目でその光景を見て、自分の耳で人々の声を聞いて、その場の空気を自分の肌で感じて、せめて、そこにいる人たちの痛みを知りたいと思って、東北を訪れ始めるように。
菅波先生の「あなたの痛みは僕には分かりません。でも、分かりたいと思っています。」みたいなものだと思っていただければ。
以降、大学生・水野さんみたいに、「外の人」でも何かできないか、何ができるのか、何にもなっていないんじゃないかと、色々と迷いながらも東北とのご縁は続いた。
そんなこんなで、いつも気持ちのどこかにあった東北。
東北の10年間をどう描いてくれるのか、実に興味があった。

朝からバンプ、胸躍る

そして見始めた1日目。
オープニング曲が流れ始め、その歌声を聴いてハッとする。
バンプだ!

もう、これだけで胸アツ。
BUMP OF CHICKENが!
バンプが!
ロックバンドが!
朝ドラに来た!

ついに、ロックバンドが朝ドラ主題歌を歌う時代がやってきた。
なんかもう、感慨深いよ。
バンプはさ、バンプはさ、さわやかなんだよ、そういや、バンプは朝ドラにぴったりだよ。(語彙力)
そして、この楽曲の透明感がこの上ない。
歌声なんて目に見えないのに、まるで、藤原さんの声が水の塊に変化して、空に向かって浮遊していくような、そんなイメージが頭の中に浮かぶ。
のちのストーリーでわかってくるけれど、山と海、全ては水で繋がっているのだ。
それを音で表現したかのような、そんな秀逸な出来栄え。
なんて素敵な曲をお作りになったの!
私はリアタイ視聴ではなく、録画視聴組で、普段ならせっかちな私はオープニング曲なんかは早回ししがちだったけど、このバンプの曲は1回も早回ししたことなかった。
全回、全部聴いて、何なら繰り返しても見て、存分に堪能した。

そして、オープニング映像のスタッフのお名前を見て、さらにもう一つハッとする。
音楽が、なんと高木正勝さん。
こりゃ、音楽的にも当たりだわ!
私が高木さんのことを認識したのは、組曲のこのCM(▼)がきっかけ。
今見ても、めったくそ、かっこいいね!

すでにサウンドトラックも出てて、さすが朝ドラ、曲数が多いのでしょうね、CDだと全部で6枚(3枚組が2編)も!
ここではそのサントラから、皆さんのご記憶にもあるでしょう、印象的な「環」のオーケストラ・ミックスをご紹介。

他にも、坂本美雨ちゃんが歌っている曲もあったりで。
ドラマを見ているときには、誰が歌ってるのか気づかなったわ~。
後でじっくり、聴かせていただこう。

及川家の人々

「おかえりモネ」に出てくる登場人物の中で、好きだったというか、特に気になっていたのは、及川家の人々。

及川新次(浅野忠信)、美波(坂井真紀)、亮(りょーちん、永瀬廉)。
このドラマが震災をテーマに取り上げるからには、きっと受け止めるのがつらくなるような展開が起こるのかもしれないと、序盤から覚悟して見てはいた。
それが徐々に及川家で起こったことだとわかってくると、そこからはもう涙なしには見られない。
美波を失い、酒に溺れる新次。
だけど、そんな新次を責める気にはなれない。
自身も母親を失い、心に大きな傷を負いながらも、そんな新次をどうしたらよいものか。
ときに、やるせなさも滲ませるりょーちん。
途中の紆余曲折のエピソードには、毎度毎度、本当に泣けた及川親子。
最後には、りょーちんは船を買い、進水式を見守った新次。
この親子も救われる時が来たのかなと、少し安堵したような気持ちになれた。

#私たちのりょーちん

特にりょーちんは、若い頃の私自身と考え方が似てるところがあり、このドラマの登場人物の中では一番感情移入してしまったように思う。

大切なものを失う恐ろしさを知っている。
だったら、最初から大切なものなんてない方がマシだ。

誰が自分の気持ちがわかるって言うんだ?
誰も自分の気持ちなんてわからない。

そうして好意を持って接してきてくれる人をも遠ざけたりもしてきた。
そんな感じで、りょーちんに勝手に、シンパシーを持ってしまったがゆえに、りょーちんに対する思い入れも比例して強くなり、最後には、りょーちんには幸せになってほしいと切に切に思うようになった。
できれば、りょーちんには、「外を向いている」モネとくっついてほしいと序盤は思っていたし、後半は、りょーちんには、「内を向いている」みーちゃんじゃなくて、いっそのこと大学生の水野さんみたいな「外から来た人」といつか結ばれてほしいと思っていた。
外の人なら、りょーちんをがんじがらめにしているものを解きほぐし、りょーちんを自由にしてくれるのではないか。
最後は、みーちゃんが「外を向き」始めたから、そんなみーちゃんとなら良い関係が築けるかもな、とも思えてきたけれど。
りょーちんには、何もかもから、解放されてほしいと思う。
りょーちんは、幸せになっていい。

ところで、及川親子を演じた浅野と永瀬廉君。
この二人の演技は素晴らしかった。(他の人が素晴らしくないということではなく。)
まず、永瀬君。
私、「シンデレラガール」は大好きでよく聴くのだが、King & Princeのメンバーの一人一人の認識がなかなかできなくて、このドラマをきっかけにようやくわかるように。(ごめんなさいね。)
永瀬君の演技歴はよく存じ上げないのだけど、この、りょーちんという、心に傷を抱えた難しい役どころを、とっても繊細に丁寧に作り上げた印象を持っている。
言葉や体の動きだけでなく、視線や表情だけで気持ちを伝えられる。
良い俳優さんだと思いましたよ。
今後もどんどん色んな役に取り組んでいってほしい。
それに、終盤の、永浦家で父親である新次(浅野)との二人で話すシーンは、本当にVery very very well done!!!!って感じで、あの浅野のごっつくて厚い演技に負けず、怖気づかずによく頑張った。

そして、浅野。
完璧。
この言葉以外にないんだけど?

頭のてっぺんからつま先まで、何なら脳内も内臓も、たぶん、全部が新次。
情けなさ、頑固さ、強さ、弱さ、そして愛しさも持つ、東北の中年の元漁師。
浅野の初登場シーン、漁師顔が出来上がりすぎててびっくりしたわ。
え、これ浅野?浅野なの?って、誰だかわからなかったもの。
浅野が出てくると、テレビからちょっと潮の香りや、イチゴ栽培の土の匂い、時には酒の匂いとかがしてきそうじゃなかった?
すごいでしょ、テレビなのに、匂いを連想させる演技って。
私的には、ぶっちぎりの優勝。
浅野、ブラボーーーーーーッ!!(スタンディングオベーションで)

伏線回収しない方針

タイトルの回収については、最終回にて精神的な意味合いでモネが帰ってきたことに対しての、りょーちんやみーちゃんからの「おかえり」ということで。
悪くはないけど、もっとわかりやすい感じか、むしろタイトルを誰かに言わせるようにしなくても良かったかも。
「おかえり」って戻ってきた感の強い言葉だと思うのよ。
モネは、震災で痛みを負った頃の自分を乗り越えて、次のステップに進めるように成長したんだから、戻ったというよりも進んだのではないかと。
「おかえり」というよりも、「いってらっしゃい」な感じが強い。
あの場の流れでは、普通「おかえり」という言葉は出にくいのでは。
ちょっと無理めなタイトル回収だったような気がする。
それまでのストーリー展開で、「おかえりモネ」なのは十分わかっている。

終盤、ストーリーの進みがスローになり、諸々の伏線は回収しない方針なのだとわかったが、回収しきった方が、希望により満ちたエンディングになったのではないかと想像する。
宇田川さんは、誰だかわからずじまい。
鮫島さんが東京パラリンピックで活躍するシーン、入れてほしかった。
このドラマのタイトルロゴの「おかえりモネ」ってクレヨンみたいなもので書いたこの字は、いったい誰が書いたのか。
モネという呼び名は、みーちゃんがモネのことを「お姉ちゃん」と「百音」とを混ぜて呼んだことがきっかけとサヤカさんが言っていたが、この文字は、幼きみーちゃんが書いたものなのか。
視聴者の想像に委ねるパターンでもよいが、私は伏線大回収してもらって終わる方が好みなので、若干の物足りなさはある。

大泣きしたシーンは、サヤカさん

私が一番大泣きしたのは、登米編の最後の日。
サヤカさん(夏木マリ)が山の中で木の新芽を見つけ、一瞬涙ぐんだのか、顔を覆うが、すぐさま空を見上げ、「山の神様、いや、海の神様でも空の神様でもいい。どうか、あの子に、よい未来を!」と言うシーン。

サヤカさんが言う「あの子」というのは、モネを直接的には指していただろうけど、あのセリフの「あの子」は、東北で、あの震災で色んな思いをした全ての子供たち、若者、大人、皆のことだと、私が勝手に解釈し、すべての東北の人々が幸せであって!と、オイオイ声を上げて泣いた。
あの日は、オープニングに「なないろ」は流れず、最後の最後に流れたんだよね。
その後の空撮シーンのことを、下のバンプの「なないろ」のフル尺を聴きながら思い出してほしい。
きっと、また泣けちゃうよ。

コロナ禍を連想させるシーンは幾つかあったが、あまりはっきりとした描写はなされなかった。
それは、このドラマが、もともと震災から10年経っての節目として作成されたものであり、今の私たちが直面している、このコロナ禍の困難を大きく取り上げてしまうと、震災からの10年の物語のメッセージがブレてしまうからだろう。

10年経っても、悲しみや苦しみは消えることはないかもしれない。
今も、厳しい状況下で暮らしておられる方々もいるかもしれない。
私が、この「おかえりモネ」を見続けながらしていたことは、きっと「祈り」だ。
どうか東北の人たちが幸せであってほしい。

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