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働く人が自由に仕事を変えられる状況をいかに作るか・そして誰が創るか/世問う国民党

今朝のNHKラジオマイビズで

「働く人が自由に仕事を変えられる状況は、経済にどんな影響を与える?」

をテーマにインタビューがあった。


#労働移動の有効性を問う


(法政大学教授の水野和夫氏)
以下は筆者が氏の発言を要約した。

Q1 今回の日本政府の骨太の方針の「労働市場改革として成長産業への労働移動」についてどうお考えですか?

一般論としては
「成長産業への労働移動を促すことが、 構造的な賃上げにつながる」
けれど、政府案では日本の現状が考えられてない。

1980年代から90年代にかけて、日本の半導体産業と自動車産業は世界一の生産量を誇って成長産業だった。

しかし、21世紀にはこれらは産業競争力を失い、日本は新たな成長産業を見いだせなくなった。

そもそも現時点では成長産業がないにもかかわらず、労働者に成長産業への移動を促すというのは、発想自体がおかしい。

Q2 移動しようにも移動する場所がないということでしょうか?

1990年代の日本は半導体で世界のシェアの半分を持っていたけれども、
政府は日米半導体協定を受け入れて日本の半導体産業の成長を阻害した。

これは政策の失敗だ。
さらに経営者の責任も大きい。

台湾や韓国の半導体企業が、巨額の設備投資を実施した時に
日本の半導体産業の経営者は企業統合することなくチャンスを逃した。

成長産業が日本になかなか誕生しないのは、政府や特に経営者の先見性が欠如しているからだ。
それにもかかわらず
「賃金が上がらない」
「成長産業が生まれない」
ということを労働者のせいにするのはおかしい。

そもそも経済成長や生産性向上と労働移動は関係がない。
つまり、
労働移動によって賃金は上がり、経済成長が起こるという指摘は正しくない。

Q3 骨太の方針では失業給付や退職金の制度改正によって、成長産業での労働移動の円滑化につなげるとしていますね?

失業給付を手厚くし、辞めやすくし、退職金への課税を増やす
このやり方では良いことはない。

たとえ成長産業があったとしても、これで成長産業への転職につながるか疑問。
失業給付が自己都合による退職だと、
「フローとしての退職金を満額もらうためには転職しない」
と考えるだろう。

しかし、百歩譲って、こうしたことで辞めやすくなったとしても、成長産業への転職には繋がらない。

こんな制度があってもなくても「能力の高い1%の人」は転職できている。
よって、それ以外の99%が辞めやすくなるだけの制度を利用したところで、賃金は上がらない。

Q4 「日本の中での成長産業があるか」の議論はさておき、今、労働市場では人手不足が深刻になっているが、成長産業の労働移動というと、デジタル分野など人手不足を解消したいという思惑があると考えますか?

まず日本のデジタル分野は、今のところ成長産業になってない。
また能力が高いとは言えない99%の人がデジタル分野に移っても、デジタル人材と言われるような労働力にはならないだろう。

さらには、今は労働力人口が減り、どんな業種でも人手不足の状態で、デジタル分野への移動が来れば、移動された職場が困り、景気が悪くなる。

こういった状況は経済に下押し圧力をかける。

Q5 今回の骨太の方針における労働市場改革では、リスキリングも謳われている。これは人材の底上げにはなりますか?

リスキリングをしても成長産業への転職、そして賃上げにはならないだろう。
加えて、長時間労働が是正されていない中で日本の労働者はリスクリングにかける時間はもてない。

また、基本的に
「経済成長しないのは、労働者がスキル向上に向けて何もしないからだ」
という考えは、論点のすり替えや見当違いだ。

Q6 では、賃上げにつながるような労働市場改革はどうあるべきなのか?

まず、 経済成長しないのは労働者に問題があるという考えを根本的から見直すべきだ。
賃金や組織のあり方、経営方針などを決定するのは、企業経営者であって労働者ではない。

個人が会社の利益に貢献すれば、昇給昇格で賃金が上がるが、
現在の日本にとって問題なのは、
労働者全体の賃金が下落していること。

今年の春闘の賃上げ率はおよそ30年ぶりの高水準となったが、
実質賃金は1997年の3月をピークにして、その後四半世紀にわたって下落傾向だ。特に直近では14カ月連続のマイナス。
よって、労働市場改革するなら、労働者に責任を押し付けないことが重要だ。

Q7 どんなところから改革をしていけばいいでしょうか?

現在の日本の低成長は、資本主義が定常状態に入ってきたと考えるべきだ。その時にすべきことは、ケインズが指摘したように、

「明日のことなど心配しない社会の構築」
今、誰もが抱えている老後の不安を解消し、
「年金、医療、介護などの社会保障制度に持続性がある」

という信頼を得るための改革を進めるべきだ。

こうした観点から、社会保障や定年制など労働市場を改革していけばいい。

いずれにせよ、労働移動では老後の不安は解決しない。

以上、水野和夫氏。

水野和夫氏の立ち位置をどう見るか

総じていうと、日本の左翼によくみられる論調に似て、
科学的意見はそれほどないように見える。
少なくとも建設的な意見はほぼなかった。
個別にみていこう。

Q1 >現時点では成長産業がないにもかかわらず、労働者に成長産業への移動を促すというのは、発想自体がおかしい。

坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。の視点に見える。

多分ITなどを念頭に「成長産業がない」と言いたのだろうが、
「アメリカや中国などのように、成長した産業がない」のであって、
ないのなら作らなければならないし、
そういう企業や労働市場を育てなければならない。
「『今負けている。その責任は誰だ』という誰かのせいにして、
自分は何の努力もしない言い訳にする」
現在の風潮に重なって見える。

Q2

1 1990年代、政府は日米半導体協定を受け入れて日本の半導体産業の成長を阻害した政策の失敗だ。
2 当時の経営者の責任が大きい。

と言う分析は同意する。

さらにいうなら
1 政府関係者は日本の未来を売った売国奴
2 当時の日本の無能なサラリーマン経営者は経営ができなかった

と言う表現になる。

しかし、
1 政府関係者は日本の未来を売った売国奴についても、
政府が一人悪いというのは安易で、
政府を選んでいる国民の責任も半分ある。
ほとんどの日本人は政策で政治家を選ばない。

知り合いだからとか、頼まれたからとか、
未来の政治を決めるのが選挙だという発想がない。

自民党を中心とする政府関係者が日本の未来を売った特に1990年代、
輸出産業偏重の経団連が自民党政権を好き勝手にしている間に、
過疎過密は加速し、都市では満員電車と長時間労働が常態化していた。
その弊害は日本中に噴出していたが、
それらを根本解決しようとはほとんどの国民が考えず、
陰では悪口を言いながら表には出さず我慢し続けた。

特に地方は地域衰退に最も罪のある自公政権を選び続けた。

Q4 >デジタル分野など人手不足を解消

氏は、
     「賃金が上がらない」
     「成長産業が生まれない」
      ということを労働者のせいにするのはおかしい。
と主張する。

確かに日本の経営者の問題は半分ある
しかし、
独特の行動様式を持つ日本の労働者の問題も半分ある。

#賃上げや労働移動を自主規制 したし、
世界の産業の潮流をも見誤ったし、
中途半端に大きい日本市場に頼っているから、世界市場を相手にするビジネスモデルに頼る産業に執着した。

K POPや韓ドラの世界市場への挑戦を横目に見ながらである。

だから日本中が総ブラック企業になった。

労働者がブラック企業を見捨てて労働移動したり、
起業したり、自営業に移れば、
その会社は
⚫️ 潰れるか、
⚫️ 努力して
  儲ける良い会社
  福利厚生の良い会社
になっただろう。

Q5 >リスキリング

>リスキリングをしても成長産業への転職、そして賃上げにはならないだろう。

ヨーロッパでは警備員がIT技術視野になるなど、幾つもの成功例がある。
リスキリングは必要だ。

>加えて、長時間労働が是正されていない中で日本の労働者はリスクリングにかける時間はもてない。

長時間労働は、労働者もそれを拒否する態度が必要で、経営者だけの責任ではない。
そんな会社や業界に、未練を残さず、違うところへ飛び出す勇気が必要だ。

自公政権には無理だろうが、西欧では

A ドイツの「短期労働制度」(Kurzarbeit): ドイツは、経済危機や産業の変化による雇用の減少に対処するために「短期労働制度」を導入。雇用主が労働時間を短縮し、労働者に対して一時的な給与削減を行う代わりに、政府が一部の給与を補填する。
これにより、企業は従業員を解雇せずに雇用を維持しやすくなる。
また、この機会を利用して従業員のリスキリングや再教育を進め、需要の高い成長産業への転職を奨励している。

B スウェーデンの教育支援: スウェーデンは、リスキリングを進めるために個人の教育を支援する政策を取っている。
成長産業への転職を目指す人々に対して、教育やトレーニングの費用の一部を補助する制度がある。
また、経済的に困難な状況にある人々に対しては特に支援が行われている。

C フランスの産業転換支援: フランスは、産業の変化により影響を受ける地域や労働者をサポートするために、産業転換支援政策を導入している。
新しい技術や産業に適応するための教育・トレーニングの提供、転職支援、雇用創出に重点を置いている。
特に再生可能エネルギーやデジタル技術などの成長産業への転換を促進する政策が行われている。

Q6 >賃上げにつながるような労働市場改革はどうあるべきか?

>A6 労働市場改革するなら、労働者に責任を押し付けないこと。

氏の答えは、何ら具体性がない。

労働市場は労使で作るものだ。

特に日本労働者に欠けていることは、
労働市場を売り手市場に変える戦略や努力だ。

経営者は、会社を高収益企業に変える努力の欠如だろう。

Q7 どんなところから改革をしていけばいいでしょうか?

氏は、批判に終始しているから、具体案を持たないようだ。

本稿の結論は、全ての国民が当事者意識を持つことだ。

「誰かのせいにするだけで、言い訳を繰り返す」
ことを染み付かせる日本の教育制度改革が
一番急ぐかもしれない。

それとて、
「誰かのせいにするだけで、言い訳を繰り返す」
国民がほとんどでは、
途方に暮れそうだが、
「当事者意識を持つ人をできるだけ早く増やす」
取り組みを始めるしかない。

水野和夫氏を攻撃するつもりはなかったが、
個別の内容にコメントしていると、
外部から見ると、私を攻撃したかのように見えたかもしれない。
単なるケーススタディーなのでご容赦願いたい。










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