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生命の火花。
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#大学

『君の名は。』

高級イタリアンレストランにて、私は待っていた。

無限に続く喧騒の中で、ミラノ風ドリアが50皿を超えて提供される。赤と白のワインボトルは机上に乗り切らない数ほどあり、それに伴って学生のノリもタチが悪くなる。まれに注文されるミラノ風ドリア以外の料理をどの卓上に載せればいいのか店員は困惑し、ベタベタになったテーブルを拭くための紙ナフキンも散乱している。以前悪酔いしてミラノ風ドリアを他の客に投げつけ

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再会(パッションゆえだとしたら)

運命と言わず、他に何と言えば伝わるのかわからない。けれども、それはどうでもいい。言葉に意味はない。

もう二度と会えないかもしれない別れ方をした相手と、数ヶ月ぶりに再会したという、そして私は意識的な無表情のまま、今ここから宇宙空間へ投げ出されたような爆発的衝撃を、心に受けたというだけの話だ。

私の涙は枯れていたし、彼女も無関心だった。交わす言葉はなかった。つまり現象として何も起こり得なかった、つ

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