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ユーザーの悩みを解消し、サービスを進化させる ― CTOの使命とチャレンジ

挑戦の連続 ー 取締役CTO大川が描くユーザーファーストな世界。
エンタメ領域から生活領域へと舞台を移し、ユーザーファーストなプロダクトを追求する道のりとは。
その変遷と理想に迫ります。

ーこれまでのキャリアについて教えてください。

Webアプリケーションの業界に16年間関わっています。キャリアのスタートは株式会社サイバーエージェント(以下、「サイバーエージェント」)のバックエンドエンジニアで、主にエンタメ系のサービスを開発していました。当時はガラケーでしたが、スマートフォンへのシフトが起こってLINEが流行り始めた時期に、その対抗馬になるようなアプリ制作に携わっていました。
バックエンドエンジニアとして業務にあたりながら仕組みを知りたい好奇心もあって、インフラの構築も経験しました。当時はAWS(アマゾンウェブサービス)もなかったので、データセンターにサーバーを運んで配置する...ということもしていました。

ーサイバーエージェントへは、エンジニア志望での入社だったのですか?

もともとは事業やサービスの企画にも携わりたいなと考えていたので、総合職で入社しました。ただ配属希望を聞かれる段階で、エンジニア0期生を募っていて。ちょうどエンジニアリングを強化していくタイミングだったので、これはいい機会だと思って手を挙げてエンジニアになりました。
サービスの企画などビジネスの上流工程がもともと好きなんですよね。サイバーエージェントでは、エンジニアとして開発をしつつPdMとしてKPI分析やデータマイニングに触れながらビジネス領域まで管轄していました。

ー幅広い経験ができて面白そうですね!
 やりたいことに取り組めていたように思えますが、キャリアの転換を考えるきっかけがあったのでしょうか?

確かにとても恵まれた環境でしたね。担当していたサービスが子会社化されて取締役を拝命し、お金回りや組織作りをはじめ経営に関することにも携わるようになりました。
ただ視座が上がれば上がるほど「仕組みの中で守られてるな」と。下駄を履かせてもらっているような感覚がありました。
ここから先、自分が大きく成長できるだろうかと考えた時に、もっと厳しい環境に身を置いたほうがいいだろうなという気持ちが強くなってきたんですよね。
エンタメよりも、生活に密着したサービスを作りたいという想いもあって独立を決意しました。

ーすごい!ストイックですね...!

エンジニアとして生活するくらいには収入を得られるイメージを持って独立しましたが、自分でサービスを作ろうと思って最初に作ったキュレーションメディアでは、全くユーザが集まらないという失敗もしました。
サイバーエージェント時代の同期が立ち上げたスタートアップを手伝ったりもしましたね。1か月後にリリースが迫っているのにほとんどサービスができていない状況でしたが、何とかローンチはできました。
それからはその同期とはゼロベースで一緒にやることが多くなりましたが、来月のお給料が払えないかも!みたいな、資金ショートするギリギリまでいったり結構な経験をしています(笑)。
彼とは最終的に発達障害児向けのメンターマッチングサービスを作るところまで一緒に取り組みました。
彼が強く解決したいと思っていた社会的課題で、それ故に魂がこもっているので投資が決まったり、とんとん拍子で進んでユーザーも増えていきましたね。
そのサービスは徐々に実店舗に注力するようになり、Webサービス以外の部分が増えてきたので、それを機に去ることにしました。
ちょうどその頃に、もともと面識があった吉川さん(現 株式会社くふうカンパニー 執行役CTO)が、株式会社オウチーノ(現 株式会社くふう住まい)のCTOを務めることになり、声をかけていただいたのがくふう住まいへの入社のきっかけです。

ー入社を決めた理由はどういったポイントでしたか?

独立したくらいの時に子どもが生まれて、将来子どもに「パパは何やってるの?どんな仕事をしてるの?」と聞かれた時に、胸を張って言える仕事をしたいなと思ったんです。
当時、吉川さんや穐田さん(現 株式会社くふうカンパニー 代表執行役)から、生活において重要な住まいの領域において、ユーザーが抱えている悩みが長い間解決されないままにあるという話を聞きました。これなら、生涯向き合う課題としてすごくやりがいがあるだろうと思って入社を決めました。

ー色々な縁が重なっての入社だったのですね。

なかでも吉川さんと一緒に働けることは大きかったですね。吉川さんはサイバーエージェント時代の同僚で、私が独立して最初に作ったキュレーションメディアの開発を無償で手伝ってくれていた人です。
独立した当時、出資してもらわないといいサービスを作れないと思って、投資家向けにビジネスモデルを書いたりとか企画をこねくり回していました。それを見て吉川さんが「もう作っちゃえばいいんじゃないですか?」と言ってくれて。
誰かにお金をもらって許可を待つみたいな姿勢じゃなくて、作りたいものがあるならすぐ作っちゃおうよ!というスタンスにハッとしたのを覚えています。

ーさりげない一言が大きな気付きを与えてくれたんですね。
 今でもその言葉が活きているなと思うことはありますか?

ありますね。とにかくバッターボックスに立ってバットを振らないことには始まらなくて、100回振って1回当たるかどうかという世界です。サービスや機能を、とにかく早くリリースすることがとても大事だと思っています。
MIT Media Lab元所長の伊藤穣一さんが唱えた「Deploy or Die(「とにかく作って世界に公開することが大事」という意味)」という言葉がありますが、私自身スタートアップを経験してその言葉の意味を強烈に感じました。資金を調達したのはいいけど、プロダクト開発に半年かけるのと3ヶ月でリリースするのでは全然違いますからね。
開発している間は売上は上がらないし、リリースしても空振りになるかもしれない。とにかく短い期間でリリースして試してみないことには、学びを得られないし次のトライができないと思っています。
もたもたしていると資金もあっという間に減っていきますし、その実体験もあります。だからこそ早く出さなきゃ早く試さなきゃっていう気持ちは、ものすごく強く持っています。

ーこれまでのお話が線で繋がる印象を受けますね。
 生活に密着したサービスを作りたい、ユーザーの悩みを解消したいというお話がありましたが、そうした想いの部分で入社後にギャップを感じることはありましたか?

私が入社した当時はまだ経営体制が変わったばかりで、少なくともエンジニアチームには、「ユーザーファースト」の考えを強く持っている人はいなかったように思います。
当時は営業がクライアントから依頼されたことをエンジニアが受け身でやるような構図で、サービスを今後どうしていくかというビジネス的なことには興味が薄いメンバーが多かったですね。

ーそれは意外ですね。周囲の意識が変わったなと思ったきっかけはありますか?

いくつか立て続けにプロダクトをリリースした時期があって、「こんな機能をリリースしました!」とSlackで発信し続けて半年くらい経って変わってきました。
当時はみんな、背景や情報もなく開発の依頼を受けて、何も気にせずにただただ対応していたように見えました。
一方私は、なぜこれが必要なのか、これを通してクライアントは何を実現したいのかが気になり色々と聞いていったんですよね。
もしかしたら解決したい課題に対して違うアプローチがあるかもしれないということも意識していました。
そのように営業とSlack上でオープンにやり取りしているのを他のメンバーも見て、クライアントに言われたことだけをやる、といった意識から変わっていったように思います。

ーそうした姿勢が周りに影響を与えて、技術部長、執行役員、そして取締役CTOとして責任あるポジションを任されるようになったのですね。
 今後CTOとして実現したいことはなんですか?

「ユーザーが正しい意思決定をできるようにする」これを実現したいです。
現状はまだそれを実現するフェーズにはないので、それを叶えるためのプロダクト、サービスに成長させたいですね。
例えば、現在「オウチーノ」は家を売りたい・買いたいユーザーに対して不動産会社を紹介するところに留まっています。しかし実はユーザーが直面している悩みというのは、不動産会社にコンタクトを取ったその先だったりします。紹介して終わりではなく、ユーザーに伴走し続ける必要があり、それを叶えるためにプロダクトが変わっていかなければならないと思いますね。

ー「ユーザーが正しい意思決定をできるようにする」これの実現のために解決すべき課題はどんなことがありますか?

実際の不動産売買の様子を見る機会が足りないと思っています。家を売ったり買ったりしたいユーザーとその人たちの相談に乗る不動産会社が具体的にどう接しているのか、それに対してお互いどう感じているかの解像度がまだ低いということです。
この点については、ユーザーの声、実際に不動産業界で働いている人たちの声を集める施策が始まっています。
記事制作チームでは、実際に家の売買経験のあるユーザーに、インタビューをさせていただいています。このデータが蓄積していけば、ユーザーの課題解決に役立てられるかもしれないと思っています。

ー独自のデータ収集が大切ということですね。
 ところで「ユーザーが正しい意思決定をできるようにする」ために、具体的にはどういうプロダクトを作りたいのですか?

具体的にどういうプロダクトによって実現できるのかは、今の段階では分からないんです。
不変的で確実に求められているものがあるなら、それを目指して進めていけばいいのですが、コロナによって生活スタイルや価値観が大きく変わったように、社会情勢に影響を受けてユーザーのニーズも変化していきます。
だからやはり大事なのは、どれだけバッターボックスに立ってバットを振れるかなんですよね。とにかく短い期間でリリースして試してみての繰り返しで、ちょっとしたことでも積み重ねてユーザーに寄り添い続けることが必要だと思います。
それを考えると、試行錯誤しやすい組織、システムになっていないといけないと思います。

ー試行錯誤しやすい組織、システムとは?

まず組織の話であれば、早くリリースする、早く試すという文化形成が必要だと思います。
また素早く仮説検証を行うには、エンジニアだけでなくビジネスサイドのメンバーとの協力関係が必要です。様々なセクションのメンバーが同じゴールを目指していなければなりません。
開発組織としては優れたシステムを探求していくことはもちろん大事ですが、それを使って何を成したいのか、というところに目が向けられる人の集まりにしたいと思ってます。

技術的な面では、フィーチャートグルという機能を入れています。これによって機能を一部ユーザーに限定公開して試してもらうことができたり、仮説検証を回しやすくなります。
実装期間を短くするという観点では、設計をきれいにするのも大切です。チームで開発を進めていくので、自分が作った部分を他の人が担当することもあります。その時にどういう作りになっているかすぐに把握できることが重要です。
開発が進むとどうしても今は使われていないコードが溜まってくるので、それをきれいにしたり、特にフロントエンドの領域はテクノロジーの進歩が早くてライブラリ等を別のものにリプレイスして設計し直すことも必要になってきます。これを繰り返すことで、実際に完成するまでのスピードがぐっと短くなるんですよね。

理想は、「よしやろう!」と決めたら次の日にリリースしたいくらいです。企画した時点で「ユーザーのためになるから絶対やろう!」となっているわけなので、今すぐ届けたいんですよね。実際にはそうはいかないですが、そんな気持ちです。

ースピード感を重視することが「ユーザーが正しい意思決定をできるようにする」の実現に繋がるんですね。
 そのためのプロダクトと組織の強化、これからが非常に楽しみです。