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人を癒す力~あの日、私は、手のぬくもりによって救われた…~

息子が生まれた後
私は不妊治療をしていました。

始めは、
命は授かりもの
そう思っていましたから、
全て自然にお任せしていました。

けれど
息子が2歳、3歳と
年を重ねるにつれ
そろそろ次の子をと
望む気持ちが
強くなっていきました。

とは言え
不妊治療へのためらいもあって…。

主人と話し合い、
最終的には
やらずに後悔するよりは…
そのような結論に至り
治療に踏み切りました。

治療の最初に行ったのが
子宮卵管造影検査
という検査でした。

強い痛みを感じる検査
とのことで
覚悟はしていましたが、
いざ始まってみて、
想像以上の痛みに
驚いてしまいました。

でも…

私はその検査の最中に
思いも寄らない出来事に遭遇し、
救われたのです。

それは、
検査が始まって
間もなくのことでした。

隣にいた看護師さんが、
突然私の手を
両手で包み込むように握りしめ
「辛いね…」
「すぐに終わるからね」
そう優しく声をかけ
励ましてくださったのです。

その瞬間、
体中に温かいものが広がって、
泣きたくなるような
幸せな気持ちになりました。

もちろん、
痛みがなくなった訳では
ありませんでしたが
この看護師さんのお陰で
辛い検査を無事に
乗り越えることが出来ました。


子宮卵管造影検査後しばらくは、
卵管の通りが良くなり
妊娠しやすい状態が続くとの話を
聞いていましたが、
なんと本当に、
その後のタイミング療法で
私はすぐに妊娠しました。

信じられないという驚きと
夢が叶ったという喜びで
いっぱいでした。

すぐに家族に報告し
妊娠を喜び合いました。
特にも
ずっと弟や妹を欲しい
と言っていた息子は
とても喜んでくれました。

ところが…

間もなく
流産しました。

もちろん
悲しい気持ちはありましたが、
妊娠したという事実は
私たちにとって
大きな希望の光となりました。

諦めずに治療を続けていけば
きっと…。

しかし、その後は
全くその兆候は表れず
やがて
妊娠しやすいと言われる時期も
過ぎてしまいました。

タイミング療法での成果はなく
次のステップに
入ることになりました。

人工受精。

基本的には痛みはない治療
とのことでしたが、
中には痛みを感じる人もおり
個人差があるとの説明を受けました。

中には痛みを感じる人もいる…
その言葉に、
最初の検査の痛みを思い出し
急に不安になりました。

でも、すぐに、
あの検査を
乗り越えられたのだから大丈夫…
そう自分に言い聞かせました。

1回目の人工授精の日。

その日もいつものように
一人で受診しました。

検査台に横になり
おなかの上にカーテンが引かれ
下半身側には、
先生や看護師さんが
上半身側には、
私一人が取り残されました。

「それでは始めますね」

カーテンの向こうから
先生の声が聞こえました。

いよいよ
治療が始まりました。

ところが…

その治療は
私の予想以上に
強い痛みを伴うものでした。

思っていたのと違う…

それでも私は、
痛いとも、辛いとも言えずに
一人で静かに痛みと戦いました。

すぐに終わる…
あと少し…
そう自分を励まし続けながら…。

「はい。終わりました」

カーテンの向こうから
先生の声が聞こえ
ほっとした次の瞬間でした。

私は急に息苦しくなり
検査台に横になっているというのに
横になっていることさえ出来ないほど、
激しい眩暈に襲われました。

そして
体が自分の意思とは
全く違う動きを始めました。

手がけいれんをおこし
親指が中に入って
指がまっすぐにのびた状態で
固まってしまいました。

息が出来ない…
自分の体が自分の意思とは
関係ない動きを始める…
言葉に表せない程の恐怖でした。

「息を吸って!」
「大丈夫ですよ」
看護師さんの呼びかけに
何とか息を吸おうとしても
苦しさは変わりませんでした。

私は別室へと担ぎ込まれました。

間もなく発作は治まり
自然な呼吸が出来るようになると
涙がこぼれました。

息が出来ることに、
元の自分の体に戻ったことに、
心から安心しました。

「こういう人も時々います。
 だから、心配しないでくださいね」
「痛みが続く場合は、
 薬も処方しますので、
 遠慮なく言ってくださいね」

看護師さんにそう言われ
「ここで休ませて頂くだけで
 大丈夫です」
とだけ伝え、
しばらくベットで
休ませてもらいました。


きっと、
私のように痛みを感じるのは
本当に稀なパターンなのだと
思います。

記憶が定かではないのですが
子宮卵管造影検査の時と
同じくらいの痛みに感じました。

でもなぜ?
造影検査では耐えられたのに、
今回は…

そう思った時に
私は看護師さんのことを
思い出しました。

私の手を握りしめ
優しく励ましてくれた
看護師さんのことを、
その温かい手のぬくもりを…。

今回はカーテンで仕切られ
私の視界に入る世界には
私しかいませんでした。

先生や看護師さんの
声は聞こえてきても
私はずっと孤独で、不安でした。

たったそれだけのこと。
けれど
それが大きな違いでした。

もしもこの日、
主人や看護師さんが隣にいて
手を握っていてくれていたら…
もしかしたら
あの子宮卵管造影検査の時のように
この治療も
難なく乗り越えられていた
のかもしれません。

この出来事を通して、
優しさやぬくもりは
人の不安、
そして痛みさえも癒す
ということを実感しました。


私たちは、
痛いところを手で摩ったり
辛そうにしている人がいたら
背中をさすってあげたり
ということを
ごく自然にしていますよね。

これは私たちが本能的に行っている
自然の手当てなのだそうです。
整体では
「愉気」
と言われていますね。

つまり私たちは
誰もが生まれつき
人を癒す力を持っている
ということなのですね。

『触れる』
それは今すぐに出来る
最も身近で簡単な治療法、癒し…
そして、
日常的に行うスキンシップは
心や体の健康、
そして
幸せにつながる
大切な行為なのですね。

思えば
我が家の朝のハグも
私たち一人一人の
幸せにつながっている
そんな風に感じます。

年頃の息子とは…
さて、それが難しいところです。
今のところはエアハグ実行中です。

ハグについては、
こちらの記事をどうぞ。

もし、今あなたが
あるいは身近な人が
苦しみの中にいたら
そっと肩を抱いたり
あるいは
手を握ったりして
触れ合ってみてはいかがでしょうか。

あなたの手にも
誰かを幸せにする
そんな魔法のような力が
備わっているのですから。

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