見出し画像

自分を満たすためではなく、思い出すために。

4月まで働いていた施設で
出会ったSさん。

私はずっと、
Sさんの身の回りのお世話や
入浴時のサポートを
させていただいていました。

これからも
私が出来ることを
精一杯やっていきたい…

そう思っていた矢先、
突然、
施設を
辞めることになってしまって。

別れの日が
近づいた4月のある日。

いつものように
Sさんの身の回りのお世話を
させていただいた時
Sさんが言いました。

「なおみさん。
良かったら
ライン交換してくれませんか」

それは
辞めることが決まってから
私もずっと
考えていたことでした。

だって
これっきりになってしまうのは
あまりにもさみし過ぎましたから。

時々
Sさんに頼まれて
家族や知り合いからの
ラインを開いて確認したり
時には
代わりに
文字を打つこともあった私は、
ラインのやり取り自体
Sさんに負担をかけるのでは
という思いと
ラインの内容が
他の人の目に触れることに
若干の躊躇いがありました。

そのことを
正直に話したら
Siriを使えば
新着メールは
音声で教えてくれるから
一人で確認出来るし
音声でラインを打つことも
可能だから
安心してと。

便利な世の中ですね。

それで、
私たちは
ラインを交換したのでした。

交換した後
確認のためと
スタンプを押してみたら

「届いたよ。
あっ、ごめんね。
私、スタンプは押せないの」

そっかぁ…
文字は音声で打てるけれど
スタンプは押せないんだ…

私の当たり前
私の出来ることが
決して当たり前ではないことを
ここでも
実感したのでした。

仕事を辞めて数日後
クリーニングに出した
ポロシャツを
施設に返しに行きました。

Sさんとの面会は
出来ないと
分かっていたのですが、
それでも
施設に着いてからずっと
Sさ~ん
と心の中で
呼びかけ続けていました。

玄関先で
職員の方たちと
再会を喜び合い
数分間立ち話をして
帰って来ました。

その後に
Sさんにラインをしました。

施設に行った時に、
心の中で
呼びかけていたんですけれど
私の心の声
届きましたか?
と。

そしたら
そしたら…

心の声も
本当の声も
聞こえましたよ。
と。

私の声
Sさんのお部屋まで
届いていたみたい。

Sさんは、
とても耳がいいんですね。

心の声も
本当の声も
ちゃんと届いたこと、
嬉しく思いました。

さて、
それから
ひと月ほど経った頃。
Sさんの夢をみました。

姿形はSさんではないのだけれど
夢の中ではSさんだと思っていて。

夢の中でのSさんは
自分の足で
しっかり立っていました。

それで
あぁ立てるようになったんだ
と嬉しく思ったんです。

夢から覚めて
久しぶりにラインをしました。
夢のことを話して。

そしたら
最近ずっと
私のことを考えていたと。

私の心の声
届いちゃったかな。
と茶目っ気たっぷりの返信が。

嬉しかったです。

私が辞めた後に
施設の運営方針が
変わったようです。

私の後に入った人も
辞めてしまったのだとか。

他にも
頼りにしていた人が
別の施設に
異動になるとかで
とにかく色々あって
Sさんにとって
この1ヶ月は
ストレス過多の
毎日だったよう。

私も、
この1ヶ月は
とにかく忙しくて、
主人と
けんかをしてしまったこと。
今は
だいぶ落ち着いてきたことなどを
伝えました。

そしたら
逆に
Sさんに
無理しないでねと
励まされて。

気が付けば
こんなやり取りが
まるで向こうも
文字を打っているかのように
スムーズに出来て。
正直驚きました。

それでも、
後からお詫びのラインが。

後でラインを見返してみたら
送信されていない文章も
たくさんあったみたい。
チグハグなやり取りに
なってしまって
ごめんなさいねと。

でも
そんなこと
全然なかったんです。

私の中では
ちゃんと
つながっていましたから。

何より
こうして
ラインをやり取りしたことで
大切なことを
思い出すことが 
出来たのですから。

さて、
この日は
何だかとてもいい日で。

Sさんとのラインの後
氏神様にお参りに行ったら
クロアゲハとヒヨドリが
迎えてくれて。

神様が
歓迎してくださっているんだなと
嬉しくなりました。

その後、
家の近くの
お気に入りのカフェに行って
遅めのランチをしました。

本棚に
長田弘さんの本があって。

コーヒーとサンドイッチを
食べた後
コーヒーをもう1杯
それから
スイーツも頼んで
30分程
読書を楽しみました。

ゆったりと
静かな時間が流れていました。

カフェの雰囲気
おいしいコーヒーと
サンドイッチ
スイーツ
長田弘さんの本
もちろん
それらが
素晴らしかったのは
間違いないのですが、
それらを味わって、
私が幸せだなと
感じたこと
そのことが何より
大切なことだったんだと
後から思いました。

家にいても
幸せを感じることは
出来るのだけれど
きっと今日は、
この気持ちを
思い出すために
ここに来たんだと
思いました。

だから
この今日感じた幸せは
いつもいつも
ここに来なくても
味わえるのだと。

もちろん
また時々
訪れたいとは思いますけれどね。

それは
気持ちを整えるため
なのかもしれないし、
もしかしたら
神社へお参りするみたいに
カフェへの
感謝とかお礼の気持ち
なのかもしれないし…。

そしてそれは
Sさんとのラインのやり取りも
きっと同じで。

お互いが
そこに執着するのではなくて
お互いが
ご縁に感謝したり
大切なことを
思い出したりする
そんな
自分が自分に帰る場所
のようなもの
なのかもしれないなぁ…と。

この日が
素晴らしい日になったのは
きっと
そんな理由からだったのだと
思います。

さて、
長田弘さんの本は
半分まで読みました。

次に訪れた時に、
残りの半分を
読もうと思います。

その日まで
あの幸せを
心の中で
思い出しながら。

この記事を書いている時に
やまりょうさんの
記事に出会いました。

https://note.com/natural_look/n/nc032ce0e53c2

人生に起こる
様々な出来事を
恵みとして受け止め
それを学びとして
成長していく
それが
本当の意味で
生きる
ということなのかもしれないな…
そんなことを
思いました。

やまりょうさん
ステキな記事を
ありがとうございました。









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?