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13歳の孤独

以前
『13歳の決断』
にも書きましたが、
息子の中学校の
ソフトテニス部には、
部と連動した
クラブチーム
という組織があります。

クラブチームメンバーは、
そっくりそのまま部のメンバー。
コーチも同じ。

違いと言えば
クラブチームは
学校の管理下外にあること。

クラブチームへの入会は
一応任意となっていますが、
ソフトテニス部員は、
クラブチームにも入会する
というのが 
暗黙のルールに
なっていました。

学校の部活動には
平日は2時間、
休日は3時間、
土日のどちらかは休み
という決まりがありますが、
クラブチームには、
そう言った決まりや制限が
全くありません。

学校の決まりの範囲を
超える部分は、
クラブチームの練習で補われ、
土日などの休みの日は、
部活動以外の時間を
全て埋める形で
朝から夕方までまる一日
クラブチームの
活動時間となりました。

息子も入部と同時に
例外なく
クラブチームに入会しました。

しかし、
1年間やってみて
色々考えるところがあって
悩んだ末に
この春、
クラブチームを退会しました。

それは
クラブチーム発足依頼
前代未聞のことでした。


「迎えお願いします」

日曜日。
15時頃に
息子から連絡があり
息子の迎えに行きました。

先週の土曜日、日曜日は、
県の新人戦の大会がありました。

土曜日は個人戦、
日曜日は団体戦の試合が
行われました。

個人戦は、
1ペアが出場。

団体戦は
地区予選で敗退したので
参加出来ませんでしたが、
父母会での話し合いで
他校の試合を
見学に行くことになりました。

会場への送迎は、
土曜日は
部活動ということで
学校が手配したバスで、
日曜日は 
クラブチーム活動
ということで 
父母会の担当者が
行いました。

日曜日の見学は
クラブチーム活動なので、
息子は関係ないのですが、
父母会の事務局の方が
気を利かせてくれ
息子に声をかけてくれたようで
息子は自分の意志で
今回のみ、
参加を決めたようです。

あいにくの雨
そして寒さに加え
風も強く
応援、見学する側も
大変な一日だったようです。

日曜日。
帰りの時間の頃に
コーチから
以下のような内容の
ラインが入りました。

到着後、 
15時~17時まで練習します。
強制ではなく、やりたい子だけ。
練習内容も自由に。
子どもたちに全て任せます。

実は、
前々から
日曜日の夕方は、
クラブチーム練習が
入る可能性があるとの
連絡を受けていました。

クラブチーム練習なので、
息子には
関係ないのですが、
見学後の練習ということで、
途中から
みんなと別行動になることを
少し気にしていたようでした。

県大会見学ということで
今回のみ
クラブチームの活動に
参加させてもらったのですが、
練習の部分だけ
不参加というのは
どうなのだろう…とも
思ったのでしょう。

それでも
練習に参加すれば
土日の休みは
全てなくなります。
休日に全く
自由な時間がない
ということは
息子にとって
耐えがたいことでした。

幸いにも
任意と決まり
メンバーの多くが
今日は参加しないと
決めたようでした。

息子も任意という時点で
安心したようです。
参加しないのは
自分だけじゃないと。

ただ
試合観戦後
コーチが一言
こう言ったのだそう。

「お前たちも
もう少し練習したらどうだ」
と。


私が迎えに行くと
テニスコートの入り口で
雨に濡れながら
息子はたった一人で
立っていました。

結局
迎えを呼んだのは、
息子だけ。

みんなは
練習に向かったようでした。

今日もみんなと違う。

でも…

それはいつものこと。

これくらい
へっちゃらだよね…。

私は心の中で
そう呟きました。

家に帰って
息子は言いました。

「みんな、結局
コーチのご機嫌をとってるんだ!
コーチにあんなこと
言われた後でさえ、
俺は帰るんだからね…
どうせ俺はそういうやつ
と思われているからいいんだ!」

そう言いながら
息子はどこか寂しそうでした。

息子は
自分の気持ちに
正直に生きている

そんな息子のことを
いつも凄いなあと思って
見ていました。

けれど、
やっぱり、
時々
不安になることも
あるのでしょう…。

息子は
テニスが嫌いなわけでは
ないのです。
他にも
やりたいことがたくさんある
それだけなのです。
部活動は
真面目に全力で
取り組んでいるのです。

でも、
俺はコーチに
見捨てられてる…
どこかでそう思っているのかも
しれません。

私は
やるせない気持ちになり

「自分たちに任せる
なんて言っておきながら
『練習した方がいいんじゃないか』
なんて…
ずるいよ!」

思わず
コーチの悪口ともとれることを
言ってしまいました…。   

それから
慌ててこう付け加えました。

「本当はさ
みんなも今日ぐらいは
帰りたかったんじゃないかな…。
こんなに雨も降ってるし。

だって、
毎週朝から晩までだもの。
こんな時ぐらい帰りたいよね。

でもさぁ、
出来なかったんじゃないかな…。
やっぱり
怖かったんじゃないかな…。   
コーチにどう思われるかって。

だから、
○○は凄いと思うよ」

主人も言いました。

「一人だけ
違うことをするのってさ
怖いんだよ。
大人でさえ、
出来ない人が
たくさんいるからね…。
だから凄いと思うよ」

「そうだよね、お父さん。
○○はすごいよね。
私とお父さん、
凄い子ども産んじゃったね」

息子は
黙って聞いていました。

自分の思いを大切にしたい
その結果
一人だけ
みんなと違う行動をとることに
なってしまった息子。

みんなと違うということは
寂しくて孤独でもあるでしょう。

たった一人でも
思いを分かち合える仲間がいれば
また違うのでしょうけれど。

でも、
息子は分かっているのです。
チームメートは
決して裏切った訳ではないと。

あんなことを言われた後に
練習せずに帰ったら
コーチにどう思われるだろう…
それが、
怖かったに違いないと。

むしゃくしゃしながら
寒い中、
雨に濡れ練習している
仲間の方が 
本当は
もっと辛いのかもしれないから。

一方で
本当のところはどうなんだろう…
みんなの本心が分からない…
正直そんな風に思うことも
あるようです。

言ってることと
やっていることが違うから…。

そうだよね…
分からないよね。

でも、
一つだけ確かなことは

○○は、
自分の気持ちに
正直に生きていると言うこと。


それから
私たちは
温かい飲み物を飲みました。

息子は、少し、
気持ちがほぐれたようで

「宿題ぜんぜん 
やってないんだよ!
やばいよ!」

そう明るく言い
2階へ駆け上がって行きました。

2時間程して
下へ降りてくると、
物作りを始めました。

宿題を終え
好きなことをしているうちに
やっぱり
これで良かったんだと
思えたのではないでしょうか。

もうその頃には 
いつもの
息子に戻っていました。



私たちは
そんな息子のことを、
心から愛おしいと思いました。

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