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全くもてなかったあの頃。それでも私は誰かを幸せにしていた~笑顔は人を幸せにすると教えてくれた人たち

学生の頃の私は
ずっと片想いばかり。

全くもてませんでした。

友達から
付き合っている
彼氏の話を聞く度に
いいな~と
いつもうらやましく
思っていました。

今となっては
主人と出会うことが
出来たのだから
もてるもてないなんて
もうどうでもいい話なのですが
当時は、
なぜ私はもてないんだろう…
どうやったら
彼氏が出来るんだろう…と
毎日そんなことばかり
考えていました。

ただ、
こんな私を、
かわいがってくれた人たちも
いたにはいたのです。

年上、それも
父親ほど年の離れた…
中には、
もっと年上の人もいましたが
そういう方々に
ずいぶん
かわいがってもらいました。

短大生の時、
一人暮らしをしていました。
下の階には
管理人さんご夫婦が住んでいて、
毎月の家賃の支払いの時、
実家から荷物が届いたと
連絡を受けた時などに、
事務所でちょくちょく
お話をしました。

旦那さんは、
静かな人でしたが、
私とのおしゃべりを
楽しんでくれ
会う度に、
「息子の嫁に来てほしい」
と言われました。

息子さんは
10歳くらい年上だったと
思いますが
お互い顔も性格も知らず
親の願いが 
一人歩きしているだけの話 
だったのですが
この世の中に
たとえ親であっても
私をお嫁にほしい
と言ってくれる人がいる
ということが、
嬉しくてたまりませんでした。

ちょうどその頃
住んでいた場所から
徒歩3分くらいの所にある
駅前のパン喫茶で
アルバイトをしていました。

週に4、5回
夕方から深夜まで働いていました。
夕方からのバイトは学生のみ。
全員で10数人はいたでしょうか。
毎週それぞれの予定に合わせて
シフトを組み
1日5、6人で対応していました。 

社長と専務は夫婦で
アルバイト先の先輩いわく
訳あって
お子さんはいないとのことでした。
だからでしょうか…。
私たちを子どものように
かわいがってくれました。

社長も店に出て
私たちと一緒に
働くこともありましたが、
たいていは
閉店時間の1時間程前に来て
閉店の準備や
片付けなどを一緒にしました。

店を閉め、片付けが終わると、
「好きなの飲んでいいよ」と
売店の飲み物を
サービスしてくれました。
その飲み物を飲みながら
よく話をしました。

いつだったか
「あなたの笑顔は
ここで働いている人たちの
ベスト3に入るよ」
そう言って褒めてくれました。

こんな風に
自分の笑顔を
褒めてもらったのは
初めてでした。

私は嬉しくて
これまで以上に
笑顔で接客するように
なりました。

このお店によく来るお客さんで
6、70代のおじさんがいました。

白髪で、綺麗な格好をしていて、
夜の空いている時間にふらっと来て、
いつも決まって
ホットミルクを注文しました。

ホットミルクを一口飲むと
いたずらっぽい笑顔で 
いつもこう言いました。
「それにしても…
ここのホットミルクは
まずいね」
それに対して
私たちが、笑顔で
「すみません」
と答える。
それがお決まりのあいさつに
なっていました。

同じアルバイトの
おしとやかな先輩が、
ある日、おじさんを見て
「あの人、絶対にお金持ちだと思う」
と言いました。
え~普通の人に見えるけど、
見る人が見たら分かるのかな…
私は先輩が何を根拠に
そう言っているのだろうと
とても不思議に思いました。

その白髪の紳士もまた、
「この店の子は笑顔がいい。
君の笑顔もいいね」
と褒めてくれました。

この人は、
ホットミルクを飲みに
来てるんじゃなくて、
私たちの笑顔を
見に来てるんだなと
その時思いました。

これまでの人生
自分の笑顔を
こんなにも
褒めてもらったことは
ありませんでした。

こんな風に
言ってくれる人がいるのだから
これからもこの笑顔を
大切にしていこう。
そう思いました。

私が短大を卒業する少し前に
この白髪の紳士が
近くのホテルのラウンジに
アルバイトの皆を招待し
お茶会を開いてくれました。

学生アルバイト私たち皆を
お茶に招待してくれるなんて
やっぱりこのおじさんは
お金持ちなんだな…
と思うと同時に
私たちの笑顔は
それだけおじさんを
幸せにしていた
ということなのかな
とも思いました。

短大生活2年間で
管理人さん、
アルバイト先の社長、
そして白髪の紳士に
たくさんかわいがってもらった私は
漠然とではありましたが、
『笑顔』が人の幸せと
深く結びついているということを
感じるようになりました。

短大を卒業し、
私は夢だった
幼稚園の先生になりました。

私の勤務先の園長先生が
カメラが好きな先生で
よく保育の様子を撮影し
子どもたちに配ったり
園内に飾ったりしていました。

私が被写体になることも多く
「園長先生、
なおみ先生の写真、
多くないですか?」
とベテランの先生が
冗談を言って
からかうことがありました。
それに対して園長先生が、
「いや~そういうつもりは
ないんだけどねぇ。
笑ってるとね、
つい、撮りたくなるんだよね」
と言っていたのが
とても嬉しかったのを
憶えています。

私の結婚式の時に
園長先生に祝辞を
お願いしました。

先生は、祝辞の最後に
相田みつをさんの
この詩を贈ってくれました。

ただいるだけで

あなたがそこにいるだけで
その場の空気があかるくなる
あなたがそこにただいるだけで
みんなのこころがやすらぐ
そんなあなたにわたしもなりたい

私の大好きな詩。
こんな人になれたらと
ずっと思っていました。

あなたがいるだけで
みんなのこころがやすらぐ

たった一人でも
そんな風に思ってくれる人がいる
そのことが嬉しくて、
胸がいっぱいになりました。


私の父はとても厳しかったので
そういう意味では
私は
父親の優しさというものに
飢えていたのかもしれません。

でも、
振り返ってみると
私は、たくさんの人たちから
父親的な優しさだったり
愛だったりを
受け取っていたのだな
と思います。

そして、また、
今、こうして
笑顔を大切に
人とのつながりを大切に
思えるのは
自分を大切にしてくれた
たくさんの人たちのおかげなのだと
改めて感謝の気持ちで
いっぱいになります。

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