見出し画像

忘れられない思い出~不安だった私を励まし支えてくれたもの

前回
『親の役目
~お父さんお母さんは
 子どもたちのヒーロー』
という記事を投稿しました。

その記事は
こんな風に始まっています。

今から数年前の秋のこと。

お世話になった先生から
突然電話がありました。

聞けば
年長組の先生が
急きょお休みすることになり
今、新しい先生を
探しているとのこと。

「新しい先生が
見つかるまででいいの。
手伝ってくれない!」

ということで、
先生が見つかるまでの間、
私は幼稚園で働くことに
なりました。

実はこの幼稚園は、
息子が3年間
お世話になった幼稚園で
私にとっても息子にとっても
馴染みのある
思い出の場所でした。

また、
その年に赴任して来た
園長先生は、
なんと前の年まで
息子の通う小学校の
校長先生でした。

子どもたちのためなら
どんな苦労も厭わない
そんな愛溢れる先生で、
子どもたちに
大人気の先生でした。

こんなステキな
上司の下で働けたら
どんなに幸せだろうと
私は密かに憧れていました。

電話をくれた
先輩の先生は
2年前に
園長補佐として
この園に赴任してきていました。
20歳の年の差を意識させない
気さくで話しやすい先生で、
こうして電話で話すのは
約10年ぶりでした。

知らない場所
知らない人ではなかったこと、
新しい先生が
見つかるまでの間だったこと、
憧れの先生の下で働ける
またとないチャンスだったこと、
そして、
何よりの決め手となったのは、
息子が
応援してくれたことでした。

息子は
「○○幼稚園だったらいいよ」
とすんなりOKしてくれたのです。
そこには、
もう一つ大きな理由があって、
大好きな校長先生(園長先生)の
お願いだったら叶えてあげたい
というものでした。

こうして、
新しい先生が
見つかるまでの間
私は幼稚園で
働くことになりました。

とは言え
10年以上
仕事から離れていました。

いざ、
仕事に向かう日になって
私は引き受けたことを
後悔しました。

今の私に
一体何が出来るのだろう…。

私は不安でいっぱいでした。

補佐と
簡単な打ち合わせをして
すぐに一緒に
クラスに向かいました。

クラスの担任は、
新しい先生が見つかるまで、
補佐がするとのこと。
私はそのサポートを
することになりました。

「ちゃんとしたお別れも
出来ないまま 
突然だったでしょ。
子どもたちがね。
不安定になってしまったの。
元々元気なクラスだったから
今回のことがきっかけで
収拾が付かなくなっちゃって…」

「ごめん、あと、お願い!」
そう言うと、
補佐は忙しそうに
職員室に
行ってしまいました。

私が来るまで
こうして補佐は
クラスと職員室を
行ったり来たり
していたのだろう…。

それは、
学校で言うところの
自習時間が
ずっと続いていたようなもの。

言葉は悪いですが
このクラスの子どもたちは
先生が休んでから
約半月ほど、
こうして
放って置かれることが
多かったに違いありません。

何とか力になりたい。
そう思いました。

とは言え、
今日初めて会う子どもたち。
顔も名前も
全く分かりません。

クラスに一人残された私は
何から始めたら良いか
途方に暮れてしまいました。

遅れて登園して来た
子どもたちも
この人誰?
という目で
遠くから私を
見つめていました。

とにかく
不安を取り除いていこう…。
そう思いながら
一番不安でたまらなかったのは
私自身でした。

結婚前まで
幼稚園で働いていたとは言え
その後10年以上も
主婦をしてきた私は
今や
浦島太郎状態でした。

新しい先生が
見つかるまでって…
一体いつまでなんだろう…。

この子たちのために、
私に一体
何が出来るのだろう…。

そんなことを考えていたら

「先生、鬼ごっこしよう」

突然女の子が
声をかけて来ました。

「いいよ」
数人で園庭に出ました。

「じゃんけんぽん」

私が鬼になり
子どもたちを追いかけました。

私は夢中になって
走りました。

園庭中を
走って
走って
走りました。

ようやく鬼が変わり、
私は築山に逃げ、
そこで、
一息つきました。

築山からは
園庭全体を見渡すことが
出来ました。

私の目に真っ先に
飛び込んできたのは
金色に輝く
イチョウの木でした。

小さな木でしたが
そのイチョウは
圧倒的な存在感で
そこに立っていました。

その上には
どこまでも
青い空が広がっていて、
園庭には
子どもたちの元気な声が
響いていました。

澄み渡った青い空
金色に輝くイチョウの木
子どもたちの元気な声…

あ~

胸がいっぱいになり
涙が溢れそうになりました。



と、同時に


きっと、大丈夫。


そう思えたのです。


それから4ヶ月間。
私は
この子どもたちと
かけがえのない時間を
過ごしました。


この4ヶ月間のことは
またいつかお話出来たら
と思います。


今でも
秋になると
あの日の光景が
目に浮かび
胸がいっぱいになります。

私にとって
忘れられない光景。
忘れられない思い出です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?