見出し画像

小さな喜びの種が人生の枝を伸ばす ~ドラマ「あなたのブツが、ここに」を見て~

更に、イエスは言われた。「神の国を何にたとえようか。どのようなたとえで示そうか。それは、からし種のようなものである。土に蒔くときには、地上のどんな種よりも小さいが、蒔くと、成長してどんな野菜よりも大きくなり、葉の陰に空の鳥が巣を作れるほど大きな枝を張る。」
新約聖書 マルコによる福音書 4章30-32節 (新共同訳)

こんにちは、くどちんです。キリスト教主義学校で聖書科教員をしている、牧師です。

Twitterで、「あなたのブツが、ここに」というNHKのドラマに関する感想がたくさん流れているなぁ~と思っていたら、どうやら最終回を迎えたようです。どなたかのつぶやきで、このドラマの主題歌がウルフルズの「バカサバイバー」であることを知って、ちょっと関心が生まれました。ウルフルズ、「ファンです」というほど熱心なファンではないけれど、世代的にはよく聴いていたし、実はベストアルバムとか持ってる(笑) 「バカサバイバー」も、しんどくなった時に「えーい!」ってそれを蹴っ飛ばすようなヤケクソ精神ですっきりする感じで、好きです。

で、最終回に対する感想ツイートを眺めていたらさらに興味が出て来て、調べたら今ちょうど一挙配信をやっていると知ったもので、思い切って全話イッキ見することにしたのでした。
でもせっかちなので、2倍速で観た(笑) (ちなみに私は「リスニング練習」と称して観ている韓ドラも1.25倍速で観る。必死でリスニング。)

キャバクラで働くシングルマザーの主人公が、パンデミック下で勤め先を追われ、「今すごく景気が良いらしい」ということで宅配業に飛び込んでいく……というお話。
接客業、飲食店の苦労。マスク、フェイスシールドの着用。顔の見えない同級生。度重なる消毒。コロナいじめ。宅配利用の急増。働き方が変わる人たち。廃業の決断。自宅で過ごす時間が増えることによる人生観の変化。新たなチャレンジをする人、チャレンジが頓挫する人。頼る所のある人と無い人。

このパンデミックで知らされたのは、本当に「ささやかだけれども大切なもの」の存在だったんだなぁと改めて思いました。
友だちと顔を合わせて話をするとか、一緒にご飯を食べておしゃべりするとか。好きにぶらぶら出かけるとか、昨日も今日も明日も大過なく仕事に行くとか。
そういう小さい小さいものが実は「喜びの種」になっていて、「日常の集大成」としての「人生」を活かしていた。そんなことに気付きました。

冒頭に引用したのは、イエスが語った神の国についてのたとえです。
ここでイエスは「神の国」、つまり来たるべき世界をからし種という小さな種にたとえています。
私たちの日常の中に紛れている、取るに足らない、見過ごしにされそうな、小さな小さなからし種。指先にちょこんと乗る程度の小さな種が、しかし育つと大きく広く枝を伸ばし、私たちの背丈をはるかに超え、鳥を宿し、木陰の涼やかさを生み出していく。

そういえば、ドラマの主題歌「バカサバイバー」にもこんな歌詞が。

誰のせいで そんなショボクレとんねん
だから ゆーてるやろいつも
何かガマンしてんのんちゃう?
そーちゃうん?
もっとうれしそうな顔してる時あるやん?
服買ったときとかさ~ そうそう
ほれみーあのオッサンの顔!
おまえもあんなん なってまうよ!

新しい服を買った時に嬉しそうな顔する、そんな私たちの日常の喜び。それが実は私たちを活かしていて。
「大損した!」とかでなくとも、そういう小さな喜びの種が失われたことがこのパンデミックのしんどいところだったんだなぁと思うのでした。

物流を担う人たちはその「買い物をした時の喜び」という、からし種のような人々の生活の潤いを支え続けてくれていて、「物流は血流」という誇りをも抱きつつ、「ブツ」を待つそれぞれの人たちの所へ走って行ってくださってるんですね。おかげで私たちはこの2年半踏ん張ってこられたのでしょうね。

日常の中の小さな喜びを大切にしつつ、私も私にできる形でそのような小さな喜びの種を周りの人に手渡しつつ、まだもう少し続きそうなこのパンデミックの窮屈な日々を、乗り越えていけたらと願います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?