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若者
田舎に住んでいたあの子は何故かキラキラしていて、一生踏み入れないであろう世界に、羨望の眼差しをむけた。
「本当はもう満たされているのかもしれない」
そう思うと恐ろしくて冷や汗が出たけど、これは多分、久しぶりに乗った自転車のせいだ。
人と物で溢れたこんな汚い世界に充実感を抱いている自分が気持ち悪くて、心底嫌気が差す。誰ともつながることのできない虚しさを、これ以上何で埋めよう。
どうしてこんなに必死で探し求めているのか、たまに分からなくなる。だけど歩かなければ、歌わなければ、私が君を見つけなければ、生きることも死ぬこともできないのだろう。無力感に苛まれた、私の同類に届けばいい。たまに、大嫌いなあんたの言葉に救われるたりする。
今の自分に必要なのは、ひたすらに誰かを愛し抜く強さなのではないかと思ったり、その上で傷つけられても良いと思える覚悟なのではないか、と思ったり、もしかして、私には何もかも足りないのではないかと思ったりする。
考え始めると止まらない悪い癖だった。いつからこうなったのかは忘れたけど、考えようとしている訳じゃないのに、色んな感情や考えに頭を占領される。
こないだまで好きだったあの人を思い返して、愛おしかったはずの、あの部屋の匂いに浸る。だけど、もう好きじゃなかった。二人が永遠に続かないと知ってしまった少女は、いつの間にか自分が変わってしまっていることに気付いた。
「生きている人に惹かれるのが普通でしょ」
え、でも多分ね、分からないけどさ、死んじゃったあの子の方が魅力的だった。きっとあの子がそばにいたら、君はそっちを見ていたと思うの。それならいっそ、私のことも捨てて欲しいと願ってしまうのよ。
愛が何か知らなかった私だから、君を愛せたのかもしれない。ああ多分、絶対そうだ。こんな矛盾だらけの言葉に戸惑う君が好きだったな。
バンドマンが歌うだっさい歌詞と、
授業中に読んだ漫画の、モブキャラが言ってた台詞
私にはそんな借り物しか残っていないんだ。
だけどきっと、誰かにとって私はヒロインで、きっとその誰かは私にとってのモブキャラで、ただの通行人の一人に過ぎなくて。あの日の二人は、きっといつかの映画で主人公になれるとそう思っていたから。
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