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コルクアートの軌跡 第3話 期待

第3話 コルクが集まり続ける仕組み
     15万個ものコルクが集まったわけ

目次
・次は何を描くの?という期待感
・手段と目的の逆転
・目から目へ、手から手へ
・コルクアートは優しさの連鎖

・次は何を描くの?という期待感

第1作「ナポレオン」を発表し、しばらくの間勤務する恵比寿ガーデンプレイスのショーウインドウ内に飾っていたところ、ワインを買いに来たお客さんは勿論、ウェスティンホテルの宿泊客やショッピングに訪れるの方々の目にも留まり、

「へえ、凄い。これは誰がつくったんですか?」
と話しかけられることがたくさんありました。

ワインはコミュニケーションツールになる、とよく言われますが、ワインの香りを想像させるコルクアートもまた、会話を生むということが分かり
、ワインを購入していくお客さんの一部の方は数日後にコルクをもって届けに来てくれるようになりました。

1作品に2400個ほど使っていた当時は、1枚作ると手元に残るコルクはほとんどなくなってしまったのですが、「次も何か作品を作るんですか?」という声が多く、そんなに期待してもらえるんだったら作ってみようと、そこからは皆さまからの期待感によって意欲がわいていくようになりました。

・手段と目的の逆転

始まりはソムリエという職業上、大量に消費して大量に廃棄されるだけのコルクを何かしら活用できることはないか?という廃材利用の思いだったのですが

コルクアートという手段で新しい表現ができるようになると、今度は
「次のコルクアートを作るために、ワインを飲もう!」と、手段と目的が逆転していきます。

それまでは、地域性や味わい、生産者の評価や実力などでワインをお勧めしていたのが、これは熟成していて、コルクは良い色合いになっていそうですね~、と接客の発言もどんどん変わっていたように思います。

幸い、コルクアートが注目されるほどお店を訪ねてくれるお客さんも増え、
フランスワイン専門店でフランスにゆかりのある人物を描いていたため
ワインとの関りもセールストークの一部となり、会社もソムリエ仲間も理解・応援してくれていました。

・目から目へ、手から手へ

ナポレオンに続いて、フィラデルフィアで舞台女優として成功した後、
カンヌ映画祭で出会ったモナコ大公と結婚しモナコ公妃となった
グレースケリーを描き

ミラノ公に仕えた後、フランス王の傍で没したルネッサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチと、様々な国からフランスに関わりをもった偉人を描いていきました。

制作を重ねるうちに、だんだんコツを掴んでいき仕上げるまでのスピードも上がり、テレビやウェブメディアなど取材が入ってくるようになり、
その放送や記事を見た方からもコルクが次々と集まってくるようになります。

SNSを有効に使ったことも功を奏して、まずは画像で見た方が
実物を見てみたいと職場に来てくれるようになり、その時の持ってきてくれたコルクを僕が受け取る。目から目へ、手から手へという流れが生まれました。

・コルクアートは優しさの連鎖

そもそもコルクって何なのか。

コルク樫という木の皮を剥いで、コルクの型に打ち抜き、栓にしたもの。

産地の80%はスペインとポルトガルで、周辺国フランスやイタリアを始めとする全世界のワインに用いられています。

皮を剥がされたコルク樫は、数年の時間をかけて皮を再生する過程でCO2を吸収、繰り返し採取できるだけでなく、周辺の自然の生態系を維持したり、砂漠化を防ぐことにも一役買っているといいます。

ワインになぜコルク栓が使われるのか。

ガラス瓶が生まれる前のワインの容器は木樽だったり、さらに前は土器だったりしました。鉄道も車もない時代、せいぜい馬やロバが動力の採れたものを採れた場所で飲み食いしていた時代には、コルク栓は必要なかったのです。

やがて文明の発達とともに、ワインを船などで運搬する時代が訪れ、長距離移動の為、または保存の為にガラス瓶とコルク栓の組み合わせが誕生しました。今から350〜400年くらい前のこと。

フランスではヴェルサイユでルイ王朝が華やいでいた頃です。
離れた国々の最高のワインが宮廷に届けられていたことも有名ですね。

コルクによってワインを密閉できるようになると、空間だけでなく例えば去年仕込んだものを次の年に楽しむというように、時間を越えることも出来るようになりました。(この期間に瓶の中でワインが変化することを、熟成と呼びます。)

コルク栓によって、空間と時間を超えていく。

空間を越えるのは、遠くにいる誰かに届けるため。時間を越えるのは、未来にそのワインを飲む誰かのため。輸送中に、また熟成中にワインを守っている”誰かのための優しさ”のような存在がコルクです。

そうしてはるばる日本にやって来たワインを僕らが手にし、

「あの仲間たちと飲もう」
「あの記念日に飲もう」
「あのレストランで飲もう。季節のメインディッシュと一緒に・・・」

提供する側のソムリエなら、
「この料理が生まれた土地のワインです。
是非ご一緒にどうぞ」
と、優しさが連鎖するのです。

ワインを飲み終わった後、1粒1粒のコルクは1本1本が、今日までにどんな時間を過ごしてきたのかを語ります。

染み込んだ色の深さはワインを守ってきた時間の長さであり、生産者の刻印はワインの生みの親です。

テーブルに残されたコルクは、そこでワインが注がれ、豊かな食卓のひとときがあったことの証明でもあります。そんなコルクひとつひとつの微妙なグラデーションを分けて、人の表情へと再構築するコルクアート。

実はワインを飲んだのは殆どが皆さまで、僕に届けてくれたのも皆さまです。

僕は10年間で70作品、述べ15万個のコルクを受け取って、ひとつひとつ、ひとりひとりへの感謝を積み上げてきました。

ワインを飲むということ、それは人と人、自然と人、そしてこれまでとこれからを、優しさが連鎖するように結んでいくということです。

もしも使い道のないコルクが余っていたり、
捨ててしまいながらも、何かに使えないかな〜と少しでも思った方は、
是非コルクアート活動に参加してみてください。

・・・第4話に続く・・・

【コルクご提供店舗マップ2023】

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【8/17】
第1話 体験したレストラン業界・ワインビジネスの裏側
     次々と働き手が去ってしまう理由
https://note.com/kuboblanc/n/n5f4d6001f302

【8/18】
第2話 コルクアートのはじまり
     飲食業界での挫折をへて
https://note.com/kuboblanc/n/n9a499d893a96

How?do you do it.

【8/19】
第3話 コルクが集まり続ける仕組み
     15万個ものコルクが集まったわけ
https://note.com/kuboblanc/n/ne78a17da8fba

【8/21】
第4話 コルクアートの作り方
    気になる?どうやって作っているのか
https://note.com/kuboblanc/n/n83e98bd2d72d

【8/22】
第5話 コルクアートの広め方
    SNS発信の良手・悪手
https://note.com/kuboblanc/n/n858965bc9945

What?did(do) you do it.

【8/23】
第6話 コルクアート70作品の軌跡
    選んだモチーフの理由
https://note.com/kuboblanc/n/nb8f464909db1

【8/24】
第7話 新作のモチーフは 「   」
     イタリアワインのラベルを飾って発売へ
https://note.com/kuboblanc/n/nfec0b36e62d6

【8/31】
第8話 作品を通して伝えたいこと
https://note.com/kuboblanc/n/n41cdbbbdbd86

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