「UIデザイナーとエンジニアが輝けるステージを作る」UXデザイナーとして約2年働いた私の感じる、UXデザイナーの責務
この記事は Goodpatch UI Design Advent Calendar 2018の13日目の記事です。
今回の記事では、日々GoodpatchでUXデザイナー/PMとして働く立場として、UIデザイナーやエンジニアとどう関わっているのか、という話をしたいと思います。以前もUXデザイナーの定義や、優れたUXデザイナーの定義などいくつか記事を投稿してきました。それらのアップデート版と考えていただければ!
一般論としてのUXデザイナーとしての責務
まずはじめに、UXデザイナーと言ってもかなり定義が広いので、目線を合わせたいと思います。まず、ここで私の使う一般論としての「UXデザイン」の定義を以下とします。
問題の本質を発見し、解決のための顧客の一連の体験設計を行い、その設計に基づいてインターフェイスを作り上げ、問題を解決に導くという一連の行為を行う人。
と定義します。とは言っても、範囲が広すぎて、一人ですべてをこなすのなんて難しいんですよね。だからチームで共創するわけです。では、名詞にUXデザイナーという肩書を載せている私の責務は何なんだろうか?という話を次にします。
私のUXデザイナーとしての責務
まず私は現在所属しているGoodpatchでの普段の業務ではビジュアルデザインや、フロントエンドのコーディングは直接的には致しません。どちらかというと、それらに辿り着くまでの中間成果物が主な主戦場です。事業の戦略や、サービスのコンセプト、顧客の一連の体験設計、要件定義、プロダクトの全体像の設計、画面ごとの要素や配置、ワイヤーフレームなどが代表的な成果物です。
このUXデザイナーの専門性を説明するのにちょうどよい枠組みがあって、それは皆様御存知ギャレットの5段階モデルです。
主にUIデザイナーの専門性は(構造)骨格、表層だと考えています。(人によるとは思います。僕の解釈です。)逆に言うとUXデザイナーとして、リードすべきは、戦略、要件、構造の部分だと考えています。
UXデザイナーの責務をギャレットの5段階モデルから更に紐解く
UXの5段階モデルでは、下の段階では抽象的であったものが、上へ登るにつれて次第に具体化されていく構成になっています。ひとつひとつの段階がその下にある抽象段階によって支えられている図を見ても分かる通り、下の段階が次の具体化へ登るための『土台』になっています。例えば、きちんとサイト全体の構造が設計されていなければ、ひとつひとつの画面が整理整頓されていたとしても、利用者が目的を達成できるとは限りません。
引用:https://2016.uxdaystokyo.com/article/five-stages-thet-makeup-the-ux.html
本来、UXデザインというのは、5段階すべてのことを指しますが、実際のところ5段階すべてを一人で極めるのも難しいですよね。「チーム」というものが存在する理由がここにも現れます。これまで、自分が特に主にリードしてきたのが、戦略から要件でした。このように、UXデザイナーを名乗る上では、どのレイヤーに軸足を置くのか、どこまで手を出すのかを自分の中で定義しておくのが良いです。GoodpatchのUXデザイナーは主に戦略→要件→構造(骨格)までやる方が多いと思うので、UXデザイナーの責務として、この3つを少し具体的に見ていきます。
戦略:そのサービスは誰に何の価値を届け、対価をもらうのか?
要件の層に進むための必要条件、つまり戦略レイヤーのアウトプットは、一言で言うと、「そのサービスは誰に何の価値を届け、対価をもらうのか?」を決めることではないかと思う。外部環境の調査をして業界のKSFを見つけ出すのも、内部環境を鑑みて戦略を決定するのも、結局は「そのサービスは誰に何の価値を届け、対価をもらうのか?」を決定するための工程だと考えています。
少し昔の話をします。UXデザイナーはユーザーの課題を解決するんだ!ユーザーの声が一番重要!と思い張り切って入社し、1つめのプロジェクトでは、ユーザーインタビューやら、カスタマージャーニーマップやら、様々な枠組みを使ってユーザーの課題を特定することにひたすら時間を使った記憶があります。しかし外部環境のリサーチが充分でなかったことや、POの描く事業の未来のインプット不足などから、後々戦略からひっくり返る。それによって作ったデザインに変更が加わりまくるため、一緒に働くUIのデザイナーが疲弊しまくる。という心苦しい経験をしました。
この経験から、UXデザイナーは、ミクロな視座でユーザーの課題を探求するだけでなく、マクロな視座を持って外部環境をリサーチし、内部環境と外部環境の整合性の取れた戦略を練ること。また、その戦略をPOや経営レイヤーとの合意形成を必ずする。これらが必要だと考えるようになりました。
つまり、戦略レイヤーににおいてUXデザイナーが持つべき能力は
①外部環境リサーチから業界の勝ちパターンを見つけられること
②顧客の課題を特定できること
③内部環境と照らし合わせて戦略を練り上げられること
だと考えています。
要件:〇〇が〇〇を〇〇する(ことで、〇〇な状態になる)というユーザーの行動を具体的に言語化し、ストーリーを組み上げること。
戦略がアウトプットされたところで、次は要件です。要件は、一言で言うとペルソナが目的を達成するためのユーザーのストーリーを設計出来ることだと考えています。
具体的には、ユーザーが△△を□□する(ことで、✗✗な状態になる)というユーザーの行動を具体的に言語化し、ストーリーを組み上げることです。 なぜならそのストーリーから抽出したものがいずれコンテンツ/情報/データとなり、機能となるからです。
要件を定義する手法は、ToBe CJMとか、ストーリーボード、ストーリーマッピングなどがそれに当たります。各手法の中身は一旦置いといて、要件において、UXデザイナーに求められるスキルの話をしたいと思います。それは、概念の分節化です。分節化というのはここでは、
④サービスコンセプトをユーザーの行動レベルに分解出来ること
⑤ユーザーの行動モデルから、ユーザーの接する情報を抽出出来ること
などを指しています。つまり、概念を具体的に分解し表現する(世界を切り分ける)という意味です。
情報を扱うデザイナー(つまり私達)の世界において、重要なのは「言語化」能力だと思ってたんですが、それもちょっとアップデートできそうだと感じているのが今です。
少し余談ですが、言語の本質的な役割は、概念に名前をつけること。名前をつけるということは、同時にそうじゃないという概念も定義することになります。
日本語において、蝶と蛾は別物ですが、フランス語では両社を同じ単語(パピヨンという単語)で表します。フランス人にとって、蛾は蝶同様に美しいものなんです。それはパピヨンという1単語でしか切り分けていないからです。つまり言語化という営みは、概念の分節化を意味します。パピヨンの例のように、それはユーザーのメンタルモデルを同時に規定することにもなります。「情報」とか「行動」という極めて抽象的な概念を適切に分節化すること、これがつまりモデル化(モデリング)であって、ソフトウェアの世界にはユーザーの行動の制約が少ない分、余計にこの分節化が重要となってくると思います。
ソフトウェアのデザインに携わる私達は、分節化した概念をユーザーの体験、及びソフトウェアの設計に活かさなければなりません。そこで更に必要になってくるのが、分節化した抽象的な情報から、要素(コンテンツ/情報/データ/機能 など)を抽出することです。扱う要素が抽出されていることで、初めて次の「構造」に行くことが出来ます。
つまり、要件においてUXデザイナーが持つべき能力は
⑥抽象的な概念を分節化できること
⑦分節化した概念から、要素を抽出できること
だと考えています。
構造(現時点で専門外なので割愛)
構造では、戦略→要件と定義したものを、ソフトウェアとしての全体像に落とし込みます。
つまり、目的を達成するためのインターフェイスの全体構造を作ることです。
これをすることで、UIデザイナーが、クリエイティブなところに労力を集中することが出来るようになります。
構造の部分は自分がまだ勉強中ということもあり、仲間に任せます。詳細は以下の記事などを御覧ください…!
まとめ
UXデザイナーとは関わる多くのステークホルダーを巻き込み、戦略から蓄積した中間成果物を武器に、最終アウトプットまでの道を描く人です。記事を振り返ってみると、UXデザイナーに求められる7つの素養が見えてきました。
①外部環境リサーチから業界の勝ちパターン(KSF)を見つけられること
②顧客の課題を特定できること(Job理論/KBF)
③内部環境と照らし合わせて戦略を練り上げられること(ストーリーメイキング力)
④サービスコンセプトをユーザーの行動レベルに分解出来ること(分解能)
⑤ユーザーの行動モデルから、ユーザーの接する情報を抽出出来ること(MECEなロジカルシンキング)
⑥抽象的な概念を分節化できること(④と同様)
⑦分節化した概念から、要素を抽出できること(⑤と同様)
なぜ今デザイナーを経営に、とか、経営にデザインをとか叫ばれているのかというと、戦略のレイヤーからユーザーに求められているものは何かを重視することがこれまでより重要になったからです。5段階における自分の得意分野はどこか考えてみる良い機会になると嬉しいです。
番外編:私のUXデザイナー/PMとしてのミッションステートメント
ちょっと話が変わって、、、、
UXデザイナー/PMとして約2年Goodpatchで働いてきて、一番つらかったのが、『デザイナー/エンジニアが最大限のパフォーマンスを発揮できる場が作れなかったとき』なんですよね。それがアウトプットの質にも直結します。自分が良いプロダクトを作りたいという気持ちも大切だとは思う一方で、しっかりと戦略→要件→構造と積み上げたステージで、UIデザイナーが活躍することのほうが私にとっては大切だと思ったんです。
それから、自分のミッションは「UIデザイナーやエンジニアが輝ける最高のステージを作ること。そのための中間成果物の質に全力を注ぐこと。」と考えるようになりました。クリエイターの心に響く戦略やコンセプトを作っていきたいですね。長くなりましたが、UXデザインの現場からは以上です。
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