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6名のUXデザイナーのマネジメントを通して感じた、責任と機会の拡大

記事の概要

2019年、が携わった領域は、UXデザイナーとしての現場マネジメントの両面です。
いくつかの現場にプレイヤーとして参加する経験、及び6名のUXデザイナーをマネジメントするなかで日々UXデザイナーとしての在り方について考察する日々でした。ひとえにGoodpatchのUXデザイナーと言っても軸足が多種多様な人材を揃えているのが特徴です。

・定量定性リサーチを深めるリサーチャー
・組織に入り込み文化と仕組みを浸透させるサービスデザイナー型
・開発マネジメントに特化したPO
・経営や事業の視座で経営層の右腕になるExperience Designer
・OOUIの観点が武器のプロダクトデザイナー
・ブランドとプロダクト/サービスをつなぐUXデザイナー
・UXデザイナーをマネジメントするマネージャー型

※弊社のメンバーのAdvent Calenderの記事も参考になります↓

Goodpatch UI Design Advent Calendar 2019 UXデザイナーの記事Pickup
UXデザイナーにとってのOOUIとは?
個人の力、チームの力
非言語による共通言語のつくりかた
UXデザイナーの見据える先は、プロダクトから環境へ拡張されている
AIがUXデザインをする時代は来るのか?

ちなみに僕は、組織に入り込み文化と仕組みを浸透させるサービスデザイナー型UXデザイナーのマネージャー型の掛け合わせでの仕事をしてきました。

この記事では、「私」がUXデザイナーとしてどの領域をカバーしてきたのか、はたまたGoodpatchのUXデザイナーは何を責務にどう戦っているのか?そんな話ができればと思います。
読み終わった後に「なるほど、GoodpatchのUXデザイナーはこんな領域まで扱うのか」と思っていただければ嬉しい限りです。

また、記事を読んで、仲間になりたい!話を聞いてみたい!と感じた方は是非TwitterのDMなり、Wantedly応募等でご連絡いただければ誠心誠意対応させていただきます。

さて、本題行きます。(もう1000字w)

UXデザイナーは組織の集合知を最大化する役割を持つ

UXデザイナーは「組織に情報の橋を架け、「群衆の叡智」を生む存在である」というのが今の僕の見解です。そしてその役割を全うするため、「組織横断の共通言語の形成」「ユーザー中心の仮説検証プロセスの設計」が主な責務にあたるのではないでしょうか。
※共通言語に関しては、以下の同僚の記事等参考になるかと思います。

責務の詳細に触れていきます。

①リサーチャーが抽出したユーザーインサイトやCS、営業等各部署の得た1次情報、はたまたあるときは企業や事業のビジョン等とユーザー多次元で絡み合う情報を、体験の全体像可視化や、各ステークホルダーとの対話を通して、横軸でつなげることで全体としての力を最大化すること。

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②また、体験を俯瞰した際に抽出した体験における課題リストを組織横断して解決、仮説検証していく仕組みを設計すること

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の2点を通して顧客に最高の体験届けることを目的に置いた仕事をしているのだ。というのが私としての解釈です。無論忘れてはいけないのが、集合知の最大化をするのは目的ではなく、目的はユーザーの体験の向上です。ただ、UserのExperienceだけでなく、組織横断的にExperienceを改善することも責務であると考えています。

この考えに至った背景を述べるために、今年の自分の仕事を、特徴的なものを中心に振り返っていきます。

事業戦略策定におけるUXデザイナー

今年の初めは事業戦略フェーズのプロジェクトをいくつか担当しました。それに関連して、MUTBさんとDeNAさんとGoodpatchで開催した「ビジネスを推進するUXデザイナーの働き方とは?UX Designers Meetup」の登壇では、戦略フェーズにおいてUXデザイナーとして重要な仕事は「概念の可視化」「強烈なコンセプト」の策定であると発表しました。可視化をすることで企画者だけでなく、実行者にも同じ共通言語でサービスを推進してもらうこと。強烈なコンセプトを策定してチームの熱量を高め、サービスの持続性を高めること。このあたりに力点を置いて仕事をしていました。

このあたりから概念の「可視化」実際のサービスの「運用者」を意識するようになっていった記憶があります。

グローバルプロジェクトから実感した、海外諸国と日本をデザインでつなぐニーズ

春には、USのとあるデザインチームと、初グローバルプロジェクトを経験しました。英語でのワークショップファシリテーション等しどろもどろになりながらも挑戦出来たことは一つの自信になりました(英語ネイティブのUIデザイナーのおかげ9割ですがw)当時社内でOOUIの浸透が盛んになっており、その観点をグローバルプロジェクトながら少し入れてみたところ思った以上に好評で、「構造設計」の有効性も実感したプロジェクトでした。それをきっかけに自分の関心もややグローバルに向いたからなのか、日本のマーケットに向けたプロダクトを海外のチームが作っているという話をチラホラ聞くようになりました。特にニーズがあるのが、日本の文化を理解したバイリンガルデザイナーらしいです。それはやはり日本の文化が特異で、長い間住んでいる人にしかわからないニュアンスがあるからだと。なおかつそれを適切に英語とデザインで表してくれる人を探しているんだ。と言っていました。
まだ数は少ないかもしれませんが、バイリンガルの優秀層が流れてくる業界を作ることもミッションの一つだと感じさせられた出来事です。やはり海外諸国と日本をデザインでつなぐニーズはあるし、そこに対して今後も攻めていきたいという気持ちを今でも強く持っています。また、UXデザイナーとして構造設計に対する関心を持つこともUIデザイナーとエンジニアとの協業には必須であると実感しています。

立ち上げプロジェクトにおける仮説検証プロセス構築

春以降は、アプリ立ち上げプロジェクトに参画しました(リリース前)。事業戦略のプロジェクトや、OOUIの観点等当時使える武器は総動員したプロジェクトでした。ここでの学びは、一緒に働いたUIデザイナー、BXデザイナー、エンジニアの仲間から得たものが大きいです。

中間成果物請負人である自分にとって、超高速でUIやプロトタイプを作成してくれるデザイナーの存在や、ブランドのビジョン/ミッションや、体験の原理原則(Principle)を共通言語化しながらデザインを進めていくBXデザイナーの二人の存在から逆算して、自分の役割はサービスの価値を検証するための良質な仮説を導き出すことだと感じるようになりました。体験を扱うプロフェッショナルとして、体験を「モノ」に落とし込むプロフェッショナルであるUIデザイナー/エンジニアへの良いインプットとなる仮説をリサーチから導くことがUXデザイナーの存在価値の一つだと思うきっかけになった出来事です。

そして当時一緒に働いてたエンジニアは、数日で仮説を実際にコーディングしたプロトタイプ(当時はリアルプロトと呼んでいた)を作ってきてくれるような方でした。リアルプロトの価値はデータの蓄積と蓄積されたデータによるUIの時系列における進化を表現できることで、非常に有用なのですが、そこでUXデザイナーとしての失敗のひとつで仮説を立案するも、仮説検証プロセスの設計まで手が回っておらず、「検証」の仕組みが強固に出来なかった経験をしました。せっかく良質な仮説を立案しても、検証して学ばなければ意味がなく、その検証の仕組み設計まで行うことも責務だと今では捉えています。

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このあたりは以下のUX MILKさんの記事も参考になるかと思います。

今は後述のマネージャー業務を行う一方で、あるスタートアップのグロース支援をしています。ここでの己の役割は、今年の学びを総括して、「組織横断の共通言語の形成」「ユーザー中心の仮説検証プロセスの設計」と定義して日々各ステークホルダーを巻き込みつつ、組織全体で体験を改善していける文化を作っていこうと日々奮闘しています。


現場でのUXデザイナーとしての経験を通して、「組織横断の共通言語の形成」「ユーザー中心の仮説検証プロセスの設計」という軸が見えてきた一年でした。もう一方で、マネジメントへの挑戦も今年の大きなトピックの一つです。

6名のUXデザイナーのマネージャー経験を通して感じた、UXデザイナーの責任領域の拡大

プレイヤーとしての業務を経て、今年からUXデザイナーを束ねるユニット(Experience Design Unit ※以下 XD Unit)のマネージャーを努めています。XD UnitにはUXデザイナーが2019年12月現在20名ほど在籍していて、3名のマネージャーがいるうちの一人として動いています。僕のチームには6名のUXデザイナーが在籍しています。

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マネージャーになり、UXデザイナー20人がどんな案件で何をしているのかを見てきました。そこから、GoodpatchのUXデザイナーの特徴のようなものが見えてきました。一言で言えば、あらゆるステークホルダーに最高の体験を届けるというところに抽象度を上げれば落ち着くのですが、ひとくくりに出来ず多岐に渡っているのが現状です(ただUXデザインは会社の強みの一つなので安易に肩書をいじるのは避けている)。では、どう多岐に渡っているのかというと、先述ですが

・ユーザーリサーチを深めるリサーチャー
・組織に入り込み文化と仕組みを浸透させるサービスデザイナー型
・開発マネジメントに特化したPO
・経営や事業の視座で経営層の右腕になるExperience Designer
・OOUIの観点が武器のプロダクトデザイナー
・ブランドとプロダクト/サービスをつなぐUXデザイナー

のように、ひとえにUXデザイナーと言っても軸足が多種多様です。※これでも一部です。そこから、20人のUXデザイナーが戦う戦場がどこなのか、担う責任は何なのか、解像度が上がってきました。GoodpatchのUXデザイナーは、プロダクト/サービス/事業のように、視座の高さと、リサーチや体験/サービス設計、価値検証のような専門性の深さの掛け合わせでに全体最適を図りながらチームで最高の体験を届ける仕事をしています。

逆に言うと、UXデザイナーとしてのキャリアは根底の思想や文化が共有されている限りは、キャリアは自ら切り拓いていけるものだと捉えています。そしてその切り拓き方は、UXデザインではないどの領域の専門性と融けていきたいのかという選択になるかと思います。僕はプレイヤーとしては、共通言語と仮説検証の仕組みを作るサービスデザイナーを選び、事業オーナーに寄り添う(融ける)ことを選んでいますが、人によっては将来事業を持つキャリア、開発の現場に立つPO等、様々な可能性に開けていると考えています。ですので、マネージャーとしては、彼らがいかに責任領域を拡大し、視座を高め、専門性を高める機会を提供出来るのか?というのが鍵になります。(がんばります)

UXデザイナーのマネージャーとしての課題

多岐に渡るキャリアが存在する中ぶつかったのは、マネージャーとして旗を立てる難しさです。メンバー同士思想は同じでも別の未来を描いている可能性がある中で、マネージャーとしてどこに筋を通すのか?というのは今でも悩みます。それに対して現在は「個々人の成長」と向き合う。という点に集中しています。

マネージャーとしての業務は、至上命題を「個々人の成長機会の提供」「プロジェクトの成功」と掲げて、成長に寄与仕組みを作る最中です。現状の取組としては、弊社では週次でマネージャーはメンバーと1on1をしています。そこでプロジェクトの壁打ち、日々の悩み事、雑談などを通してコミュニケーションをしながら新しい視点の獲得やプロジェクト進行のフィードバックを中心に話題を展開しています。また、週次でのプロジェクトレビューを通して全プロジェクトのリスクの確認や、サブプロジェクトでUXデザインを応用する等の施策を通して、個々人に挑戦的機会を与え、と学習を支援し人材の成長を支援する環境を構築しようと試みています。この挑戦的機会と人材の成長がデザインカンパニーとしてGoodpatchが成長するグロースサイクルの最小単位だと考えています。

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20名のUXデザイナーを抱える組織はなかなか無い中で、クオリティを担保する組織設計や、UXデザイナーの皆さんの心に火を灯すコミュニケーションをすることは正解も無く挑戦的な機会ではあるのですが、UXデザインの日本でのデファクトスタンダードを組織で引き拓いてくため、これからも日々精進です。

まとめ

盛り沢山な文量になったことからもわかるように、今年も刺激的な仕事に囲まれて過ごしました。新しいソリューション(事業計画策定スプリント)の開発や初のグローバルプロジェクト、新規事業起ち上げ、ベルリン出張などなど挙げればキリがないです。その中でもやはり最も大きな転機は、マネージャーとしての仕事を始めたことです。そして多くのUXデザインの現場を目の当たりにした中で、UXデザイナーとしての仕事の解像度が上がった一年となりました。UXデザイナーの責任というか、役割が拡がる中でも、私としては常にその拡大に置いていかれないよう、常に新しい機会の創出や役割の提起をしていければと考えています。そして何より世のデザインに関わる人々が人間的及びスキル的成長を達成し、より豊かに過ごせる未来を作って行きます。
来年はより一層ギアを上げ、UXデザインの価値を証明して行きます。頑張りましょう!!

Merry Christmas!

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PS:2019/12/24 Goodpatchの採用Slide Deckが公開されました。こちらも是非ご覧ください!


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