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他人の働き方が気になるなら、いっそ自分も同じ働き方をすればいい

■ 暦通りの休日であることの後ろめたさ


たまに職員から次のような相談を受けることがある。

「自分は暦通りの休みなので、シフト制の職員から陰口を言われる」

どうやら、暦通り土日祝日が休みの職員が、シフトによって休みが決められる職員から妬まれて、シフト制の職員同士で陰口を言い合うのを耳にしたという話だ。

ちなみに、暦通りでもシフト制でも休み日数はほぼ同じであるし、当然ながら採用においては労働条件に同意して雇用契約を締結している。それなのにシフト制の職員が暦通りの勤務(休み)である職員を妬むという理屈が不可解であるし、その陰口を気にして後ろめたさを感じるのもまた不可解だ。

もちろん、職場における人間関係として全く理解できないわけではない。
しかし、それぞれの事情を考えて選んだ働き方をしているのに、他人を妬むとか後ろめたさを感じるとかいうのは、自身がした選択を否定するのと同義だと思う。


■ 正社員との待遇差に不満を抱くパート職員


ちなみに別な相談だと次のような不満も受ける。

「私はパートだけれど、正社員と同じ業務をこなしている。賃金や待遇に差があるのは不公平ではないか」

実際に同じ業務量をこなしているかは確認しないと何とも言えないが、パート職員と正社員の雇用契約が異なるのは誰もが分かると思う。
一方、労働条件通知書の内容を見れば、確かにパート職員と正社員それぞれにおいて共通の業務内容はあると思う。
しかし、細部化すれば業務遂行スキルや担当職務、将来的に役職ある立場になるといった社内のビジョンも想定して採用している場合もあるので、一概に「同じ業務」という表面的な活動だけを評価するのは困る。

そもそも、パート職員の場合は家庭や個人の事情や時間的制約、または作業的なことだけしていたいといった働き方の希望から、パート職員になっているのではないか。その点を振り返り、一時の感情で不満をぶつける前に冷静に自身が選択した働き方を鑑みることを推奨する。

また、もしかしたら正社員を目指しているという話もあるだろうが、現時点においてパート職員であるのは事実である。もしも、不満を述べるのであれば、通常業務の現状確認のもとに客観的かつ合理的な理由を準備しておくことも推奨する。


■ 労働に関する相談や不満は「まず話を聞く」


ちなみに、このような類の話を職員から受けると、以前の私ならば困っていた。しかし、今ではあまり困窮することはない。

それは、大抵の場合は相談や不満を吐き出した職員は、スッキリした顔で帰っていくからだ。具体的に何かしてほしいわけでも、何かを希望を叶えたいわけでもないく、ただ愚痴や不満を聞いて欲しいだけなのだ。

だから、基本は「まず話を聞く」という傾聴モードを徹底する。

実際、しばらく黙って話を聞いたあとで当人らに「では、具体的に何か会社でやってほしいことはある?」と聞くと、「あ、いえ。そこまでの話ではないです」と言って退室する。

おそらく、自分の感情を言いきったことで我に返ったのだと思われる。それでも、話を聞くだけで以降も気持ちよく働いてもらえるならば、双方にとって良い時間を過ごせたと言えよう。


■ 労働条件・雇用契約の見直しを提案するのも1つ


一方、それでも納得しない様子の場合は次のように提案する。

「では、労働条件と雇用契約を見直すというのは、いかがでしょうか?」

まず、1つめの相談における「暦通りの休みに対する後ろめたさ」だが、シフト制の他職員の妬みが気になるならば、いっそ自分もシフト制になってみてはどうかと思う。
ついでに言えば、陰口を言っているシフト制の職員は暦通りに休める雇用形態にすればいいだけの話だと思う。

2つ目の不満である「正社員とパートで業務が同じなのに待遇が違う」については、パートと正社員では待遇が違うという当然の話を踏まえて、いっそ正社員登用を申し出てみるのが手っ取り早い。
パートではなく正社員になれば、少なくとも同じ業務をやっていることに対する不満はなくなるはずだ。

――― なんて言うのは、正論であり暴論であることは分かっている。
そもそも、この類の相談や不満というのは、上記でもお伝えしたように労働条件や雇用契約を変えるといった具体的な話ではなく、ただの人間関係に由来しているものだろう。
また、パート職員が正社員になると言っても、例えば年間の所得に上限がある人が「もっと給料が欲しい」と言っても難しい話だ。それはもはや労働条件や雇用契約うんぬん以前に、当人の家庭の事情や人生設計にまで及んでしまうためどうしようもない。

つまり、これらの相談や不満は会社がどうにかすることはできるが、むしろ個人で解消する問題という話と言える。その点を自覚したうえで相談や直訴に来てもらったほうが助かるのが本音だ。


■ 他人の働き方と比較してもプラスにならない


そもそも、他の人と休日のあり方が違うとか、同じことをしているのに待遇に差があるといった話は、他人のことを気にしているから起こるのだ。

「よそはよそ」「うちはうち」と言うが、それは同じ職場であっても、同じ業務をしていても同様である。
極論だが、一見すると全職員が同じ仕事をしているように見えても、職員個人と会社の契約が全く同じということは皆無である。

もはや現代は新卒で入社して、ずっと同じ職場で定年まで勤める時代ではない。それどころか、どの職場でも転職者は当たり前におり、年齢やキャリアの違う働き手が清濁混合で在籍している。

人材がごった煮な時代において他人の働き方を比較しても、プラスになることは1ミリもない。それどころか、他人を妬んだり後ろめたさを感じたり、不満を抱くというマイナスが生じているではないか。

少し脱線するようなことを言えば、今や勤続年数や古びた技術や資格だけで自分の存在を誇示するなんて無意味だ。
その業界や職場に長くいることを重視し、それだけで上下関係が決まるなんて思っている人がいるが、なんてバカバカしい話だと思う。

同じ職場にいるだけ、同じスキルだけでずっとやっていけるほど甘い時代ではない。新しい時代に適応し、自己学習によりスキルをアップデートしていく者だけが評価される。
長く働いているだけで新人にいばっているような輩は、すぐに追い越されてしまうだろう。


――― ここまで書いてもなお、他人の働き方が気になる、自分も同じでなければならない、自分も他人と同じでありたいと言うならば、上記で私が提示したように労働条件や雇用契約を変えることを提案する。同じ職場で同じ仕事を続けるならば、それしか方法が思い浮かばない。

それが嫌ならば、他人のことなんて気にするのをやめるしかない。
大丈夫、安心してほしい。他人は陰口や不満を言うものの、その人たちは自身の働き方を変える気はないだろうし、それどころか他人と同じ働き方にしたところで「へー、そうなんだ」と興味なさげに言われて終わるだけだ。

大切なのは自分が考える働き方だ。まずはそれを優先しよう。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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