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介護分野の文書に係る負担が軽減した実感が得られない理由

介護現場における生産性向上の一環として、文書に係る負担軽減が進んでいる。介護分野は介護保険制度下で行われていることもあり、行政手続きや申請書類や調査文書の提出がとても多い。

これらは必要なことだと分かっていながらも、本来であれば高齢者の支援に割くべき時間と労力を、文書作成に費やさざるを得ない実態がある。

それに対して国も、ここ数年で少しでも介護分野における文書に係る負担軽減を目指そうと、申請書類の書式を簡素かしたりハンコレス化したりと取り組みを進めている。最近で言えば、介護職員処遇改善加算に関する記入用紙も、見れば以前よりも簡素化した印象が伺える。

しかし、このような文書に関する負担軽減に向けた取り組みが進んでいるにも関わらず、総合的に見れば負担軽減できたという実感は得られない。むしろ、年々文書に係る負担は増えているように感じる。

これは私だけかもしれないが、「なんで介護分野の文書に係る負担が軽減した実感が得られないのか?」という疑問について考えてみた。

それに対する見解はすぐに見つかった。

それは、文書に係る負担軽減というのは、書式を簡便化するだけでは成し遂げられないということだ。

どういうことかと言えば、同じく介護職員処遇改善加算に関する申請を行うにあたり、記入用紙を目の前にすれば、各項目を見るだけですぐに記入できるというわけにはいかない。

その前に記入方法を確認する必要がある。これはどの行政手続きでも、何かしらの契約書類でも同様だが、記入方法を一読したり、記入例を参照したりすると思う。

しかし、残念ながら記入方法や記入例を参考にしただけでは、介護分野における申請書類やらの文書作成は困難である。記入用紙や記入方法を理解するには、その前にいわゆる通知文の内容を理解する必要があるのだ。

また、事業形態によっては通知文とは別にQ&A(よくある質問)なども参照にしないといけない。もっと言えば、このような通知文やQ&Aを理解するためには、介護保険制度や運営基準などの法令や制度などの基礎知識を把握してる必要もある。

――― 何が言いたいのかと言うと、文書に係る作業というのは、記入用紙に必要事項を記入して提出すれば「はい、終わり」というわけではなく、そのための前準備が必要なのだ。

つまり、介護分野の文書に係る一連の流れを逆算して見ると・・・

 基本的な法令を把握していること
        ⇓
 通知文やQ&Aを読んで理解できること
        ⇓
 記入方法や記入例を参照すること
        ⇓
 既定の記入用紙に記入する(文書作成)
        ⇓
      申請、提出

・・・というプロセスおよびスキルが求められるということになる。

既定の記入用紙に記入することも大変であるが、それ以前に法令やら通知文やらを読み込んで、それらを理解することが重労働かつ時間がかかるのだ。

そして、(これは個人的な肌感覚として)行政手続きや申請などの記入用紙や書式が簡便化するほどに、法令や通知文といった土台となるものが複雑かつ膨大になっているように感じる。

正直言って、通知文や説明書などの文章を読むのがあまり苦でない私ですら、通知文の量を見た途端に読む意欲が失せることがある。そのうえ記入用紙や申請方法なども、その都度変更されることから、毎年やっている申請ものであっても、まるで初めて取り組むかのような感覚になる。

いくら国などが記入用紙や申請方法などを簡便化したとしても、それに反比例するように基礎となる法令や通知文が複雑化・膨大化していては、結局のところ文書に係る負担は減ったという感覚にならないのは仕方ないのではないか。

馬鹿にするわけではないうえ失礼な話をすると、そもそも介護分野の方々は現場においては力を存分に発揮するが、事務作業となると面倒くさがったり苦手意識が高い傾向にある。

そして、何より文章を読むのが苦手だったり、文章の内容を読んで理解・解釈するということを嫌うこともある。実際、法改正などを管理者や現場リーダーなどに説明すると「・・・で、つまりどういうこと?」みたいな反応をされることが多い。

これは介護分野に限らず、労働基準や賃金などに類する話になっても、行政が提示するパンフレットを用いたり、分かりやすくまとめた資料を作成して説明するも同様の反応をされることが多い。

このような方々が現場をよりよくしようとリーダーになったり、自分の理想とする介護を実現しようと施設や事業所を立ちあげたとき、「文章を理解する」という大きな壁が障壁となるように伺える。


――― と、介護分野の文書の負担が軽減されない理由について考察してみたが、残念ながら「じゃあ、法令や通知文を簡単にしましょう」とはいかないのが現実である。これらを曖昧にしてしまったら、おそらく介護業界は統制がとれなくなってしまうだろう。

そもそも、文章量が多くなるのは時代に即した内容にするにあたり、現代が複雑化していることに起因している思う。

しかし、現状のままだと文書に係る業務負担は軽減されないという課題は放置されたままである。

根本的な解決策にはならないだろうが、あえて言わせていただけるならば、とりあえず国や行政が提示する文章は、もう少し文章の詰め込みを控えたほうが良いと思う。

また、通知文や記入用紙を提示する初期段階で、介護サービス事業所ごとに抽出された状態で必要な項目が抜粋されるようなシステムにすれば良いとも思う。

現在の通知文や記入用紙は、全サービス事業を対象に一括して提示されすぎだと思う。そのため、どこに自分のサービス事業所の項目があるのかを探す作業が必要となる。これも業務負担になっている。

本音を言えば、いい加減エクセルでの申請書類もやめてほしい。事業所番号や会社名などを記入用紙ごとに入力させるような仕様もウンザリしてしまうし、間違いの元になっていると思う。
Web申請の話も進んでいるようだが、オンライン化が進んでいる時世において、せめてブラウザ上で入力できるようにしてほしい。

・・・まあ、これ以上は愚痴になってしまう(いや、すでに愚痴だな)。

ひとまず国も取り組んでいるし、大変なのは私の事業所だけではない。
現状は言われたとおりに申請手続きに四苦八苦することにしよう。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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