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適切な介護技術を身に付けることは、要介護者を減らす未来につながる

■ ボディメカニズムに基づいた介護技術を身に付けよう


介護の仕事は肉体に負担をかける場面が多い。
利用者たる高齢者の体に触れて、その人が全く動けない場合には1つ1つの動作を介護者が行うことになる。

そこには骨・間接・筋肉などの肉体の構造を理解したうえで、人間としての自然な動作を促すことにより、利用者に負担をかけないように介助を進める必要がある。
それはいわゆる「ボディメカニズム」と呼ばれるものだが、これは非常に奥が深く日進月歩で新しい技術や考え方が生まれている。

インターネットの恩恵もあって、ちょっと検索すれば介護技術に関する情報はたくさん公開されている。しかも、技術的なことを動画で視聴することもできる。このような媒体を活用しない手はないだろう。
介護技術に限らず、腰痛防止のためのストレッチや介護現場で有効な筋トレや運動などの情報も公開されている。もっと言えば、介護を楽にする福祉用具だってどんどん進化している。

介護職に携わる人たちは、このようなリソースをどんどん取り入れることで、ボディメカニズムに基づいた介助法を身に付けるべきだと思う。

それは利用者にとっても、自分自身の肉体にとっても負担をかけない、余裕をもった介護につながるはずだ。


■ 「技術を覚える」< 「負担がかかる介助」と選択する職員


しかし、意外なことに、このような介護技術に関わる情報や介助を楽にするツールに対して興味を示そうとする人は少ない。

全く興味がないというわけではないが、参考書や動画を少し見ただけで「自分には無理ですね」「現場では使えないですよ」と言う。さらには「今のやり方は大変ですけれど、何とかできているので結構です」と言われてしまうこともある。

だからと言って、何もこのような介護者たちは苦行を自ら強いているわけではない。体が大きかったり、体重が重かったり、麻痺の大きい利用者に対しては大変な思いをしているため、本人らも何とかしたいと思っている。

しかし、それでも新しい技術を覚えるということに抵抗があるのだ。
新しいことを覚えるよりも、多少大変なほうを選ぼうとする。

つまり「新しい介護技術を覚えることが面倒くさい」と言っているわけだが、新しいことを覚えることは誰しも始めは抵抗するものだ。

数年前の話だが、運営していた介護施設の入浴介助法があまりにも介護者の肉体に負担をかけていることが分かったため、専門家を招いての技術指導とともに介助用具も導入したことがあった。

しかし、一部の施設職員から「腰に負担がかかってもいいから、前のやり方に戻してください」と懇願された。
その「腰に負担がかかってもいいから」という言葉に、私はゾッとした。

新しいやり方が覚えきれないとか、介助用具が使いにくいという言い分ならばまだ分かるが、自分たちの腰が悪くなってもいいから、以前の負担がかかるやり方に戻してほしいという考え方に戦慄を覚えた。


■ 負担がかかる介護を続けた末路とは・・・


では、肉体に負担がかかる介護を続けるとどうなるだろう?
・・・答えは簡単、肉体を損傷する結末しかない。

「介護をやっていれば腰痛などは珍しくない」と思う人もいる。
しかし、そのような人たちは、その先々まで考えているだろうか?

例えば、介護業務の後にふと腰痛が起きたとする。最初のうちは騙しだまし仕事を続けることができるだろう。
しかし、湿布を貼ったり、腰痛ベルトを巻く頻度が増えて、痛みが気になり睡眠にも支障が出る様になる。それが続けば慢性疲労にもつながる。

誤魔化しきれなくなって、整形外科に行くことになる。ヘルニアなどと診断され、そこから通院する羽目になることもある。
私見だが、整形外科は混雑しているところが多い。待ち時間も長いし、通院となるとお金もかかるようになる。

肉体の痛み、時間やお金の話だけではない。
ここまでひどい状態になってもなお、ボディメカニズムに即した適切な介護技術を覚えようとせずに、これまで通り肉体に負担を強いる介護を続けたならば、いずれは仕事ができない肉体になってしまう。

もっと言おう。
そこまでのレベルになったならば、通院を続けたとしても、腰痛などのない健全な肉体に戻ることは難しいと思う。有名な医者を見つけて治療してもらえるかもしれないが、負担をかけ続けた肉体をハツラツとした状態に戻せるなんて期待はしないほうが良いだろう。

――― 最終的にどうなるだろうか?
適切な介護技術を覚えようとせず、己の肉体に負担をかけて介護をすることを選んだ先に待っているのは・・・自分が介護を受ける未来である。

何だか極端な言い方かもしれないが、ある程度年をとると介護を受けることは今や珍しくはない社会であるが、そのうえでこれまで自分の肉体に負担をかけてきたツケは大きい。
そのツケは、自分の介護をしてくれる介護者にとって大きな負担をかけることになるという見方もできる。


■ 適切な技術によって未来の要介護者を減らせる


かなり先の未来予測をしたわけだが、介護業界の未来を考えたときに大袈裟な話ではないと思っている。

介護者は自分の肉体への負担に対して鈍感である。
利用者のためという言い分で、自分の肉体の悲鳴から目を背けている。

今は多少の負担を感じつつ何とか乗り越えてることができても、そのツケは確実に蓄積されていると思ったほうが良い。そして、肉体へのツケはなるべく減らすべきである。

そのためにはどうしたら良いだろうか?
もう答えは出ている。

ボディメカニズムに即した適切な介護技術を覚えよう。
適切な介護技術は自身の身を守ってくれる。

面倒くさいなんて言ってる暇はない。
少しでも介護の仕事を続けたいならば、痛みで眠れぬ夜を過ごすのが嫌ならば、少しでもいいから介護技術を学ぶことを推奨する。

シミュレーション(妄想)ができる人ならば、介護技術を疎かにしたがゆえに体を損傷して働けなくなった未来を想像してほしい。
そのような肉体では、働きたくても就ける職は限定されてしまう。そのような未来になって良いだろうか?

さらに、高齢者のために奮闘してきた自分が、己の肉体を気にかけなかったばかりに、今度は自分を介護してくれる介護者に、自分と同等(いや、それ以上)の負担を強いることはあって良いのだろうか?

社会的な視点で見たとき、適切な介護技術を学んでいれば、もしかしたら介護を受けるとなったときも、介護度は低くなっていたのではないか?
それはつまり、介護保険という税金の配分も節約できるということだ。

総合的にみたときに、過去の介護者が介護技術を学ばないと、未来の社会はより困窮するという話である。

そうならないようにも、未来の介護業界と社会のため、現在の利用者のため、そして未来の自分のためにも、現在の介護者たちは適切な介護技術を身に付けるべきである・・・ということである。

くどい言い回しとなったが、本記事を読んで、腰痛予防などに関する動画などに興味をもっていただければ幸いである。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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