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「過疎化」「人手不足」が起きる理由

■ 過疎化問題とは何か?


地方の過疎化問題と耳にすることが増えたが、そもそも過疎化問題とは何か? 以下は総務省の文書より抜粋した内容を見てみる。

過疎地域においては、人口の減少、少子高齢化の進展等他の地域と比較して厳しい社会経済情勢が長期にわたり継続しており、地域社会を担う人材の確保、地域経済の活性化、情報化、交通の機能の確保及び向上、医療提供体制の確保、教育環境の整備、集落の維持及び活性化、農地、森林等の適正な管理等が喫緊の課題となっている。

総務省「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法案要綱」冒頭より

過疎化問題と言うと人口が減少しているイメージがあるが、加えてインフラも社会資源も乏しいうえ、地域単体では維持しきれない状態ということだ。

失礼ながら、過疎化とは企業における ”倒産寸前”という状態である。

■ 人手不足は「働きたい」と思えないから


過疎化問題において「人口の減少」というワードが出てきたが、これはビジネスにおいては「人手不足」という問題がある。

医療、介護、保育、運送、観光、建設、飲食・・・これらは常に慢性的な人手不足のランキングに出ている。

結局のところ人手不足というのは「働きたい」と思う人が少ないために起きている現象である。

それらに対して、働き方の見直しやテクノロジーの導入、賃金改善をもって人手を集めようとするが、「働きたい」の数は増えない現状である。

上記の一部業種は、感染症拡大の折にはエッセンシャルワークとして確実に仕事があるにも関わらず、働き手が増えるどころか減少することもあった。

つまり、賃金が確実もらえる仕事が提示されていても、仕事がなくて生活が苦しくても、「働きたい」と思える仕事でなければ働き手はつかないという証明にもなった。


■ 「ここにいたい」と思えないから人が集まらない


過疎化と人手不足という類似の社会問題には、大きな1つの共通点がある。

それは「ここにいたい」と思える環境でないということである。

過疎化問題を抱えている地域の課題は、上記のように行政でも把握している。解決の見込みは別問題として、現状は大きく解決できていないだろう。

大変失礼な話とは承知で言えば、いくら「この地域はいいところだよ」と住民が言ったところで、人も経済も活気がない、医療や教育体制にも乏しい、交通に不便といった場所に住みたいだろうか?

通信技術は進歩しているので、ある程度はカバーできるだろうが、単純に住むだけならば、別にわざわざ過疎地域でなくても選択肢は無限にある。

その地域にいて「ここにいたい」と思える要素がなければ、住みたいとも思わないだろう。最低限、「ここに来たい」と思わせる何かが必要だ。

また、人手不足においても、どの企業も苦心しているし、行政も税金や専門家を投入して働きかけている。
しかし、賃金を上げても専門家の手ほどきがあっても、核心的な人材確保に繋がらないのは、上記でもお伝えしたように「働きたい」と思える要素が欠けているからだと思う。

私自身、介護サービス事業を営んでいる身として求人には苦心しているが、ここ数年は単純に高い賃金を提示するだけでは応募がないし、ようやく人材を確保できても定着率が下がっている懸念もある。

つまり、働き手は、賃金はもちろん、「ここ(職場)にいたい」「この職場で働き続けたい」という要素が必要なのだ。


■ 「こだわり」が阻害している


「ここにいたい」がポイントなんて、言われなくても分かっていると誰でも思うことだろう。

しかし、過疎化も人手不足の問題も、それらを分かっていながら「ここにいたい」と思える環境づくりをしていない傾向にある。

「ここにいたい」と思える環境づくりにお金やエネルギーを注力すればいいだけなのに、それをしないのは何故か?

それは「こだわり」があるからだ。
「こだわり」が集客と改善を阻害しているのだ。

「こだわり」と聞くと、何だか良いことを思われるだろう。しかし、「こだわり」が有効になるのは、それを受ける側が価値を感じる場合に限る。

「こだわり」と受け手の価値がミスマッチだと、受け手は「ここにいたい」「ここに居続けたい」「また来たい」なんて思わない。

集客のミスマッチの一例として、日本の観光における「おもてなし」がある。日本の観光は「おもてなし」を未だにアピールしたがる傾向にあるが、外国人観光客にとっては「食事・自然・文化・歴史」に興味深々であり、「おもてなし」にこだわっている限りは、日本人観光客よりも圧倒的に数が大きい外国人観光客の確保は難しい。

過疎地にいては、自然の豊かさばかり主張していては仕方ない。
また、人手不足も自分目線のPRしていても無駄である。

そもそも、過疎も人手不足も、自分たちの考え方や既存の環境を変えないまま、行政の援助を期待したり、黙っていて人が来るかのような受け身の姿勢が見受けられる。

大変かもしれないが、まずは「過疎を引き起こしたのは自分たちが原因」「人手不足は企業体制に問題がある」くらいに思ったほうが良いと思う。


■ 最後に


過疎問題においては、新潟県の山古志村が錦鯉という産業を活かして、2021年にNFTアートと組み合わせた電子住民票(e村民の証明書)の事例がある。この住民票の発行には1万円を要するにも関わらず応募が多数あり、オンライン住民という形も生まれ、そこからリアル住民になった人もいるらしい。このケースは自地域だけでなく他市とも連携したコミュニティにより成立しており、地域ながらの1つの事業として拡大している。
              (参考:「1冊目に読みたいDXの教科書」)

もしも、同じ思考でこだわり続けていたら、何も変わらなかっただろう。住民も取っ付きにくかったであろう、デジタルという新しい風を受け入れることで過疎化を自分事として取り組む姿勢は頭が下がる。

人手不足においては、私自身が常に課題に思っていることであり、求人方法はもちろん、法人全体で「ここにいたい」と思える職場づくりを変革していくことを、最近強く考えている。
現場運営や経営のあり方という根本に触れることになるだろうが、時間をかけても少しずつ改善していきたいと思っている。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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