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【読書メモ】楽天IR戦記

IR活動についてはあまり知識はありませんでしたが、年末半額だったので、ちょっと話題に上がっていた楽天IR戦記を読んでみました。

IR活動は、如何にして投資家に株を買ってもらうかが重要であり、そのために情報発信・情報収集・コミュニケーション・ガバナンスの整備など多岐にわたる活動を行い、企業の価値を高めていくことが目的である、ということをタイトル通り戦記として読むことができました。

この本を読んだ後には思わず「お疲れ様でした」と言ってしまうくらい過酷な活動なのだと感じました。

以下メモ

IRの目的

広報の目的が企業イメージの向上であるなら、IRは株を買ってもらうことが目的であり、その先にあるのは資金調達である。投資家と良好な関係を築く事自体は目的ではない。

投資家の頭の中にある妄想に足りないピースを提供したり、気づかせたりすることで、中長期的な企業価値評価を良い方向へ変えていくことが重要である。

会うべき投資家

社長やCFOが会うべきと投資家をデータベース化することで、ミーティングの履歴やその時の関心事、投資家の特徴や資産額を可視化してマネジメントをしていた。

そうでもしないと、例えば社長との取材を希望する投資家全員に会っていたら、本来やるべき事業への時間を費やすことができなくなる業績悪化を招いてしまう可能性がある。

また、株価が暴落したとき(楽天KCの事業売却による特別損失など)には、どんなに正確性を持って情報発信をしても、意図はどうあれ事実を湾曲して解釈されてしまう場合がある。

企業価値を創造するプロセス

・WHY(なぜ、この事業をはじめたのか、その理念
・WHAT(どんなサービスで、どんな強みがあるのか)
・HOW(どう収益化し、どう参入障壁を築いているか
・HOW MUCH(経営指標・業績のトラックレコード)」
・GOVERNANCE(成長を支えるガバナンス)

また、誰がこれを伝えるかもとても重要な要素(楽天でいえば三木谷さんがプレゼンを行うことで説得力が増す)

言葉の選択

楽天エコシステムは元は楽天経済圏という名前だった。これはエコシステムが当時はまだ日本では環境循環システムというイメージが強かったため、あえて日本語で楽天経済圏という表現を使った(後に楽天エコシステムに改名)。

発信した情報のほとんどは忘れ去られるものの、期待値のコントールはキチンと楽観過ぎず、悲観過ぎないバランスで行う(楽観には天井があるが、悲観は底なし)。

株価とは美人投票

皆が良いと思わないと上がらないが、皆が良いと思ったときにはもう遅い。客観的の大多数の投資家の判断を伝えること、投資家がまだ見えていない価値をあきらかにすることで、企業側にとっても投資家側にとっても良い結果を生むことになる。

同じ船に乗る

社員に株主と同じ目線に立って欲しいということから業績連動報酬として、ストック・オプション(1円ストック・オプション)を付与している。社員レベルでIR活動にとても協力的になった

一方で1円ストック・オプションは株価が低迷した場合に、株主が苦しいときでも役員や従業員が利益を手に入れることができる(権利行使価格と株価上昇分の価格との差が利益として得られる)ため不公平ではないかという反対意見もあった(このあたりの交渉エピソードも面白かった)。

東証一部上場への道のり

時価総額的に既に新興企業ではないという認識から、何度か検討したものの長期に渡る審査と頻繁に行われるM&Aにより、なかなか踏み切れなかった。しかし、時勢や各市場に上場するためのメリットやデメリットを考慮した結果東証一部に上場することになった。

・TOPIXの構成銘柄になれる
・内部統制を整えることができる(期待値と妄想のコントロール)
・海外には東証一部上場でないと投資しないという投資家もいる

紆余曲折あって2013年11月26日に東証一部上場できた。

IR活動の仕組み化

まずそもそもIR活動を行う上でチームを育成する必要がある。書籍や研修などでも知識は得られるが、一番効果があったのは教える側に立つことだった。

IR活動の評価軸を決める際に、IRはファイナンス機能の一部であるという信念のもと、株価に関する何らかの指標をKGI(重要目標達成指標)にしたかった(結果的に適正な評価に基づいた株価の持続的な向上をKGIとした)。

また、こういった議論を行える場を定期的に設けることはとても効果的だった。楽天がテクノロジー業界で生き残るためには、常識を破るようなチャレンジをし続ける必要があり、そのチャレンジに備えることこそがIRチームのミッションである。

企業と投資家のすれ違い

企業と投資家で認識にギャップがあることがわかった。

ROEが資本コストより低いと、資金の拠出者の支援や期待に対し充分に答えていたということに対して、企業側も投資家の時間軸が企業側の時間軸と違いすぎる点に不満を持っていた。しかし、そのギャップがはっきりと認識できたことで企業と投資家の間での議論がより真剣なものになった。

市場はあくまで、いつ、どのような性質の資金をいくら(コスト) でどの程度(金額) 調達し、何に、どう使って利益を上げ、株主価値を高めるのかということを明らかにしたい。



毎回この規模の感想書くの辛いのでもっとコンパクトにしていきたい所存です。

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