Vtuber業界 Introduction
◆これはどういう記事か
本稿から、Vtuberって最近よく見るけどあれってなんなの?って思っている初心者、特にビジネス方面の方向けの記事を投稿していきます。
どこかの企業のマーケターやPR関係の方がここの記事を読んで、Vtuberって選択肢もあるな、と認識してVtuber業界がもっと広く、活気に満ちたものになればいいというスタンスです
◆Vtuberとは?
Vtuber(Virtual Youtuber)の定義は正確には決まっておらず、本人が名乗ればそうである状況ではありますが、本稿では”バーチャルなキャラクターを本人とする建前で配信活動を行う人”と定義します
(近年ではYoutube以外の、BilibiliやReality、Showroomといった他配信プラットフォームで活動を行う場合が多いため、バーチャルライバーと呼ばれることも多いですがこちらも同義とします)
◆Vtuberはどう出現したのか?
一般的に、キズナアイの出現によってVtuberが一般化していった、とされる場合が多いですが、Vtuberの登場は、サブカルチャーコミュニティの発展と切り離すことはできないものです。
Vtuberの特徴として、”中の人(魂)”と”キャラクター(モデル)”が分かれていることがありますが、この2つの関係性ができるまでに、下記の3つの文化を経てきています。
1.ニコ生文化
2.声優文化
3.バーチャルキャラクター文化(Voiceroid&Vocaloid文化)
☑1ニコ生文化に関して:
現在の日本のYoutuberの生放送文化はニコニコ生放送の文化が流入して形成されています。
Vtuber登場以前より、ゲーム実況者や歌い手などが、本人をイメージしたアバターを動画内に登場されるといった手法はよく行われていました。
彼らは、本人映像を画面内に登場されない時にアバターを画面に出す手法を取ることから、
配信者≒アバター
と視聴者に認識させる、現在のVtuberにつながる土壌があります
(全く出さない人もいたため、Vtuberとの境界線は曖昧)
☑2声優文化に関して:
Youtuberの人気が高まる以前の2010年前後より、マルチな活動を行い声優個人の人気を高める”声優アーティスト”が出現していました。
この流れに影響していた要素の一つが、IDOLM@STERSなどで行われている”声優ライブ”です。これは、声優が声を当てている役の”キャラクター本人”としてライブに出演しパフォーマンスするもので、”声優(中の人)”と”キャラクター”をシンクロさせます。見た目は声優であるものの、キャラクター本人としての会話・歌唱・パフォーマンスを行うのです。
声優(見た目)=キャラクター(中身)
といういわばVtuberと逆の図式が既に受け入れられていました。
☑3バーチャルキャラクター文化に関して:
Vocaloidの初音ミクに始まる合成歌声・合成音声ソフトウェアのバーチャルキャラクター化は、各投稿者ごとにそれぞれキャラクターの人格・特徴が異なる、マルチバース的なコンテンツの発展を自然なものにしました。
いうなれば、A氏が投稿する初音ミクAは、B氏の初音ミクA'とは別人である、と視聴者が自然に認識するようになったのです。
キャラクターA(A氏)≠キャラクターA'(B氏)
上記の3つの文化を下敷きにVtuber文化が形成された結果、Vtuberは、”中の人(魂)”と”キャラクター(モデル)”の同一性が高くありつつも、デザインや設定等を含めたマルチバース展開を許容する独自の形態となっています。
◆VtuberはYoutuberと何が違うのか?(Vtuberの特徴)
Vtuberが”バーチャルなキャラクターを本人とする建前で配信活動を行う人”であると先に定義しましたが、では何が従来のゲーム実況者やYoutuberと異なるのでしょうか
一般的には、顔を出さないことによる”匿名性の確保”・”配信事故の低減”が挙げられます。これは近年のテレワークの流れもあり、ZOOMのバーチャル背景やフィルター等でよく耳にするポイントであると思われます。
しかし、最も特徴的なポイントとして挙げられるのは、Vtuberは”バーチャルなキャラクター”を前面に押し出したコンテンツであることによって、”キャラクターのマルチバース的展開”と、”ミーム化”による積極的な展開を許容する点です
Vtuberは”キャラクター”のプロフィール設定と、”中の人”が積み重ねてきた人生経験の双方の個性を両立します。このことによって、日常の雑談配信のような場では、軽妙な体験トークを話しつつも、ボイスドラマやショートアニメーションといった場では”プロフィール”よりのキャラクターで様々な役を演じます。
これはVtuberによる発信のみではなく、ファンアートにおいても同様の事象が発生しています。この公式による発信と、ファンアートの双方によるマルチバース的な多種多様のストーリー展開がVtuberのストーリーをさらに深め、フォロワーの拡大・深化に繋がっています。
先に述べた”キャラクターのプロフィール”と”中の人の特徴”がどの程度一致しているか、についてはVtuber個々人によって様々ではありますが、概してそこにギャップが存在しても視聴者が離れることはありません。
所謂”キャラ崩壊”と言われるこれは、Vtuberではタレントイメージを毀損させるものではなく、むしろ”ギャップ萌”による話題性の獲得と新規登録者の流入に繋がる傾向があります。(”切り抜き動画”と言われる配信の見所を抜き出した動画がファンによって支援的に投稿される土壌があるため)
また、何らかの強烈なインパクトのある発言やコンテンツがVtuberから供給された場合、それはミーム化してトレンドとなる場合があります。
ミーム化に成功した場合、そのミームが一人歩きして多種多様なファンアートがSNS上に供給されます。このミームが、従来そのVtuberに触れてこなかった人(時にはVtuber界に触れてこなかった人や、言語の壁も越えてまで)にリーチするようです。
上記のミーム化の例としては、ホロライブの白上フブキや桐生ココ、にじさんじの御伽原江良などが有名です。
◆Vtuberのコラボレーション
Vtuberの世界では、まったく異なる世界観を下敷きにデザインされたVtuberや、他のゲームキャラクター、実写タレントがコラボレーションをしても違和感なく視聴者に受け入れられます。これはVtuberがバーチャル世界に住んでいる(もしくはバーチャル世界に来て配信している)という建前で活動しているということが視聴者との間で共有されているためです。
例えば大塚製薬のbeyond 2020プログラムはその点を効果的に生かした施策といえます
◆どのようなVtuber関連企業があるのか(運営者カオスマップ)
(運営企業が明らかになっていないグループやVtuberも多いため、上記図に網羅性はありません)
上記カオスマップの赤く囲われた範囲が、一般的に企業がVtuberを活用したマーケティングをする際にアプローチする範囲になると思われる領域になります。
Vtuber企業の内訳としては、最も規模が大きく古参である、”いちから(にじさんじ運営)”と”COVER(ホロライブ・ホロスターズ等運営)”が最もタレント数・ファン層共に厚く、続いて”APPLAND(.LIVE・アイドル部運営)”、”Active8(Upd8運営)”が続き、その他多数の企業が参画しています。
全体の特徴としては、タレントプロデュースのみをする企業は少数派であり、自社でキャプチャーシステムや3Dコンテンツなどの技術開発まで手がける企業が多い点です。
上記のカオスマップはこちらからDLできます ⇒リンク(2020/09/10追記)
より詳しいVtuber業界の企業動向については以下の記事が詳しいです
◆近年のVtuberの傾向は?
Vtuber=3DCGで動くキャラクターと思っている方も多いようなのですが、近年ではそうではありません。
Vtuberの人気が高まり始めた2018年までは、3DモデルでデビューするVtuberが主流ではありましたが、近年ではLive2Dモデルでデビューし、人気獲得と共に3Dも作成する段階的な形式が主流となっています。
これは、当初のVtuberがYoutuberと同様に動画投稿を主として活動していたのに対し、近年ではライブ配信で活動することが増えたこととがあります。
3Dモデルのみで活動する場合、動画撮影の度には高価な機材とある程度以上のスペースのスタジオが常に必要で、スタッフ等も含めてランニングコストが高いと考えられます。そのため、高頻度での生配信のハードルが高いと推察されます。
また、言うまでもなく3Dモデルは非常に制作コストが高く、かつ差分を作る工数も重いです。
それに対して2Dモデルでデビューするのは、Webカメラ(もしくはスマホのカメラ)で顔認識をする形式であることからコストが比較的低く、ライバーの配信ソフト上で本人がセットアップすることも可能です。そのため、高頻度・長時間の生配信に向けたハードルが低いといえます。
また、2Dモデルは比較的コストが低く、かつ差分も作りやすい特徴があります。差分が多く作れるということは、配信の多様性を高めたり、様々なデザインを追加したりなどができ、ファンのロイヤリティを高めることに繋がります
たとえば、デビュー直前で契約取り止めの憂き目を見たVtuberモデルの”星野ニア”は当初100万円ほどでモデル一式を受注したと、制作イラストレーターの目 浮津さんがが公表している(記事)
また、生配信が主流になった理由として、スーパーチャットの浸透による生放送中の投げ銭文化や、生配信は視聴者とのコミュニケーションが盛んなため、動画投稿よりもVtuber本人のモチベーションが保ちやすい等の理由が考えられます
3Dモデルに関して:
Pixivが提供しているVroidや、Wright Flyer Live Entertainmentが提供するRealityなど、3Dモデル作成から配信まで一括でサポートするプラットフォームは複数存在するものの、まだ小規模なレベルにとどまっている
*上記で例に挙げているリゼ・ヘルエスタの応援よろしくお願いします。
素晴らしく良い人で面白い配信をする推しです(チャンネル・Twitter)
◆どのようにVtuberの最新情報を入手するのか?
一般的なPR情報はVtuber所属事務所の公式Twitterアカウントや、バーチャル領域に強いメディアであるPANORA、Mogura VR、V-Tuber ZEROにプレスリリースや記事が出るため、そこから入手できます。
一方、どのようなファン層がいるかなどのアナリティクス情報を公開しているVtuberはほぼいないため、マーケティング的な需要を厳密に満たすためには所属事務所に問い合わせを行うほうが良いといえます。
でも一番いいのは………
Vtuber本人の配信を見てください。見た目・声・やっている企画…
どこか気になったポイントがあったら、その方のチャンネルを登録して、気が済むまで見てください。
そうして、Vtuberの感性やイメージが企業や、ブランドと合うかわかるでしょう。そして、貴方自身が誰か大切な”推し”に出会えればもっと楽しくなります
ご相談・ご指摘等ございましたら以下のメールアドレスまでご連絡ください
ktea86come★gmail.com (★を@に置き換え)