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NPBはピッチクロックよりも「オルタネートユニフォーム」を導入スベキ

先日、「ピッチクロック」がNPBでも導入される可能性を報じる記事が投稿され、大いに話題になった。

今シーズンからMLBで導入され、NPBでも2年後を目処に導入が検討されているとされるピッチクロック。

…こんな導入の仕方をしておいて何だが、ここでピッチクロック導入の良し悪しを議論するつもりはない。
何せ、ユニフォームに関しての話をするnoteなので。

「何でもかんでもMLBの真似かよ」

では、何故こんな書き出し方をしているかというと、(「ピッチクロック」というワードをねじ込むことでアクセス数を稼ごうなどと思った訳ではもちろんなく)こういう類の話になると度々「何でもかんでもMLBの真似かよ」みたいな意見が見受けられる、という共通点があるからだ。

このnoteを書く上で、どうしても切り離せないのがMLBとNPBのユニフォームを取り巻く環境の比較。
個人的にMLB的なスタイルこそが野球ユニフォームのオーセンティックなスタイルだと思っているため、「MLBこそ正義」的な視座からNPBのユニフォームを批評する、みたいな感じの構図で語るハメになってしまいがち。

「これぞ理想のユニフォーム!」シリーズの記事などは、特にその傾向が顕著だろう。
言ってしまえば、「何でもかんでもMLBの真似かよ」と言われても仕方ない状況にある、ということである

先に弁明しておきたいが、「MLB的なスタイルこそが野球ユニフォームのオーセンティックなスタイル」と思っていることは紛れもない事実ではあるものの、別にNPB独自のガラパゴス的ユニフォーム文化の全てを否定・批判するつもりはない。

ただ、どうしてもMLB的なスタイルの方が「好き」なのだ。
良い悪いではなく、単に「好き」なのだ。

そうすると今度は「じゃあMLBだけ見とけよ」などと言われてしまうかもしれないが、残念なことに(?)「MLB的なスタイルのユニフォームが好き」である以上に「日本のプロ野球が好き」でもあるので、MLBだけ見とくなんて事は到底できない。

好きな日本プロ野球の各チームが好きなMLB的なスタイルのユニフォームを身に纏う様を妄想することくらいは許してもらいたいと思う。

NPBファンの知らないオルタネートユニフォームの世界

毎度のことながら、なっがい前置きに自分で書いていても辟易するが、ここからがようやく本題。

どうせ「MLBの真似」をするならピッチクロックの導入なんかよりも先にやることがあるはずだろう、というのが今回の問題意識だ。

それはズバリ、「オルタネートユニフォーム」の導入である。

このnoteでも頻繁に使用しているワードだが、日本ではあまり聴き馴染みのないものなので今一度簡単に説明すると、通常のホームユニフォーム&ビジターユニフォームの“代替として(=altanate)”着用するユニフォームのこと。

ボストン・レッドソックスのユニフォーム。
左上:ホーム、左下:ビジター、右上:ホームオルタネイト 、右下:ビジターオルタネイト

ホーム&ビジター以外のユニフォームという意味では、NPBでも「サード(3rd)ユニフォーム」という名称で一般的になっているものがあるが、NPB的な「サードユニ」が期間限定で着用される特別ユニ・イベントユニの総称であるのに対し、
MLBの「オルタネートユニ」はホーム&ビジターと並んで通年で着用されるのもので、シーズンごとにデザインが変更されることもなく、特定の「着用試合」なども設けられない、あくまで「通常ユニのオプション」という位置づけ。

「ホームユニ=白、ビジターユニ=グレー」という原則が存在するMLBにおいて、チームカラーを基調としたものになることが多いオルタネートユニは試合を彩るアクセントとなっている。
着用の基準はチームによって様々だが、最もオーソドックスなのがその試合の先発投手がどれを着るか選ぶ、というもの。

「ホームユニ=白、ビジターユニ=グレー、オルタユニ=チームカラー」
これこそが、私が理想とする「MLB的なスタイル」なのだ。

ところが、NPBではこの「オルタネートユニフォーム」という文化が全くと言っていいほど定着していない。

ほとんど唯一の例と言えるのが、2000年代のロッテ
現在まで続くピンストライプのホームユニフォーム(「戦ユニ」)に、だんだら模様が特徴の「誠ユニ」「侍ユニ」を加える形で「MLBスタイルのオルタネートユニ」を導入していたが(先発投手が着用するものを選ぶという方式まで踏襲されていた)、同様の運用は短期間のうちに廃止されることとなり、現在に至っている。

現在のNPBで言えば、着用試合の多さや数シーズン同じデザインを使用することなどからオリックスのサードユニフォームが最もそれに近い存在と言えるが、着用試合が予め設けられている上に数年置きにデザインが変更されているのは事実なので正真正銘の「MLBスタイル」とは言えない。

もっとも、NPBではビジターユニをチームカラー基調のものとするという独自の文化が育まれているため、わざわざチームカラーのオルタネートユニを用意するという選択肢自体そもそもが発生しにくい、という現状があるのだが、
この「ビジターユニをチームカラー基調のものとするという独自の文化」こそが私が個人的に最も疎んでいるモノである、という事はもはや言うまでもないだろう。

結局のところ何が言いたいかというと、「NPBも全球団『ホームユニ=白、ビジターユニ=グレー、オルタユニ=チームカラー』の感じにしてくれ〜!!」ということ。

なぜなら、(繰り返しになるが)その方が「好き」だから。
ピッチクロックとは違って、導入することで発生するメリットやデメリットを比較してどうのこうのと議論ができるような話ではないし、導入が検討されるに至るまでの背景なども別に存在しない。

ただただ、私個人の好みの話でしかない。
しかし、そもそもそういう話をしたくてこのnoteを始めた訳だから、こういう話をすることこそが本懐なのだ。

NPB版オルタネートユニの可能性

ここで、改めてこのnoteで言及=妄想してきた「NPB版オルタネートユニ」を一部抜粋してご紹介したい。
(※いずれも左上:ホーム、左下:ビジター、右上:ホームオルタネイト 、右下:ビジターオルタネイトの並び)

これぞ理想のユニフォーム! 〜西武編〜
これぞ理想のユニフォーム!〜阪神編〜
これぞ理想のユニフォーム! 〜広島編〜

こういう感じでアレコレ言ってきたのだが、2023年、この「理想形」に限りなく近い形でユニフォームを揃えてきたのが巨人だ。

ユニフォームリニューアルに際して新たに追加された、サードユニ(黒ユニ)と2023年モデルの橙魂ユニ。
この2つのユニフォームはいずれも、ホーム&ビジターに使用されているデザインのテンプレートをそのまま利用した上で、黒とオレンジというチームカラーで配色したモノになっている。

まさしく、私の理想とする「MLB的なスタイルのユニフォーム」と言っていい。
この記事を書こうと思ったのも、他のでもない、この2種類のユニフォームのあまりの素晴らしさに感動を覚えたことがきっかけである。

しかし、このユニフォームに関しても、従来の「NPB型サードユニフォームの方式=特定の着用試合を設けた企画ユニ扱い」に留まってしまっているのが非常に残念だ。
日程を調べてみると、それぞれわずか9試合ずつしか着用しないとのこと。
もったいないことこの上ない。

特に黒のサードユニに関しては、2000年代に採用されていた黒いビジターユニフォームから着想を得て制作したというのだから、MLB式で「同じカラージャージをホームとビジターの両方で着用する」という感じの運用をしても面白いのにな、などと思ったりもする。

画像はシカゴ・ホワイトソックスとシカゴ・カブスの例だが、どちらも同じオルタネートジャージをホームとビジターの両方で着ている
よく見ると、左はホームのピンストライプパンツ、右はビジターのグレーパンツだ。

まさにこういう感じが理想。

また、最近のパ・リーグでは、本来ホームゲームで着用するためのサードユニフォームをホームでの「着用試合」とは別にビジターゲームでも着用する例がよく見られる。

京セラドームでダブルアニバーサリーユニを着るソフトバンク・周東
ベルーナドームでCLMユニを着るロッテ・中村奨
京セラドームでヒーローユニを着る日本ハム・細川

パ・リーグはユニフォーム広告の制限がセ・リーグより緩いこともあってこういう融通が効きやすい、ということも関係しているのだろうが、見ていて非常に目が楽しい。
阪神ファンでセ・リーグの試合をメインで見ている私にとってはとても羨ましい限りである。

特に、ロッテのCLMユニフォームに関しては、先ほど例に上げたホワイトソックスやカブスのように、ホームではホーム用のピンストライプパンツを、ビジターではビジター用の白パンツを合わせてもらえると尚のこと良い。

イメージとしては、
・キャップとシャツをCLM仕様に変えただけのホームユニ
・キャップとシャツをCLM仕様に変えただけのビジターユニ
という感じ。

それの何が良いのかを論理的に説明するのは不可能だ。
なぜなら、私が「そっちの方が好き」なだけだからだ。

もし私がこういった内容を球団に対してプレゼンする立場なのであれば、それなりにきちんとした理由付けが必要なのだろうが、そんな立場には到底なり得ないのだから、否、ないからこそ好き勝手に言わせていただきたい。

それに、(一部の球団を除けば)別に現状のNPBのスタイルに何か不備が生じている訳でもなく、今のままでも円滑なリーグ運営を維持することは十分に可能だ。
唯一言えることがあるとすれば、「こうした方がカッコよくなるのでユニフォーム売れますよ」みたいなことくらいだろうか。

元日本ハム・阪神の今成亮太氏が以前「プロ野球選手のユニフォームは、サラリーマンで言えば365日全く同じスーツを着てるようなものなので、特別ユニフォームの時は気分が変わる」みたいな感じのことを言っていたのも、何かしら根拠になるかもしれないが。

崩壊しつつある「MLB=ユートピア」説

ところで、ここまで散々語ってきたことは、何度も繰り返している通り「“MLBスタイル”こそが野球ユニフォームデザインにおける理想形である」ということが大前提にあるのだが、実は今、この前提が成り立たなくなり始めている。

今シーズンからMLBで導入された「4+1ルール」というルール。
これは、MLBと全30球団のユニフォームサプライヤーを務めるナイキ社との間で取り決められたもので、近年各球団が独自に増やし過ぎていたユニフォームの種類を一律4種類に制限する、というルールである。

因みに「+1」というのは、ナイキが提供する「シティ・コネクト」ユニフォームはその4種類から除外して考える、という意味。

このルールにより、各球団はユニフォームの取捨選択を迫られることになったのだが、その中で、タンパベイ・レイズとシアトル・マリナーズの2球団が上下グレーのビジターユニフォームを廃止するという結論を出したのだ。

この問題については、もう少し色々と整理してからまた個別に記事を書きたいと思っているので、今ここではそこまで深掘りはしないが、
このルールの登場によって「ホームユニ=白、ビジターユニ=グレー、オルタユニ=チームカラー」という私が理想とする「MLBスタイル」が崩壊し始めている、ということはあえてこのタイミングで言及しておくべきだろう。

MLBが「理想」を語るための拠り所としての価値を失う可能性が高まっている今、「MLBの真似が理想」なのではなく、MLBがどうとか関係なく「私自身がこういうのが好き」なのだ、と今改めて宣言しておきたいと思う。

繰り返し「好き」という言葉を使っていたのも、要するにそういうことである。

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