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プロ野球で“グレーのユニフォーム”が復権しそう(だけど多分しない)

野球のユニフォームについて、公認野球規則では以下のような規定があります。

各チームは、ホームゲーム用として白色、ロードゲーム用として色物の生地を用いて作った2組のユニフォームを用意しなければならない。

公認野球規則 3.03(b)(2)

「ロードゲーム」というと聴き馴染みのない人もいるかと思いますが、「ビジターゲーム」と聞けば大抵の人がピンと来るのではないでしょうか。

サッカーとか他のスポーツ基準だと、「アウェイ」の方がより一般名詞的かもしれません。
プロ野球界隈では「ホーム/ビジター」という呼び方が定着しているので、ここでははそちらを使用しています。

日本プロ野球においては、特にこのビジターユニフォームについての規定である「色物の生地」という部分に対する解釈がかなりガバガバになっているという問題があります。
一体どれくらいの人がコレを「問題」と呼んでいるかは知りませんが。

元々、ビジターユニフォームと言えば「上下グレー」が鉄板。上下白のホームに対し、ビジターは上下グレー。
MLBでは全30球団が「上下白のホーム&上下グレーのビジター」という原則を今でも変わらず守っています。

しかし、NPBでは2022年現在、12球団のうち実に9球団が「チームカラー基調のシャツに白色のパンツ」という組み合わせのビジターユニフォームを採用しています。

グレーは3球団のみ。日本ハムはパンツがグレー。

今となってはもはや当たり前の光景として受け入れられていると思いますが、よくよく考えてみると、これって規則上なかなかのグレーゾーン(グレーだけに)。

確かに「色物の生地を用いて」作られていることに違いはないので、絶対的にアウトとは言えないでしょうが、ホーム用の規定となっている「白色」がくっきりはっきり入ってしまっているという部分にモヤモヤが抱かざるを得ないのが現状です。

2015〜17年に巨人に在籍していたマイルズ・マイコラス投手も、紺シャツ+白パンツのビジターユニフォームを採用しているヤクルトに対して苦言を呈するようなコメントを残しています。

なぜビジターで白いズボンをはくチームがあるんだい。
我々は敵地では上下ブルー※。ビジターは相手に敬意を示す。白は本拠地で使ってほしい。負けたくないね。
※コメント当時の2016年、巨人は上下水色のビジターユニを採用。

マイコラスによる福音書

完全に同意です。
MLBでは全30球団が「上下白のホーム&上下グレーのビジター」という原則を守っています(大事なことなので2回目)。

「オルタネートユニフォーム」としてチームカラー基調のシャツを着ることもありますが、ビジターゲームでそれを着る場合も下のパンツはちゃんとグレー。

ボストン・レッドソックスのユニフォーム。
左上:ホーム、左下:ビジター、右上:ホームオルタネイト 、右下:ビジターオルタネイト

個人的には、NPBでもこういう様式が当たり前になってほしいという思いがあります。

ただ、規則の話を持ち出したり、MLBの話を持ち出したりというのはあくまで後付けの論理武装に過ぎません。
規則だからそうしろ、MLBではそうなっているからNPBでもそうしろ、なんてことを言いたいのではないのです。

「70年代にセパレートタイプのユニフォームが登場した」という背景は日米共通なのですが(ユニフォームが発色しやすい素材に変わった、テレビ中継が普及し始めたなどの背景があります)、次第に元の様式に戻っていったMLBとは対照的に、NPBでは70年代に生まれた様式を基にガラパゴス的な独自のユニフォーム文化が定着していきました。

NPB独自という意味で言えば、それはそれでいいと思います。
何でもかんでもMLBに倣え、などということは言うつもりはありません。
実際、既に上下セパレートが“伝統”になっている球団すらある訳で。

ではなぜNPBでも上下グレーのビジターユニフォームを、と願うのか。
それは、単に私が上下グレーのユニフォームが好きだからです。

上下グレーのユニフォームってシンプルにカッコよくないですか?
アマチュア野球とかでも、例えば横浜高校とか、熊本工業高校、慶應大学とか。どれもかっこいい。

画像は野球ゲーム『MLB The Show 22』のパッケージです。
大谷翔平選手がアジア人選手として初めてパッケージに採用されたことで話題にもなりましたが、個人的にはそれ以上にビジターユニフォーム姿の画像が採用されたことがかなり衝撃的でして。

もちろん過去に例がない訳ではありませんが、この上下グレーユニを着た大谷選手のカッコよさを分かっている人がちゃんといた!っていう喜び・興奮を含めた「衝撃」ですね。激アツです。

規則の話をするなら、このグレーのアンダーシャツも本来NG。でもカッコいい。

そして、この大谷選手の影響なのか何なのかわかりませんが、実はNPBでも徐々にグレーのユニフォームが復権しつつあるような雰囲気もあるのです。

ロッテ ALL FOR CHIBA 2022

千葉移転30周年を記念して一新されたALL FOR CHIBAユニフォーム。
移転初期の「CLM」マークをアップデートしたロゴデザインが注目されがちですが、私としてはこのシャツのみグレーというスタイルが非常に気になりました。

球団が公開しているコンセプトによれば、「白のホーム、黒のビジターのレガシーを継承」というコンセプトからグレーが選ばれたようです。
白と黒を混ぜたらグレーになる的な?

ということは、例えば昔採用されていた上下グレーのビジターユニフォームのオマージュみたいなことではなさそうで、あくまでもグレー色のカラージャージ、というイメージであると。

正直違和感は禁じ得ませんが(綱島理友先生曰く「ビジター用のグレーの上着にホーム用の白いパンツを間違えて履いてきてしまったよう」)、スタイルとしては非常に品良くまとまっている印象です。
グレーという色の良さが出てます。

オリックス 夏の陣 2019&2021

オリックスの夏イベント『Bs夏の陣』。
2019年、2021年と2回連続(2020年は中止)でグレーを取り入れた専用ユニフォームが採用されました。
先日球団の公式YouTubeチャンネルで公開された夏の陣歴代ユニフォームの人気アンケート企画では、この2モデルが1位&2位という結果でした。
やはり、”分かってる”球団のファンは”分かってる”んですね。

ただ、オリックスにしてもロッテにしても、あくまでイベントユニフォームとしてグレーのユニフォームが採用されているのが、私が個人的に理想としている形とはやや乖離があるというか。

どれもデザインは素晴らしいし、グレーのユニフォームが見られること自体非常に眼福ではあるのですが、即ちレギュラーユニフォームとしては受け入れられないことの証左でもある気がして、もどかしいというか悲しいというか。そんな気がしているのも事実です。

日本ハム&阪神 2022年新ビジターユニ

その点で言えば、2022年シーズンからユニフォームを新調した阪神と日本ハムはどちらもビジターユニフォームにグレーを採用しています。

阪神の新ユニフォームについては、画像を見たままの素晴らしい出来ですし、このnoteでもさんざっぱら語りまくっているのでそちらを参照していただければと思います。

日本ハムの方に関しては、全体的なインパクトが強すぎてあまり語られない部分ではあるのですが、先述したMLBのビジターオルタネートの要領でカラーシャツ+グレーパンツという様式が採用されています。
出来れば北海道移転初期のような上下グレーが理想ではありますが、「ビジターユニ=グレー」という基本原則を10年ぶりに思い出して頂けただけでも感無量と言ったあたりです。

これで元々上下グレーだった巨人と合わせてグレー基調のビジターユニフォームは3球団。一時期は巨人のみだったことを考えると、状況は改善されつつあるのでしょうか。
何を以て「善」なのかはわかりません。

上下色付き・柄入りの企画ユニフォーム増加中

最後に余談ですが、2020年代に入ってイベントユニフォームにも徐々に変化が見られます。

2010年代はカラージャージ+白パンツの上下セパレートタイプがスタンダードとなっていた各球団のイベントユニフォームですが、ここ最近になって上下で色を揃えたり上下ともに柄が入っていたりするタイプのユニフォームが増えつつあります。

画像は、上段左から時計回りに
・オリックス Bs夏の陣 2022
・西武 ライオンズフェスティバルズ 2022
・ヤクルト TOKYO燕パワー 2022
・阪神 ウル虎の夏 2022
・オリックス サードユニフォーム(2020〜21年モデル)
・巨人×Yohji Yamamoto(2022年)
となっています。

どれも、ここ2、3年のユニフォームです。
オリックスに関しては、先に挙げた2つの『夏の陣』ユニもこの系譜のうちですね。

他にも、画像は用意していませんが、ソフトバンクの『鷹の祭典』やヤクルトの『燕パワー』などでは、上下ピンストライプのユニフォームが採用されていたりしています。

なぜこれに着目したかというと、どうにも「イベントユニフォーム=上下セパレート」というのが固定観念化しているように感じていたからです。
別にそれが悪いとかカッコよくないとかということではないのですが、それだともはや「普通」になり過ぎてて面白味がないよなぁと。
せっかくのイベントユニフォームなのだから、もっと特別感が欲しい

MLBではここ数年「パウダーブルー」を基調としたユニフォームがリーグを席巻していますし、2021年から始まった「City Connect」シリーズでも上下で色を揃えたタイプのユニフォームが少なくありません。
NPBのイベントユニにおける新機軸も、このような潮流を捉えたものなのかな、なんていう風に思えて非常に楽しいです。

ただ、冒頭の話に戻ると、ホームゲームで上下色物のユニフォームを着るのって規則上どうなん?という話ではありますが、そこは都合良く無視しましょう。

どちらもホームオルタネートとしても使用している。
現在30球団中14球団が採用しているCity Connectユニフォーム。

(何回も言うようですが)別に何でもかんでも「MLBに倣うべき」などと言いたい訳ではありません。
良いものは良いし、取り入れたら面白いものは取り入れたら面白い。
ただそれだけのことです。

しかし、これまでの経験則からして「どうせこういうのも一時期の流行止まりで、そのうち無くなるんだろうなぁ」という、オタク故の悲観的な感情を止められないでいるのが現状でもあり…
是非定着して欲しいんですけどね。しないんだろうなぁ。

という感じで、ここ最近のNPBのユニフォームが私の好みに寄り添った雰囲気のものが増えつつある中で、嬉しさもあり若干のもどかしさもあり、というややこしい感情に苛まれています、というお話でした。


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