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ベイスターズは(結局)ピンストライプに夢を見るのか?

シーズンもいよいよ最終盤、各チームがそれぞれの目標に向けて死力を尽くす時期となっている。

今回クローズアップするのは、読売ジャイアンツと熱いCS枠争いを繰り広げている横浜DeNAベイスターズ。

何でもこの9月頭、「俺たちは、あきらめが悪い」というスローガンを掲げると同時に、6月に開催された「GET THE FLAG! SERIES 2023」で着用した1998年復刻ユニフォームを再着用したのだ。
言わずもがな、このユニフォームは1998年に38年ぶりのリーグ優勝・日本一を達成した栄光のユニフォームの復刻モデルである。

その年のイベントユニフォーム・企画ユニフォームの着用期間中に大きく勝ち越したりすると、そのゲンを担いで特にシーズン終盤を中心にそのユニフォームの着用試合を増やす、というやり方はさほど珍しくない。

特に代表的なのは、着用24試合で20勝を挙げ、シーズン終盤のみならずポストシーズンでも着用された2017年西武の「炎獅子ユニ」だろう。
今年は楽天が9戦8勝をあげたFANS'ユニを再着用しているし、DeNAも昨年、横浜Fマリノスとのコラボユニを再着用していた。

今回の98年復刻ユニフォームは交流戦最初のカードに着用され、DeNAはそのカードを勝ち越した勢いそのままに交流戦優勝を果たし、リーグ戦再開直後には一時的ではあったものの首位浮上も経験した。

シーズン最終盤、Aクラス確定・CS突破(もちろんリーグ優勝の可能性も完全消滅している訳ではない)へと勢いを付けたいチームにおいては、9月頭のカードでこのユニフォームを着用するというのは非常に意義深いことだろう。

しかし、今年のDeNAの場合、そしてこの復刻ユニの場合に限って言えば、個人的に少しモヤモヤする部分があるのだ。

「頂点を目指す一本の道」

ご存知の通り、今年のDeNAはホームユニフォームのデザインを一新してシーズンに臨んでいる。
前後の見頃、肩、パンツ脇に大胆に配された太いラインが印象的なユニフォームのコンセプトは、「頂点を目指す一本の道」

新たなホームユニフォームは過去の歴史や伝統を継承し、さらなる進化を遂げていきたい、という思いを込めた。
チームとファンの皆さまとの一体感をより強く生み出していくべく、
これまでのユニフォームの象徴的なストライプを集約し、頂点を目指す一本の道"YOKOHAMA STRIPE"へ。
"YOKOHAMA STRIPE"の5本の線には選手それぞれの個性が結束し、同じ一本の道へ進んでいくことを同時に表現。

横浜DeNAベイスターズ

このコンセプトやデザインの是非については、先日投稿したユニフォームランキングの記事を是非参照して頂ければと思うが、簡単にまとめると個人的に「かなり好きじゃない」ユニフォームだ。

何せ広島、中日、ロッテなどユニフォームを変更した球団に関してはどれもそこそこのボリュームで記事を書いた一方、DeNAに関してはどうにも個別記事を書く気が起こらなかったくらいである。

ただ、ここで問題にしたいのは私個人の好みの話ではない。
もっと根本的な違和感だ。

「頂点を目指す一本の道」を表現するために、長年チームの象徴だったピンストライプをわざわざ1本の太いラインにまとめた新ユニフォーム。

その理屈に沿って考えると、つまり球団は従来のピンストライプは「まとまりが足りない」「結束が不十分」「頂点への道筋がバラバラ」的な意味合いを含むものだ、と見做したと言えるのではないだろうか。

大半の人からは「考え過ぎじゃね?」「妄想乙」などと言われてしまうかもしれないが、ピンストライプのユニフォームをこよなく愛する私からすれば、そう言われたも同然の一大事なのだ。

しかし、今回再着用されたユニフォームを見てみるとどうだろうか。
まごうことなき王道のピンストライプがデザインされている。
新ユニフォームを作るにあたって、「さらなる進化」を遂げるにあたって、球団自らその存在をある意味否定したピンストライプがデザインされているのだ。

いくら「栄光のユニフォーム」だからといって、いくら縁起の良いイベントユニフォームだからといって、現在のホームユニフォームが持つ意味を考えればそう易々と復刻も再着用もできないはずなのだが…

ユニフォーム変更から何年か経っているならまだしも、変更初年度なのに。

その辺りの整合性については特に気にしたりしないのだろうか?

ベイスターズは結局ピンストライプに夢を見るのか?

今回の再着用にあたり、球団のリリースでは「再び伝説のユニフォームをまとい、頂点への道のりを駆け上ります!」とあるが、
「頂点への道のり」と言うなら、まずは自ら言い出した「頂点を目指す一本の道」を貫くべきなのでは?という違和感・モヤモヤが何となくあったりなかったり。

「結局この栄光のユニフォームに縋るのか」とまでは言わないまでも、何とな〜くモヤッとするのだ。

勘違いして頂きたくないのは、私がこの1998年のユニフォームが嫌いとかそういう訳では全くない、ということ。
私が旧デザインのユニフォームを如何に素晴らしいと思っているかに関しては(再びセルフ引用で申し訳ないが)、『これぞ理想のユニフォーム! 〜DeNA編〜』を是非とも参照されたい。

むしろこのデザインがとても好きだからこそ、その存在を否定しかねないようなコンセプトで作られた現在のユニフォームに対しては、割とはっきりとNOを突き付けたいし、
そういうユニフォームを新しく採用したにも関わらず、都合の良いところでは旧デザインを復刻・再着用する球団のやり口に対してはうっすらとしたモヤモヤが募る、といった具合である。

そういうことがしたいなら初めからそういうユニフォームにしとけばいいのに、などと思ってしまうのは私だけだろうか。

まあ、そもそも今のユニフォームのコンセプトに「これまでのデザインの存在を否定しかねない」とかいう被害妄想じみた大袈裟なニュアンスを感じ取っているのも私くらいなものだろうから、そんなこと考えているのも私だけなのだろう。

因みに、ユニフォームデザインを一新した後も度々旧デザインをモチーフにしたり復刻したりする、という意味では埼玉西武ライオンズもある意味同じなのだが、こちらに対してはDeNAに対して抱く違和感のようなものは特にない。

なぜなら、西武の現在のユニフォームには旧デザインの意義に対する否定的なニュアンスを特に感じないから。
むしろ、球団の持つ複雑な歴史・背景への丁寧な眼差しを感じるものになっている。何なら“眼差し過ぎ”て変な感じになってる節すらあるくらいだ。

“眼差し過ぎ”て変な感じになってる例

なお、「ただ、ここで問題にしたいのは私個人の好みの話ではない。
もっと根本的な違和感だ」などと大それたことを言っておきながら、
結局のところ100%「私個人の好みの話」でしかないような内容になっているのは私のnoteでは毎度恒例のことなので是非とも見逃して頂きたいところである。

特にDeNAファンの方々には顰蹙を買ってしまいそうだが、「こんなめんどくさい奴もいるんだなぁ」くらいな程度で受け止めて(受け流して)もらえればと思う。

何にせよ、6月のカードに続いて、再着用した今カードでも無事勝ち越しを決めたベイスターズ。
これで弾みを付け、最終盤の戦いに向けてラストスパートをかけられるかに注目である。

超余談:もしビジターユニなら…

余談だが、個人的には復刻するならビジターユニフォームにしておけば良かったのではないかと思ったりもする。

理由としては、ピンストライプ云々でこんな面倒な言いがかりを付けられることはなかった、というのがまず一点(言いがかりを付けてるのは自分の癖に何を、という話だが)。
ビジターユニはピンストライプではなく、青シャツ+白パンツの無地ユニフォームなので。

次に挙げられるのが、ホームユニより「黄金期ユニと暗黒期ユニ」との差別化が容易という点。

1998年モデルのユニフォームは、大きく分けると1993年から2008年までと長期に渡って使用されたユニフォームだが、このユニフォームの着用中、ベイスターズは日本一の栄光だけでなく惨憺たる暗黒時代も経験している。
そのため、世代によってはあまり良い印象のあるユニフォームではない、というファンもいないことはないだろう。

特に(帽子とスパイクを除いて)デザインの変更がなかったホームユニはその傾向が強いと考えられるが、一方のビジターユニに関しては、何度か細かいマイナーチェンジが行われている分「黄金期ユニ」と「暗黒期ユニ」とで明確に差別化できるようになっているのだ。

黄金期ユニ(左)と暗黒期ユニ(右)
変更点に関する詳細はこちらをぜひ。

これに基づいて90年代までの仕様をきっちり再現していれば、「暗黒時代ではなく黄金時代」という説得力がより増したのではないかと思う。

なお、「ホームユニがデザインの変更が一切なかった」と言ったが、ベイスターズが暗黒時代真っ只中にある頃には、ユニフォーム広告が新たに導入された。

黄金期ユニ→暗黒期ユニ→復刻ユニ
特に胸の「Nojima」の存在感は見た目の印象に大きく影響を与えていると言える。

今回の復刻ユニフォームにも当然ながら広告が付けられているため、今回の復刻ユニはどちらかと言えば暗黒期ユニに近いとも言える、
などという重箱の隅をつつくような指摘も、ビジターユニの復刻ならされることはなかったかもしれない。


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