ロッテ 2023年新ユニフォーム 〜典型的な“こういうのでいいんだよ”〜
2023年1月14日、ロッテが新ユニフォームを発表した。
元々、公式オンラインショップからユニフォーム類がごっそり無くなっていたことからユニフォーム変更の噂も立っていた（ファン感で発表されなかったため、スポンサー広告が変わるだけという見方もあった）が、ここに来てのロッテお得意の匂わせ投稿。
CHIBA LOTTE MARINES
— 千葉ロッテマリーンズ (@chibalotte) January 12, 2023
UNIFORM 2023
1.14 12:00 REVEAL / GO ON SALE pic.twitter.com/N8i9U9aXDi
どういうタイミング！？という感じではあったが、とにかく予告通り新ユニフォームが発表されたので、つべこべ言わずに先へ進む。
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新ユニフォーム概要
まずは、新ユニフォームの概要をおさえておこう。
主な変更点は以下の通り。
・マーキングが昇華プリントから刺繍へ
・ビジターユニのピンストライプ廃止
・ビジターユニの「Marines」ロゴ廃止
・CLMユニ刷新
・背番号、胸番号、背ネームの書体変更
・左袖プライマリーマーク廃止、新スポンサー広告
ホームユニフォームに関しては、現行ユニフォームでは12球団で最長の使用期間を誇るだけに、変わらないだろうと安心し切っている人と遂に変わってしまうのではと戦々恐々としている人とで態度がパックリ割れるのが面白かったのだが、安定のマイナーチェンジ。
一方でビジターユニフォームは地味ながら大きく変化している。
去年までのユニフォームには「PINSTRIPE PRIDE」という明確なコンセプトがあり、これからはそれを受け継いでいくのかなと思っていたが、今回の変更で割とあっさりと変えてしまったのは少し拍子抜けを食らったような感じだ。
しかし、はっきり言ってそんなことマジでどうでもよくなるレベルの出来事が起こったので、早速詳しく見ていきたい。
帰ってきた刺繍マーキング
いわば、完全大勝利である。
このnoteでも何度提言してきたか分からない「マークはプリントではなく刺繍であるべき」論。
ただ、日本の気候であったりいろいろな事情を鑑みても、どう考えても昇華プリントの方が理に適っているし、一度プリントへ移行したのをまた刺繍に戻すなんてことまずあり得ないと半ば諦めていたのも事実。
だからこそ、プリント採用を糾弾するのは辞めにして、それよりも今刺繍を維持している球団の心意気を称えよう、という考え方へシフトしてきた今日この頃。
しかし今回、そのまさかが実現してしまった。
2017年に失われて以来、7年ぶりに刺繍が帰ってきたのだ。
何度でも言うが、完全大勝利である。
こんな時期に言ってしまうのもアレだが、2023年間ベストが早くも決まってしまったかもしれない。
写真や動画越しにも伝わる、この重厚感。風格。
圧倒的「ホンモノ」感。
やはり、プロ野球のユニフォームはこうでなくてはならない。
公式のリリースにもある通り、プロならではの「品格を体現する」のが刺繍なのだ。
昇華プリントでは、いくらデザインが良くても表現できることは限られる。刺繍でしか表せないものがあるのだ。
今回のユニフォーム変更にイマイチピンと来ていないという人も多いだろう。
ホームユニフォームなど、パッと見ではほとんど変わっていない。
しかし、この変化がいかに大きなものであるか、シーズンが始まればジワジワと感じててもらえるようになるに違いないと信じている。
ビジターユニ刷新
ホームユニは維持しながらビジターユニを細かく変える、という元々ある流れに沿う形だが、歴代でも割と人気の高かった2020年からのモデルを僅か3シーズンで変更したのは少し意外だった。
特に「PINSTRIPE PRIDE」というコンセプトに基づいてあしらわれていたピンストライプを廃止したことは、結構大きな決断だったのではないだろうか。
SNS上ではそれに対してはっきり異を唱える声も多く目にする。
佐々木朗希が完全試合を達成した時のユニフォームということもあって、愛着を抱いていたファンも多いのだろう。
ただ、個人的な感覚で言えば、「上だけピンストライプ」というのはいかにも頭で考えたコンセプト然とした感じがして、正直言ってあまり好みではなかった。
それ故、切り返しなどの余計なデザインも廃したシンプルな黒シャツとなった今回新ユニに対しては、かなり好意的に見ている。
また、フルネームの「Marines」ロゴも廃止となった。
ホームは左胸に「M」、ビジターは全胸に「Marines」というのが長らく定番スタイルだったが、これも大きな決断。
おそらく、刺繍で大きく全胸ロゴをあしらうとなると、昇華プリント時代を知る選手たちへ大きな違和感を与えてしまいかねない、という配慮からこうなったのだろう。
ロゴのサイズを小さく済ますことで、刺繍ながら一定の軽量化を見込むことができるのだ。
美しい「Marines」ロゴが見れなくなってしまうのは少し寂しい気もするが、そもそもビジターユニにニックネームを載せるということ自体がある意味イレギュラーなことなのだから、と考えて気持ちの落とし所としよう。
袖ライン、パンツ脇ラインとして新たに取り入れられた「黒＋白＋グレー」の3本ラインも非常に気が利いている。
「勝利への挑戦・勝利の熱狂・勝利の結束」という球団理念を表現した「BELIEF LINE」というものらしいが、コンセプト臭さがなく普通にデザインとして優秀なあたりが好ましい。
それぞれのユニフォームに対し、コンセプトに基づいた統一感を演出する装置として非常に秀逸なのである。
「こういうのでいいんだよ」とはよく言うが、このためにある言葉なのではないだろうか。
典型的な「こういうのでいいんだよ」だと思う。
このように、ピンストライプ廃止、左胸ロゴ、グレーライン追加、と変更により、シカゴ・ホワイトソックスのオルタネートユニフォームにかなり似るという結果となった。
よりによって、ホワイトソックスへの所属経験のある井口監督退任直後にこのような形になるとは、という感じではあるが…
ただ、私としては、どちらかといえばロッテが2010〜2013年に使用していたモデルを思い浮かべたい。
NPBのユニフォームはNPBのユニフォームで語ろう。
切り返しやパイピングラインなど、2000〜2010年代的な要素盛り沢山であったこのユニフォームを2020年代ナイズドした、という見方が一番しっくり来る。ホワイトソックス云々はあくまで結果論。
このユニフォームといえば、やはり連想するのは2010年の下克上日本一。今のチームにもピッタリではないだろうか。
デザイン良し、縁起良し、ストーリー性良し。何もかも良し。
因みに、帽子のデザインも変更され、ホームと共通となった。
これも私が以前言及していたことで、非常に満足している。
CLMユニフォーム
昨年、新ALL FOR CHIBAユニフォームとして発表され、そこそこ話題を呼んだグレーユニが「CLMユニフォーム」という名称に改められた。
今のところ、どのような形で運用していくのかははっきりしていないが、おそらく昨年までのALL FOR CHIBAと同じく特定の日を着用デーとしたイベントユニフォームのような形になるのだろう。
個人的には、このような形でホーム・ビジターと並べて発表するからには、そういう特別ユニフォームというよりもMLB式のオルタネートユニフォームのような（2000年代の誠ユニ、侍ユニみたいな）感じで着用してもらいたいのだが、それはともかくとして。
デザイン的には昨年からは大きくは変わらず。
ボタンがグレーから黒に変わったことと、ビジターユニと同様に「BELIEF LINE」があしらわれていることくらいだろう。
色違いボタンといえば、2022年までの中日のユニフォームを連想するが、青と白だった中日に対して、グレーと黒となっている今回のCLMユニはさほど悪目立ちせず、程よいアクセントとして効いているように感じる。
綱島理友先生が「上と下で間違えて着ているよう」とコメントされた、この上グレー＋下ホワイトという地味に奇妙なユニフォームだが、見慣れてくると結構スッキリした印象で、何ならお洒落にすら見えてくるから不思議だ。
背番号が白というのが地味に結構効いているように思う。
誠に勝手ながらこのCLMユニこそがNPBにおけるグレーユニ復権のキーマンになるような気がしており、非常に期待している（何様）。
背番号・胸番号・背ネームの書体変更
ここまで色々と言ってきたが、今回の新ユニフォームが総じて好印象である1番の要因がこの背番号・胸番号・背ネームの書体変更なのではないかと思う。
とにかく見やすい。
公式のリリースには「背番号と背ネームのフォントも本来のオリジナルのものから文字の空間を広くして、視認性を高め、全体的にシャープな印象に変更」とあるが、すごくいい。とてもいい。
「こういうのでいいんだよ」とはよく言うが、このためにある言葉なのではないだろうか（2回目）。
番号フォントは、おそらく旧モデルのものから「セリフ」部分を削ったような形で作成されたものだろうと見受けられる。
背ネームはMLBでも広く使われているタイプに近いブロック体。
見やすさと、少しのオリジナリティ。
こういうのでいいんだよ。
NPBにはこういうのを見習って欲しい球団がいくつもある。
広島さん、横浜さん、あなたのことですよ。
左袖プライマリーマーク廃止
ここまで散々褒めそやしてきたロッテの2023年新ユニフォームだが、最後の最後でかなり大きな残念ポイントに目を向けていきたい。
プライマリーマーク（カモメマーク）をなくしてしまうというのはいかがなものだろう。
それもスポンサー広告のために。
スポンサーが大事なのは理解できる。
別に広告をつけるなとは言わない。
今回新しくユニフォームスポンサーとなった「ちば興銀」とは非常に長い付き合いをしてきたようであり、だからこそそれなりの待遇をというのもわかる。
ただ、だからと言ってチームの象徴を退かさせてしまうのはどうかと思う。
それも1995年からずっと左袖にあったものを、だ。
これまで以上に「理屈ではなく感覚・感情の問題」なのでそんなに強くは言えないが、ロッテファンではない私としてもあまり気持ちの良いものではない。控えめに言って大事件だ。
おそらく私がロッテファンだったら、烈火の如く怒り暴れ回っていたに違いない。
どうにかしてカモメを残す道は考えられなかったのだろうか。
しかも、右胸の「ガンホー」は据置きと来た。
ちば興銀が新しくスポンサー広告を出すというニュースが事前に出ていたので、てっきりユニフォームスポンサー“交代”なのだと勝手に思っていたのだが、ガンホーはそのままに広告が“追加”されるというまさかの形に。
独立リーグみたい、とまでは流石に言わないが、やはりこうもゴテゴテとされてしまうとゲンナリするのが正直なところ。
元々今のガンホーのようなタイプの広告は好きじゃないのに…
はっきり言って、どれだけユニフォームのデザインが良くても、そこに無遠慮かつ無神経にベタベタと広告を貼られてしまうと、それだけ魅力度はガタ落ちだ。
企業の皆さんも、そのチームのためを思う気持ちが少しでもあるのであれば、もう少し配慮していただけるとありがたい（素人が偉そうにすみません）。
その他気になった部分
●ビジターはやっぱり上下グレーが良かった
上記のように基本的には好印象なユニフォームだったが、より理想を追い求めるのであれば、出来ればビジターユニは上下グレーにして欲しかった。
黒シャツのままにするなら、せめてパンツだけでもグレーにしてもらいたかった。
刺繍復活の衝撃＆興奮があまりに大きかったせいで、正直ちょっと忘れていた部分ではあるのだが、冷静になって考えるとやはり残念な気持ちが沸々と。
ゲン担ぎという意味では、黒シャツ＋白パンツという組み合わせの方が良いことは重々承知の上だが、あくまでユニフォームオタクの立場から言わせてもらうならば、ビジターは上下グレーが理想なのである。
白・黒・グレーがチームカラーであることを考慮すれば尚更。新しいコンセプトに照らしても、「白＝ホーム、グレー＝ビジター、黒＝サード」でも良かったんじゃないかなと思う。
●帽子マークはもうちょいスッキリめがいい
常々言っているのだが、帽子マークはもう少しスッキリしてて欲しい。
ロッテの帽子マークは白字の「M」に黒フチ、その上から白フチという具合に二重構造の仕様になっているのだが、個人的にはこの二重構造がボテっとした野暮ったい印象もあり少々くどい。
特に、現行の'47によるデザインはかなり腫れぼったい。
『理想のユニフォーム』でも取り上げたように、明徳義塾高校の「M」マークがちょうどいい塩梅なので、それをぜひ逆輸入してもらいたいのだが…
●「BELIEF LINE」に物申す
先ほどは「コンセプト臭さがなくてデザインとして優秀」「統一感の演出装置としても秀逸」と称したが、めちゃくちゃ細かいことを言えば少しばかり不満点もある（同じ項目に書くとごちゃっとしてしまいそうだったのでこのように分けて書くこととした）。
一体何のことかというと、パンツ脇ラインとしてはともかく袖ラインとしては若干の野暮ったさが否めない点。
黒のビジユニに黒のラインは要らないのでは。
グレーのCLMユニにグレーのラインは要らないのでは。
ビジユニは「白＋グレー」、CLMユニは「白＋黒」とした方がまとまりがあって良かった気がする。
最後に
まさかの刺繍復活という激アツトピックが、今後のNPBのユニフォームシーンにどれだけ影響をもたらすことができるか、というのが目下最大の関心事となるだろう。
今回のコレが如何にすごいことなのか、というのがどれだけ伝わっているのかなぁ、そもそも伝わるのかなぁ、という不安もあるのが正直なところだが…
とにかく典型的な「こういうのでいいんだよ」なユニフォーム。
プライマリーマークやスポンサー広告周りの事情が少し気になるところだが、やはりそれを補ってあまりある刺繍復活のインパクトたるや、という話だ。
刺繍復活で+150点。
プライマリーマーク廃止＆広告ごちゃごちゃ問題で-50点。
その他もろもろ計算に入れると、大体93、4点は出ているのではないだろうか。
別に採点制で評価している訳ではないので特に意味のある数字ではないが、感覚的な話として。
以上、『ロッテ 2023年新ユニフォーム 〜典型的な“こういうのでいいんだよ”〜』でした。ありがとうございました。
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