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もしも[デジタル日本円]が発行されたら我々の生活はどう変わるのか

EUがLibraに対して警戒心を高めているようだ。また、日本も遅れをとりながらも、日本銀行が決済機構局決済システム課に「デジタル通貨グループ」を設置した。

今後加速していくかもしれないデジタル通貨。もしもデジタル日本円が発行されたら、我々の生活にどのような影響を与えるのかを考えてみた。

まずはここで言うデジタル日本円が一体何なのかの定義と、前提情報をインプットしたいと思います。

定義
デジタル日本円 → 中央銀行デジタル通貨(CBDC)
つまり、日本銀行が発行するデジタル通貨であり、お金としての価値が保証されたデジタル化された日本円となるということ
デジタル通貨前提情報
今はやりのキャッシュレスとは根本的にモノが異なります。
○○Payはお金じゃない ←過去noteご覧ください。
なので、○○Payや電子マネー(SuicaやPASMO)とは別物です。
デジタル通貨前提情報2
米Facebookを中心に開発が進められているLibra。こちらとも別物です。
Libraもデジタル通貨であり、ブロックチェインという技術を採用している点では同じなのですが、アメリカの中央銀行が発行する通貨ではありません。極論すると、一民間企業(団体)が勝手に発行している通貨です。

▼こちらのnoteも合わせてご覧ください▼


もしも[デジタル日本円]が発行されたら我々の生活はどう変わるのか

ダイナミックにドラえもんの未来のような生活にはならない、と私は考えている。

なぜならば、既に○○Payや電子マネー、クレジットカードなど、あらゆる電子決済手段が準備されており、その利用も徐々に広がってきている。そのため、デジタル日本円は裏方の仕組みとなり、フロントの決済や送金においては従来通りの○○Payや電子マネー、クレジットカードが担うことになるのではないかと思っている。要は日銀が独自の小口決済システムを提供することはない。

つまり日本銀行から発行されたデジタル日本円は、従来通り各銀行へ配布が行われて、各銀行を通じて個人や企業の口座の中に振り込まれたのちに、○○Payや電子マネーにチャージされたり、クレジットカード決済金が引き落とされたりするようになる。

我々ユーザは、裏側でどのようなシステムでお金のデータが流れている事なんて気にすることなく、今も生活を送っている。最終、手元に現金があるのか、スマホの中にチャージされているのか、と言う点において大差は無いと私は思っているからだ。

もちろんメリットも多いことは確かだとは思う。現金のハンドリングコストはなくなるし、いちいちATMに並ぶ必要もない、瞬時にお金を送金できる、お金の移動が全てデータ化されるので各種手続きも簡略化される、脱税の防止にもつながる。

ではあるが、個人の普段の生活のQOLが上がるかどうかと聞かれると、そこは疑問符がつくかもしれない。(今と大差はないのでは、という意味で)

◇ ◇ ◇

一方で、導入期・普及期においてはデメリットというか、デジタル格差が露呈されていくのではないかと私は思っている。

現金が無くなってしまうということは、デジタル日本円という個人に紐づいたデータを、オンラインで個々人が管理しなくてはならないということ。

これまでは紙の通帳と現金が目の前にあったので、それに記帳して手元で勘定すれば良かった。しかし、デジタル日本円は目に見えないし、手元で幾ら残っているのか勘定ができない。常にデジタルデバイスか何かが必要となる。

パソコンは常に持ち歩くのには不便だから、スマートフォンのような常に携帯できる何かが無いと、勘定どころか支払いすらままならない。今のスマートデバイスの日本における普及率はどうか。伸びてはいるものの、100%の世帯で保有しているということは無い。

スマートフォンでなくても、電子マネーやクレジットカードの類でも決済処理をすることは可能だが、今お財布の中に幾ら残っているか?という目視での手元資金の確認には課題が残ると思う。

つまり持てる者・持たざる者、使える者・使えない者の間でデジタル強者・弱者による、格差が生まれるということ。強者はデジタル日本円を使いこなしより便利な生活を作れ、弱者は四苦八苦して現金残高の確認すらままならない。そんな光景が思い浮かぶ。

▼銀行の通帳有料化に関するnoteはこちら▼
みずほ銀行通帳有料化から見える銀行の憂い

◇ ◇ ◇

また良くも悪くも、デジタル日本円はお金の移動を全て把握できてしまうという点も忘れてはならない。

お金の移動が見えるということは、脱税ができなくなるということ。善良な納税者としては、喜ばしいことだと思います。しかし、一方では我々国民の経済活動が丸裸にされているということでもあります。

これまでは銀行からいくら下ろそうが、現金で支払ってしまえば、どこで何を買ったか?何に使ったか?を追跡するこは不可能でしたが、全てデジタルなやり取りとなってしまうと、例えば私けいえすが歌舞伎町のキャバクラに行って一晩で100万円もつかっている、ということが筒抜けになってしまうということ。

今だってPayPayやクレジットカードを使えば、事業者に筒抜けになっていますが、今度はこれが日銀さらには政府の管理下(監視下)に入るということです。(もちろん、今後ルール整備の中でどこまでの情報を誰が閲覧できることになるのかが決まっていくのだとは思います。)

日本人はやたらと個人情報の云々という言葉を使いたがりますが、デジタル日本円こそが守るべき個人情報であって、Suicaデータという超ビッグデータの活用を阻害したのはどうかと思っています。この程度で騒ぐのであれば、デジタル日本円の検討開始した段階で騒いでもらいたいものです。

◇ ◇ ◇

変革には苦痛や不便がつきものだと思う。

iPhoneだって初めの頃は、タッチパネルはなんて使い勝手の悪い代物だ、やっぱりボタンが無いと不便だね、なんてことを13年前は口々にしていたと思う。しかし今となっては、我々の生活には無くてはならないものとなっている。

同じように、デジタル日本円は最初は紙幣やコインが無くて、戸惑う人や文句をぶちまける人で溢れるだろう。ですが、きっと何年かすれば紙幣やコインを持ち歩いていたことが懐かしくなるはずだ。

既に中国では一部の都市で実証実験が始まっています。来年以降本格化すると言われているので、まずはその動きも注視していきたいと思います。

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