みずほ銀行通帳有料化から見える銀行の憂い

みずほ銀行が紙の通帳を有料化するニュースが本日リリースされていましたが、ほうぼうで様々な反響を呼んでいるようです。

 みずほ銀行は2021年1月から、70歳未満の顧客が新しく口座を開く際に通帳の発行を希望した場合、1冊あたり1100円(税込み)の手数料をとる。大手行で通帳発行手数料を導入するのは初めて。同時にスマートフォンなどで見られる「デジタル通帳」の提供を始め、紙からデジタルへの移行を促し、業務の効率化を図る。 
 新規の口座開設時だけでなく、その後も通帳を繰り越して追加の発行を受ける場合は同額の手数料がかかる。
 すでに口座を持っている顧客は有料化の対象外で、今後も繰り越し時には無料で通帳を受け取れる。毎年1月末時点で1年間以上記帳がない通帳は、自動的にデジタルに移行するが、その後に紙の通帳を希望する場合は無料で提供される。
 70歳以上の顧客も、スマートフォンの利用率が低いことなどを考慮し、紙の通帳が無料で配られる。

銀行が通帳を廃止したい理由

①1口座あたり毎年200円の税金がかかる

このニュースで初めて知りました。

紙の通帳は印紙税法で「課税文書」と位置づけられており、1口座あたり毎年200円の税がかかるそうです。それに対して、新しいデジタル通帳にはこれがかかりません。

例えば、三菱UFJ銀行には約4000万の口座があり、単純に計算すれば、80億円近くの税金を国に払っている。顧客に負担は求めていない。紙からデジタル通帳への乗り換えが進めば、今後支払う税負担は減ることになります。

ただし、この印紙税の課税対象銀行はいわゆるメガバンクが中心で、信用金庫、信用組合、農業協同組合などの比較的規模の小さな金融機関には課税されないようです。

②デジタル化を加速させたい

通帳そのものを廃止したところで、直接デジタル化につながるわけではありません。

いわゆるフィンテックの領域において、銀行はベンチャー企業にエンドユーザに近い金融サービスを食われてしまっている現状があります。

PayPayなどのキャッシュレスサービスにおいて、PayPayは消費者の消費行動は全て把握できているけど、銀行は抑えられていません。

さらにキャッシュレスサービスの利用が加速すると、中国のAlipayやWechatPayのように、個人のスコアリングによる少額貸付サービスをはじめとする、お金にまつわるありとあらゆる個人向けサービスをフィンテック企業に根こそぎ持っていかれてしまうでしょう。

銀行も今さらではありますが、自分たちの主戦場であった金融サービスにおいて、新興企業に市場を食われ始めてしまっているので、ここ数年迷走が続いている印象です。

ただ、指を咥えていても何も始まらないので、まずは自社のこれまで当たり前であったサービスを当たり前にさせず、正当なコストをユーザにも請求し、その上でより良いサービスを提供しようということなのでしょうか。

いずれにしても、やっとこの2,3年の中で、銀行も重い腰を上げて自らの改革に乗り出していこうとしているのでしょう。

中国のスマホ決済や、キャッシュレスなどについての記事です。合わせてご覧ください。

▼日本にもやっと来た、スーパーアプリの波とは?

▼[図解]QRコード決済と全銀とCAFIS

世の中の反応

Twitterを見ているとその評価は二分している印象です。

たしかに1,000円は取りすぎかもしれない。

この意見もごもっとも。個人の口座履歴管理を無料でやっていましたからね。従来銀行の出発点として、お金を多くの人から預け入れしてもらって、そのお金を運用して、上がった利益を利息として分配していた。けれども、使われていない口座も多くあるし、従来のやり方ではもうからなくなっているのも事実としてある。

銀行が一足飛びにデジタル対応したところで、現実問題困る人も多そうですね。ただ、このあたりも追随してオンラインデータでOKになるのではないでしょうか。

またみずほ銀行のデジタル通帳は、現状3か月分しか過去データを見れないそうですが、今後10年間はアーカイブするようです。それ以上さかのぼろうとするとどうすかは疑問のままです。

3rdベンダーによる、銀行口座のアーカイブサービスとかが新たに出てきそうですね。個人まつわるデジタルデータが膨れ上がった先には、ポータブルデータサービスや、情報銀行へと繋がっていくだろうと思います。

他行の動き

三井住友銀行は既に終了してしまいましたが、Web通帳へ移行すると抽選で2,000円が当たるキャンペーンを8月31日まで展開していました。

みずほ銀行と違って、特典を与えることでWeb通帳への移行を促していたようです。CMでは見かけましたが、そこまで大きく話題として取り上げられることもあまりなかったですね。

三菱UFJも同様のキャンペーンを展開していました。

まとめ

確かに銀行との関係は薄れてきていて、私の中では給料が振り込まれるだけの印象です。あとはひたすらPayPayにチャージして、必要最低限な現金だけ下ろしておくだけ。以前はATMが街中にどれだけあって、振込手数料が安いかどうかが銀行口座開設の決め手であったかと思いますが、もはや比較項目にならなくなってきていることがわかります。

今後は銀行マンの方に、このあたりのリアルな危機感みたいなものをインタビューしたいと思います。

この記事が参加している募集

習慣にしていること

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?