見出し画像

IT人材不足とリテラシーの問題

IT人材の争奪戦が官民を超えて激しくなりそうだ。

日経新聞の記事によると、東京都が新卒向けの採用職種に「ICT」(情報通信技術)を新設したようです。宮坂副都知事の働きかけによるものだと思いますが、東京都ですらやっと新設したということなので、他の自治体も今後追随していくのだろうと予想されます。今さら感も否めませんが、ようやく自治体も人材確保に動き出しています。

世界の都市から後れをとる日本

さらにこの記事に興味深いデータも掲載されていました。世界の都市と東京のIT部門職員数の比較です。一目でわかる通り、圧倒的な人材の少なさが顕著に出ています。

シンガポールは圧倒的な数の人材を確保しており抜きんでているものの、どの都市も概ね割合で見ると1%を超える水準となっています。宮坂副都知事も「ICT人材を一千人規模を目指す」と記事の中でコメントされています。

素晴らしい意気込みだと思いますし、どんどんと積極採用をすすめてもらいたいと思っています。しかし、官だけではなく民においても高度なIT人材の争奪戦は以前より起きており、そう簡単には人材の確保を進めるのは難しい状況にあると思っています。

事実、私が実際に担当しているユーザ企業においても、システム部門の人員は毎年増え続けている傾向にあります。新卒・中途採用にかかわらず、ほとんどの企業で同じ状況にあるのではないでしょうか。

一方で、一部の企業では彼らはIT専門社員として採用されているわけですが、いわゆる総合職として入社しIT部門に配属となっている人たちよりも立場が少し下にあるようにも感じています。私の担当している企業固有の問題なのかもしれませんが、どうしても一歩引いている感じを受けます。まだまだ日本企業では総合職が絶対的地位にあり、IT人材がヒエラルキートップランカーに到達できていないのが実態なのかもしれません。

つまりまだまだ日本企業においては、現場の人間や現場を経験したことがある社員が強く、これまで裏方であったIT人材が表舞台に立てていないということなのかもしれません。

IT企業の高度な人材確保に向けて

IT企業各社も人材確保に向けて高額報酬を提示しています。しかし、記事を見てもらえれば分かると思いますが、「高度なIT人材」が前提となっています。各社定義は微妙に異なるのですが、AIやクラウド、セキュリティーをはじめとする先端技術において、高い専門知識や技術力をもった人材を対象としています。明確な線引きは無いのですが、毎年何百人も採用できるような人材ではないことは確かでしょう。

「高度なIT人材」でなくとも、IT人材は引っ張りだこの状況は続いており、商談やプロジェクトを始めるにしても、まずは人員確保の見通しを立てることが最近では先決です。せっかく獲れる確度の高い商談であっても、人員確保ができずに商談辞退をせざるを得ない、ということも最近ではよくある話となってきています。

なので以前よりも、商談ステージが一つ進むごとに人員確保に向けての社内外の調整が営業の意識すべきアクションの一つとなってきています。

それでも足りないIT人材、どうするのか

以前のnoteでも掲示した図となりますが、そもそもIT人材がアメリカと比べて日本は少ない水準にあるということが分かるかと思います。また、その少ない人材もITベンダーに偏ってしまっているので、ユーザ企業はベンダーに放り投げざるを得ない、そんな状況が常態化しているのが日本です。

ですがこれは私自身の経験からも言えることなのですが、ITベンダーに開発を委託することは決して悪いことではなく、ユーザ企業のITリテラシーの方に問題があると思っています。結局何か大きな問題が起きた際によくある原因の一つとして、双方の認識不一致がありますが、これはユーザ企業とベンダー間で共通言語を使い共通認識を持つことができなかったということになります。

先日の東京証券取引所の記者会見が非常に話題になっていたかと思います。その中で非常にCIOがシステムの中身を良く分かっている!ということで賞賛する声が多くありました。しかし、発生した障害そのものは我々ベンダーから見ると大したものではなく、そこまで難しい内容を説明をしていたようには思えません。(対応力は素晴らしかったです!もちろん。)

東証のトラブルは東証と富士通側できちんと同じリテラシーのもと、共通言語で共通認識を持てていた。これが富士通側の調査報告内容が、東証にとって宇宙語に聞こえてしまっていたら、とんでもない記者会見になっていたでしょう。

つまり、リテラシーがあればIT人材の第一段階は突破出来ているものだと思っています。全ての人がコードを書ける必要も無いし、AIのチューニングをできる必要もありません。全ての基本は日本語力であり、読み解く力とロジックを理解する力と説明できる力が必要になると思っています。

もちろん手に職があるに越したことはありませんが、リテラシーを高めることで人材不足解消にも近づくし、ユーザ企業・ベンダーお互いの不幸も無くなってくのではないでしょうか。

数年前から小学校でもパソコン授業(プログラミング授業?)が始まっていますが、あまり意味の無いものだと思っていて、パソコンに慣れ親しむものなだけです。上述した通り、IT人材を増やすのにパソコン教育ではなく、読み解く力とロジックを理解する力と説明できる力だと思っています。これまで通り国語と算数に加え、プレゼン(発表)の授業の方が効くと、個人的には思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?