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ANA Payは起死回生の一手となり得るか

 昨日の日経新聞で、航空会社のANA全日空とクレジットカード大手のJCBが提携し、新たにANA Payというサービス名称でQRコード決済事業に参入するというニュースがありました。

 新型コロナウィルスの影響で旅客需要が大きく落ち込む中、ANAは航空需要に左右されない事業の育成ということで、マイルやクレジットカード会員などの顧客データを活用した事業を広げていく考えのようです。

 果たしてこのANA Payは、ANAの起死回生の一手となり得るのか?サービスの内容を探りつつ、今後の拡大可能性を考えてみたいと思います。

ANA Payの特徴

ANA Payの特徴としては以下の3点となります。

①ANAのマイルが貯まる
②SmartCode加盟店で使える
③JCB/ANA発行のクレジットカードに対応

①ANAのマイルが貯まる

 ANA Payの決済及びチャージで、ANAのマイルが貯まるようです。200円の決済毎に1マイルが付与されます。

②SmartCode加盟店で使える

 JCBが提供するSmartCode加盟店で利用できるようになります。つまり、PayPayやLINE PAYなど既存プレイヤーが加盟店を拡げつつありますが、ゼロからの加盟店開拓ではなく、既に敷かれている加盟店網に乗っかるということになるようです。

 これは非常に賢い選択で、ゼロから加盟店開拓するような戦略であったら、100%破綻するプロジェクトであったでしょう。

 SmartCodeとはJCBの提供している決済に関するサービスとなります。これまでもPayPayなど、資本力のある決済事業者は独自に加盟店開拓を人海戦術で行ってきました。しかし、SmartCodeに乗っかることで、わざわざ営業しなくともSmartCode加盟店で自社のQRコード決済を使えるようになります。

 また、加盟店契約を一括で代行してもらえます。これまで加盟店は、PayPayやLINE PAYなど導入したいQRコード決済サービスを個々に契約締結する必要がありました。SmartCode(JCB)と契約することで、提携決済サービスを一括で使えるようになります。

 現在SmartCodeはローソンやドラッグストアや東急ストアなど、それなりの加盟店を獲得しているようですが、PayPayやLINE Payと比べるとまだまだ広がりの余地はありそうです。また、提携している決済サービス事業者は、LINE Payとau Payは提携しているようですが、他の提携事業者はどこも弱小(失礼!)事業者ばかりなので、加盟店側としたらPayPayも取り込んで貰いたいところでしょうか。

③JCB/ANA発行のクレジットカードに対応

 JCBもしくはANAカードからのチャージが可能なようです。銀行からのチャージ可否や、マイルは支払いに使えるのかどうか?詳細はまだまだ明らかにはなっていません。

ANA Payは起死回生の一手となり得るか

 先日のANAホールディングスの決算説明会資料では、ANA Payについて直接的に触れられておりませんでしたが、顧客データの活用についての説明スライドがありました。

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https://www.ana.co.jp/group/investors/data/kessan/pdf/2021_10_1.pdf

 ANAのマイル会員は全体として、グレードの高い顧客層を持っていると思われるので、顧客データという意味では超優良な会員基盤であると言えます。

 しかし、果たしてQRコード決済サービスが顧客基盤を活かした新事業かと言われると、新しいサービスかもしれませんが、新たに収益を生み出すサービスであるとは言えないと考えています。既にクレジットカードという決済サービスを持っており、QRコード決済にしたからと言って、みんながこぞって使うとは考えられません。

 また短期的な目線にはなりますが、このコロナ禍においてANAのマイルは魅力的なポイントプログラムではない、という点においても新規の顧客獲得はなかなか難しいのではないでしょうか。

 楽天やLINEといった生活に密着しているサービスとの横連携は非常に有効ではありますが、旅客事業という非日常のサービスとなるので、その恩恵というのはなかなか感じずらい、という点でも相性が良いとは決して言えないでしょう。

 しかし、単純にクレジットカードという物理的なものを無くして、スマホ内で完結できるサービスに置き換えた、と考えると接触が減らせるので多少のユーザメリットはあるのではないかと思います。ですが、それぐらいしかユーザ的なメリットは現状においては見当たらないということです。

 クレジットカードよりもQRコード決済の方が少額決済においては使われやすい、という事実は間違いなくあるので、起死回生の一手となるのかどうかは、いかに既存ユーザの少額決済のというパイを取りに行けるかどうかにかかっているのだと思います。



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