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【部長の考察】サービスロボットのフレームワーク

こんにちは、キングソフト株式会社の吉田です。

ここ最近、ユーザー目線での投稿が多くなってきたので、たまには事業者側目線で私たちが今まさに取り組んでいる”ロボット事業”についてのフレームワークを投稿してみようかと思います。

今回は『当社のロボット事業として』ではなく、なるべく一般的な事業者目線で考察を実施してみます。

ロボットのPEST分析

一般的にPEST分析とは、事業に関わる外部環境について俯瞰して分析していくフレームワークです。

・政治的要因
・経済的要因
・社会的要因
・技術的要因

上記4つの視点で社会全体の動向を把握して、サービスロボットのビジネス展開について、その機会や脅威の洗い出しを行っていきます。

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政治的要因で特筆すべき点として、世界に先駆けて日本ではロボットを用いてサービスを提供するロボットサービスプロバイダーが行うべき安全な管理や運用に関する要求事項を体系化、標準化した【JIS Y 1001】を規格化したことだと私は考えています。

産業用ロボットで世界を牽引した日本が、ロボットのサービスプロバイダーに対しての規格を策定したことで、メーカー育成だけでなく流通業者の自己育成を促した点は、「ロボットの生産地域・国に拘らず、ロボットの普及にポジティブな姿勢をとった」と受け取れます。

それに合わせるように、電波法の見直しであったり、医療分野でのロボット活用を関連法案の一部改正などで後押しする姿勢を作っていると考えられます。もちろん、私自身としてはまだまだロボット普及に対しての法規制や制度の壁など問題は山積している印象を持っていますが、いずれにせよサービスロボットの普及に向けての政治的後押しは継続すると考えられます。

経済的要因と社会的要因に関しては、従来の課題である少子高齢化の加速に加えて、『ポストコロナ』『ウィズコロナ』の影響による非接触需要の拡大などもあり、ロボットを取り巻く経済状況は概ねポジティブなことが見て取れます。

また、技術的な側面でもインターネット接続回線の高度化を筆頭にSIerの育成やスキル一定化に向けて環境が整ってきていると考えられます。

以上のことからPEST分析としては「ロボット事業の未来は当面明るい」と結論付けられるでしょう。

ロボットの3C分析

通常、3C分析は顧客や市場(Consumer)と競合(Competitor)、自社(Company)の3つの観点から自社の経営環境について分析する手法です。

ここでは自社(Company)をロボット業界に置き換え、競合(Competitor)をロボット以外の製品に置き換えて考えてみたいと思います。

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まず、市場についてはサービスロボットの活動領域となる『サービス産業』としました。

実は、一口に「サービスロボット」と言ってもロボットならではの拡張性を鑑みると、市場はどこにでもあり、ニーズに合わせて拡張させていくことが可能であると断言できます。しかしながら今回は『サービス産業』を主戦場と考え3C分析を進めます。

サービス産業全体の2020年時点の全体市場規模は28兆円弱あり、微増ながら堅調な状態と言えます。そして、サービスロボットのカバー範囲として『非接触』『サービス品質の一定化』『汎用性と拡張性』をキーワードに考えると、競合するサービス・製品として、飲食店におけるタブレットなどで行う注文管理システムや受付から席誘導などのサービスを行う受付システムなどが挙げられます。

ロボットにとってプラス材料となるのは、競合製品群にはないサービス拡張性であると思います。

また、ロボットを単なる機械製品としてではなく、一つの新たなサービスとして考えると、機械製品にはない可愛らしさなどの『非デバイス性』も競合製品にはないポジティブな材料となるのではないでしょうか。

一方でマイナス材料となるのは、単価と専門性です。

ロボットは、注文管理システムや受付システムと比較すると、やはりどうしても単価は高くなってしまいます。そのため導入しやすい販売形態でカバーすることが重要であると考えられます。また、注文システムなどのように何らかの専門性を有したサービス(注文タブレット等)比べると、ロボットはまだまだ利用する人にとって難解な部分があると自覚しています。したがって理解が容易いUI・UX設計を追求することも重要でしょう。

ロボットのSWOT分析

前述の3C分析で近しいテーマでもありましたが、改めてSWOT分析で強みと弱みを整理してみます。

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ロボット製品とその他のデバイス製品と比較する際に、価格面・拡張性・非接触性と言ったキーワードが重要な考察ポイントになるでしょう。

ただ、拮抗しているそれらの良し悪しを凌駕できる差をロボットは持ち合わせていると私は思っています。

それは「非デバイス性」です。

人は機械を使用している時にうまく動かないと非常にイライラしてしまうものです。それが人型に近いロボットになればなるほど「可愛らしさ」に気持ちが変化していきます。

実際、当社のロボットの実証運用においても、飲食店の店内でロボットのために来店客が道を譲ったり、笑顔でロボットの作業を助けるなどと言った行動が多く見られます。これはロボットならではの強みと言えるでしょう。

このような状況をもとにSWOT分析をクロスして考察すると、以下のような方向性が導き出されます。

・(強み×機会)
拡張性(成長性)と非デバイス性で非接触サービスを可愛らしく演出し、労働人口の補完に寄与する。

・(強み×脅威)
圧倒的な非デバイス性で機械製品では到達できない優位性を獲得する。

・(弱み×機会)
価格優位性において弱みとなる部分を、行政などの主導する非接触サービス助成などの金額補填施策を網羅する。

・(弱み×脅威)
汎用性・拡張性が売りのロボットではありますが、専門性を持ち合わせた特化型サービスロボットとネット環境に左右されないPKG性を確立した製品の開発も進行する。

ロボットの4P分析

これまで行ってきた3つの分析に、ターゲットをサービス産業における小売・飲食業界にターゲットを定めて、さらにビジネス成果の実現のために、我々サービスロボットプロバイダがハンドリングできるマーケティング要素を考察していきたいと思います。

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私の考える4P分析では図のような形になりますが、技術・ニーズの変容に伴って刻々と変化していくことは想像に難しくありません。

前述したようにターゲットである『小売・飲食』の場合、店頭の従業員や利用客が取る行動には一定の決め事があり、まずは配膳や下げ膳などの単純化できる領域の業務について、ロボットでサービス提供していくことを想定しています。その上で、価格に関しては当該業務を担う現状の人件費よりも下回る提供価格を実現する必要があると考えております。

しかし、これはあくまで『人の置き換え』ではなく、既存の従業員のサポートといったニュアンスです。一部の単純業務をロボットに任せることで、人手不足の解消に貢献したり、スタッフのサポートを行うことこそが、私の思い描くロボットとの共存の形であり、実務のサポート+店舗の顧客単価向上といった目線でロボットが導入してもらえる価格を導いていく必要があると考えています。

流通に関しては、やはりロボットの拡張性なり汎用性をよく理解している、自社の社員による直販体制が一番先に立つと考えています。そこで得た知見や事例をもとに、一般的な販売代理店様に大きな拡販を担っていただく段階があり、最終的にはSIerのような他ITシステムとの連携を含めたサービスの拡充と販売を同時進行するフェーズが訪れると考えています。

こうした未来を見据えた際にロールモデルの創出は絶対であり、そのモデルを元としたオープンイノベーションの活性化を起こし、業界全体でロボット活用の提案を続けていく必要があると考えております。

ロールモデルになりませんか?

というわけで、実証実験にご協力いただける企業様、大募集中です!

実はまさに今、私たちAI・ロボット推進チームでは、稼働と分析を進めている真っ最中。現在、配膳型ロボット「Lanky Porter」の実証実験にご協力頂ける事業者様を募集しております!

配膳型ロボットのLanky Porterは、「配膳や下げ膳を実行する」ことと「入口から客席までお客様を誘導する」ことの2点をベースに実際の店舗で実証を行っていきたいと考えております。実証実験なので、もちろんお代を頂くようなことはありません。今後、ロボットを活用したサービス提供が浸透するであろうことを見据えて、ぜひこの機会にご協力頂けないでしょうか?

もし実証実験へのご協力、ご参加にご興味があるという事業者様がおられましたら、ぜひ下記よりお問い合わせ頂ければと思います。まずは詳細を聞いてみたいというお声も大歓迎です。ご連絡、お待ちいたしております!

https://biz.kingsoft.jp/ai/dl.html

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