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三点倒立『すべてはポーズでしかない』   の感想

作・演出/狩野瑞樹、森山千代(会場:すみだパークギャラリーささや )

ヨガ教室に通う男、本屋で働く女。一緒に住む二人は、ヨガの先生や本屋の店長、本屋の客などの周囲の人々と緩やかにつながっていくが風景は微かに変わっていき。

倉庫を改装した広い空間。中央に様々な種類の間接照明が置かれている。
暗闇の中登場人物たちはこの照明を操作をする。
真っ当な現代口語演劇で描くのは市井の人々の日常。日々生きていく中で重大な出来事は起こらないけれど、少し波紋を起こすようなことは起こる。
周囲に迷惑をかけるとはどういう視点で?生きづらい中で生きていくことでもし他人に迷惑をかけてしまうのだとしたら?
関係はないと思っていてもゆるやかに人間関係は繋がっていく。物語度は薄く、日常の中で人々が感じる何かを空気感で表現する。それを仕上げるための間接照明。光と闇の境を淡く照らす光によって、観客は安心してこの空気に身をまかすことができる。ダンスの幻想性も間接照明ならでは。それを破壊するかのような会場の巨大な搬入口を開いて外に出る演出も、あくまで日常を壊すことないバランスで存在する。役者はハケず片隅で待機するがそれもまるで生活。


三点倒立は今年、王子小劇場の若手発掘企画「見本市」に選出され『(なみだ)』を上演。現代口語演劇をベースに時空間を自由にひねったユーモラスな傑作で、是非ともこの劇団の本公演を見たいと思った。

後に、主宰の狩野がザジ・ズーのメンバーだと知りちょっとヤンチャな脚本はだからなのかなと思った。
そしたら現代口語演劇は一緒でも『なみだ』と違う、空気を揺蕩う演劇だった。

この作品は空気感から機微を感じ取る作品、もっと言うと空間芸術の色合いが強いので物語を追おうと思うと掴み所ない。
生きづらさが語られたり、テーマ性が顔を出すもそれが主軸になるわけではない。あくまで生活の一端に存在するだけだ。
個人的に、『なみだ』における“あの夜の出来事”のような強い軸があれば良かったなと思う。 上述したような軸はあるが、コシが弱い。でも、そもそもそういう物語を書こうとしていないのではないか。


この現代社会の見過ごされそうな感覚を今この場所に繋ぎ止める。

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