春の前田川02_双葉町_

震災前の福島にあった日常がなかったことになりませんように。写真集出版を応援しませんか。

私は今、「東日本大震災以前に福島県浜通りの日常を撮りためた、写真集を出版する」というクラウドファウンディングを応援しています。

挑戦しているのは須賀武継さん。職場のコーヒースタンドで出会った。ある日の午後3時ごろ、扉の外に目を向けていると、カメラを持って入ってきたお客様だ。

注文されたコーヒーを差し出しながら訪ねる。「写真お好きなんですか?」彼は、私の愛用機と同じ機種:PENTAXのカメラを持っていた。

「はい、一応写真家です」と返ってきたのでちょっと驚いた。彼くらいの世代は、カメラを趣味で持ち歩いている印象があったから。写真集を出版していたり、東京で個展をしたこともあるような方だった。

仕事での撮影を機に、プライベートでも福島県の浜通り地方を訪れるようになったらしい。もともとは風景や山岳写真を撮ることが多かったけれど、浜通りでの撮影では、人々の営みや文化を感じられる地域のお祭りなどを撮っているとのこと。

福島県は横に広く、山間部の会津地方、中央部の中通り地方、海に面している浜通り地方と地域が3つに分かれており、それぞれに気候や文化がかなり違っています。須賀さんは中通り出身。

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カメラに入ったままのデータ写真をのぞかせてもらう。見たことのない風景ばかりが切り取られていた。私がいつも暮らしているより少し南、浪江や川内村の写真だった。

もっと須賀さんの写真が見たくなってしまった。それが伝わったのか「プリントアウトしたものがありますよ」と車から、A4サイズくらいの写真の束を持ってきてくれた。

「実は・・・」と須賀さんが口を開く。私は夢中で写真を見ていた手を止めて話を聞く。

「震災前の写真をまとめた、写真集を出版したいと思っているんです」須賀さんはそう言った。

見たい気持ちに衝動がかられて、心が揺れた。

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私は、東日本大震災があって2年後に、生まれて初めて福島を訪れた。だから、震災前の福島の姿を知らない。

今、周りにいる人達は、いつだって前を向いていて、あの頃(震災前)のように元通りにしたいというよりは、新しく町や暮らしをつくるという気持ちが大きいと日々感じる。だから、過去の様子に興味をもつことはなかったように思う。

また、毎年3月11日が近づくと、マスメディアは関連するニュースを報道する。それらは、「被災地は今」といった感じで、あの日からどのように復興が進んでいるのかを伝えるものばかりで、それまでのことは、まるでなかったことのようになっている。そう感じるようになったのも、最近のことだ。

私は、震災のなかった福島を知らない。

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「出版の際はぜひ、応援させてください!!」と心の底から気持ちが声になって、飛び出していた。写真集の出版は、切実な願いになった。クラウドファウンディングのサポートをしている知人の紹介もした。

数カ月後、須賀さんから「写真集出版のためにクラウドファウンディングに挑戦します」と連絡をいただいたときは心底嬉しかった。

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出版予定の見本誌や掲載予定の写真を展示会に見に行った。
知らなかった福島に、ただそこにあった暮らしに、感動した。

大熊町の坂の下ダムの写真には心を奪われた。
ため池の周りに植わっている桜はとても鮮やかなピンク色。
釣りをしている人、ボートに乗る人、絵を描く人。
穏やかで、あたたかい、春の”ふつうの一日”。

その写真をみるまで、私の頭の中の「大熊町」は、包み隠さずいうと、福島原発のイメージがただただ漠然とあって、暮らしている人がいることもたくさんの人が働いていることも知っているけれど、どうしても生活のイメージがもてずにいた。工場などが立ち並ぶ、灰色っぽいイメージだった。

写真1枚で、イメージが塗り替わった。
生活をしている人たちの風景や色を知ったうえで、今の大熊町を思うようになった。

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マスメディアは強すぎる。いろんな情報が抜け落ちているにも関わらず、存在が大きすぎる。

被災をしていなければ、私のように、今でも”なんとなく”福島のあちこちに悲しい色やイメージを持っている人が少なくないと思う。

だからこそ、この写真集は出版されてほしい。
ちゃんとあった生活を、残して伝えるために。

100枚もの写真、ただの日常の写真。
されど、そんな写真が救いにさえなる時があると思う。

元通りにはならない生活、もう見ることはできない風景。
だからこそ、写真として残っていることに価値があるのではないか。

田んぼの水路に迷い込んでしまうほど、鮭であふれた木戸川
海を開けばたくさんの人で賑わった海水浴場
防風林に囲まれていた緑いっぱいの村上キャンプ場
のりの養殖が盛んだった松川浦
浪江・山奥の秘境の美しい風景
日曜日に消防訓練のある双葉町

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全部、忘れてほしくない。

福島の外から来た、直接的に被災もしていない私がこんな風に願うのはおこがましいかもしれないし、もしかしたら誰かを傷つけてしまうこともあるかもしれない。

それでも、私はこの写真集出版のクラウドファウンディングを応援したくて、このnoteを書きました。最後まで読んでくださってありがとうございます。

最後に・・・まだまだ広報が行き届かず、実は厳しい状況です・・・。
もしよろしければ、ご支援お願いします!!(1月31日午前11時まで)
シェアも大歓迎です。

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★写真展情報
双葉郡にある「ふたばいんふぉ」で1月23日より、同写真集に併せた写真展が開催しています。

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★須賀さんの挑戦について、まとまっている記事はこちら
・いわき経済新聞:https://iwaki.keizai.biz/photoflash/413/

(すべての掲載写真は、須賀さんの許可をいただき、クラウドファウンディングページから転載させていただきました)





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