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草大福と素の自分

「俺は野ブタの上に花を降らせるつもりだった。
人気者の修二君を投げ捨てても降らせるつもりだった。
それは たぶん あの二人が好きだったから。
あの二人といる自分が好きだったから。」
『野ブタ。をプロデュース』より


「りこちゃん、美味しい?」
「うん、美味しいよー。」
りこちゃんは ニコニコ、とっても嬉しそうに 草大福を食べます。
こざる達も そんな りこちゃんを見て ニコニコ笑顔です。

今日も、りこちゃんと こざる達は、皆で一緒に のんびり、
お喋りしながら おやつの時間です。

「昨日のドラマの 最後のシーン、何だかとってもよかったよね。」
「あの三人の手帳が 落とした時に入れ替わってしまっていて、それぞれが違う人の手帳を見てっていう帰り道だよね。」
皆、うんうん頷きます。

「いつもカッコいい 人気者の修二君を装っている自分が、素の自分に気がついて、
それが居心地がいいんだって、そんな自分が好きなんだって思うんだよ。」
「頑張って かっこつけなくても、他人の目を気にしなくても いいんだよ。」
「そんな素の自分でいられる友達が、きっと本当の友達だよ。」
「よく見られるようにって着飾ったりしなくていいんだよ。」
「この草大福みたいにね。」
「りこちゃんと僕たちの大好きな草大福みたいに?」

こざるちゃんが得意そうに言います。
「もっと凝ったお菓子は沢山あるよね。お洒落なケーキみたいに、様々な材料が必要な複雑な手順のお菓子。
でも大福は、材料も少なくて、手に入りやすいものだけだし、作り方もいたってシンプルで、
すごく素朴なお菓子だけど、こんなに美味しいし、皆、大好きだよね。」
皆、うんうん頷きます。

大福は材料も作り方も、文字にすると数行で終わってしまいます。

「でもね、それだけに 質のいい素材で丁寧に手間ひまかけて作らないと、出来上がりの差は大きいんだよ。」
「そうだね、味を大きく左右するよね。」
「ありのままの自分も きっと同じなのかも? マニュアル本を読んで真似するとかじゃなくて、
いい素材で、じっくり時間をかけて、自分を作っていくんだよ。」

本来の自分に、ちゃんと自分で気がつくことも大切なのでしょう。
どうしたら自分が心地よく、そのままで心地よく過ごせるのか、
それに気がつくのは自分だけです。

「自分らしく素直に生きるって、実はそう簡単ではないよね。」
こざるちゃんが呟きます。

「でも、だからこそ大切なことだよ、きっと。
自分を見失っちゃいけないよって、りこちゃんも よく言ってたよ!」

りこちゃんは にこにこ頷きます。
口元に大福の白い粉がついています。

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
また気温が下がるようですので、どうぞ皆様、ご自愛ください。
よい毎日でありますように (^_^)

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