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野菜室

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秋茄子を嫁に

秋茄子を嫁に

茄子の漬物が大好きだ。
色鮮やかな紫の皮は噛むとキュッとして弾け、内に秘めた茄子の甘みを塩気とともに口と脳に広げてくれて心を満たす。ほどよく締まった果肉の食感は、茄子、食べています!と実感させてくれる。

夫は茄子の漬物が好きではない。
皮がかたい、噛み切りにくい、茄子は全体的に柔らかくしたのが食べたい。とろっとろのやつ。これは食べ物全般にこんな感じなので、私とは食感に対する好みが真逆なのだろうと

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千切りノック

千切りノック

2年弱ほど、夫の実家で同居していた。
義両親は高齢ではあるが義母は元気な人で働いたり趣味に動いたりしており、食事に関しては私にほぼ任せられた。買い物は私がメインで、たまに義母が少し買い足してくる感じだった。

完全同居だったので、台所は完全共有である。義母の台所という意識はどうしてもあるので、話をよく聞き意向に沿うよう使い、食の好みも年代も違うしなるべく取り入れていこうと頑張った。まあ頑張りすぎて

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急緩婆

急緩婆

小学校の家庭科の授業で、胡瓜を2ミリ以下の薄さで30秒で50枚切る、みたいな試験があったおかげで、あれからこれまで何本切ってきたかわからない輪切り胡瓜の全てに試験の気持ちがオマケでついてきた。

授業の中の試験は2人1組で進められた。自分は必死の形相と必死の包丁捌きで、組になった友人よりもトントントントン音を立てるボリュームが早い上とても大きかった。ぎこちない早送りのように、合格しなければというそ

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かりかりいぼいぼグリーン

かりかりいぼいぼグリーン

数年前まで、私にとってゴーヤは苦手を超えて『食べられない・食べなくても良い』エリアに存在していました。

私とゴーヤの物語は、夏になると緑のカーテンを作る義母が「試しに1本食べてみて」とくれた小ぶりなゴーヤを、まずは食べ物と認識するところから始まったのです。

まだ夫と2人中野のアパートに暮らしていた頃。玄関ドアを開ければいきなりキッチンとお見合いの狭い部屋。
シンクの前でどうすれば良いのかと見つ

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