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絵本出版しました!子どもたちが日本について知るきっかけを作りたい…

先日、"Yuki in the Snow" というタイトルの絵本を出版しました。以前、音声配信の中で発表した物語ですが絵本にするにあたり、一部表現を変え、イラストレーターさんにかわいらしい絵を描いていただきました。

そんなわけで、今回は物語に込めた思いなどをまとめたいと思います。

※念のため先にお伝えしておきます。普段の記事より長い約4500字です。

物語が生まれたきっかけ

今年の6月から7月にかけてロンドンにある国際モンテッソーリ協会(AMI)のトレーニングセンターが行うオンラインコースを受講しました。3-6歳児クラスのアシスタントを養成するためのコースです。

ある日、その授業の中で子どもたちに語り聞かせるためのお話(narrative story)を作り、発表するという課題が出されました。

受講中は英語力が至らず落ち込むことが多くありました。

そんな状況で

「自分で語り聞かせの物語を作って発表するなんて…」

と当時はものすごく憂鬱でした。

「せめて何か自分の個性を出せる方法はないか?」

と考えた時に、

「このクラスにおいて、日本人であることはそれだけで個性かも!」
「自分にしか作れない物語ができるかもしれない!」

そうひらめいて日本人を主役にすることを決めました。

それまで抱えていた重い気持ちがチャンスに変わった瞬間でした。

たくさんの人に日本を知ってもらいたい

日本人を主役に決めた理由は他にもあります。

私は現在アメリカ南部の田舎町に住んでいます。来て間もない頃、ショックを受けたのは日本の認知度の低さでした。

これまで私が滞在した国・エリアは比較的アジア人がめずらしくないエリアだったので、日本を知っている方も多くいました。

日本国内でも通訳案内士として外国人観光客の方を何度かご案内したことがありますが、当然ながらゲストは日本のことを知っている方ばかりでした。

しかし、アメリカに来てから会う人の多くは日本と中国・韓国の区別がつかないどころか、そもそも日本を知らないなんて方もおり、ショックと同時に自分自身の視野の狭さを痛感しました。(東アジアの国々は同じという認識のようです…)

元々、日本の魅力を伝えたいという思いから通訳案内士になりましたが、アメリカに来てからは日本という国を知ってもらうにはどうすればいいのか、という方向に意識が変化していきました。

子どもが人種の多様性に触れる機会を

オーストラリアの大学に1年間留学したことがあります。

アジア人であることで少し苦い経験をしました。その思い出が心に残っていたこと、またアメリカで住む予定のエリアが白人の多いエリアだったこともあり、渡米前の一番不安は、息子(当時4歳)がアジア人という理由でいじめられるのではないかということでした。

しかし、いざプリスクールに通い始めてみたら、そんな心配は一切不要でした。

人種など関係なく友達と仲良く遊ぶ姿を見て、「子どもって素晴らしい!」と、とても感激したことを今でもよく覚えています。

その後モンテッソーリのアシスタントコースの中で0~6歳の子どもには環境を丸ごと吸収する力があるということを学んだ時にその謎が解けました。

この時期の子どもにまだ「何が正しい/間違い」という感覚はない。
この時期に経験したことはその後の人生において、血となり肉となる、それは思考を越えて体の一部になる

▲こちらのDr.モンテッソーリの言葉を

▼私は以下のように解釈しました。

0~6歳の子どもは「差別をすることはいけない」と教えられなくても、日常にいろんな人種の人がいるという環境に身を置くことで、その多様性を自然に受け入れられるようになる。

話は少し逸れますが、何でも吸収するこの時期、人種問題に限らず大人が抱く差別や偏見も子どもはそのまま吸収します。ですから大人の振る舞いはとても重要です!(自戒の念も込めて書きました。)

子どもが現地の子どもたちと楽しく遊ぶ様子を見たり、私自身がモンテッソーリ教育を学んだりしたことで、幼いうちから多様な人種に触れる重要性を実感していたため、人種の多様性に触れる機会をつくるという点においても日本人が主役のストーリーを英語でつくる意義を感じました。

モンテッソーリにおける物語の選択基準を採用

子どもにはどんな本や物語を選ぶべきか?アシスタントコースでは以下のように習いました。

◆Reality
現実的なもの(0-6歳の子どもは大人が言うことすべてを信じるので現実的な絵やストーリーが好ましい)
※モンテッソーリは決してファンタジーを否定しているわけではなく、第2期(6歳-12歳)以降の子どもにはOKとしています。
◆Everyday events
子どもの日常生活について書かれているもの
◆Nature & Animals
自然や動物の生態について興味関心を広げるもの
◆Culture
自国の文化を伝えるものや異文化についての理解を深めるもの
◆Art
美しいイラスト、写真やコラージュなど子どもがアートに惹かれるようなもの

個人的には、どの項目においても「子どもの興味関心を広げる」という観点で考えればわかりやすいと理解しています。

これらの中で私が意識したことは、Reality、Nature、Cultureの3つの要素です。

Reality:日本という国、日本人の女の子を題材に選択。さらに日本で生まれ育った私が書くことでよりRealityを出せると考えました。
Nature:自然、雪を題材に選択。雪が解ける描写など、雪が降らないエリアの子どもたちにも自然に関する興味や学びを引き出せるようにしました。
Culture:日本という国の存在を知ってもらうことに加え、「雪(ゆき)」という日本語も覚えられるようなストーリーにしました。

絵本化にあたり、上記の3点に加えてArtについても考慮し、イラストレーターさんを探しました。

絵本出版を決めた理由

話を一度、今夏のオンラインコースに戻します。

物語をクラスで発表したところ、zoom画面上には拍手マークがいっぱい!チャット欄も「Mapleよくやった!」「いい話だね!」というメッセージで溢れました。(ちょっと大袈裟かも?あくまでの私の主観…)思った以上に良い反応がありとてもうれしかったです。

さらに、「クラスメイトの何人かが出版したら?」と勧めてくれたこと、そして何より私自身が内容を気に入ったこともあり、本にして残したいという気持ちが芽生えました。

偶然にもKDP(Kindle Direct Publishingを使いAmazonから自費出版ができるシステム)を使い、アメリカで本を出版した友人がおり、彼女から本が無料で出せること、注文が入ってから印刷されるため在庫を抱えなくていいという話を聞いていました。

もちろん、話を聞いた当時は私には無関係な話だと思っていましたが、ふとこの話を思い出し、記念に出版することを決めました。

これも偶然ですが、アメリカに本棚を多様化するという活動を行っている友人がおります。

彼女によると「家の本棚を調べてみると、白人が主役の本の割合が圧倒的に多い、本棚にいろんな主人公の本を置きましょう!」ということで、このグループでは様々な人種の子どもが主人公の物語をシェアしています。

こういった視点から本を見るようになったことで、アメリカでアジア人が主役のお話はあまり多くないことに気がつきました。

さらに日本人が主役のお話に関して言えば、日本語絵本の英語翻訳版を除き、目にする機会がなかったので、そういった点においてもこの物語をアメリカで本にする意義があると感じました

(※私のリサーチ不足で実際には存在するかもしれません。)

絵本にはたくさんの可能性があります。言語習得や愛情を育むことはもちろんですが、子どもがこれから生きていく世界について学ぶこと、さらに自分が住む外の世界について知ることも絵本が持つ力だと思います。

実際に日本を訪れたり、日本人と出会ったりする機会はすべての人にあるとは思いませんが、絵本を通して少しでも日本に触れることで、将来日本に興味を持ってもらうきっかけになるのでは…という希望を抱いています。

いよいよ完成!

10月には完成しており、下旬に発売する予定でしたが、事務的な部分で色々ありまして…一時は出版をあきらめることも覚悟しました。でもなんとか形になりホッと一安心といったところです。

初めは思い出づくりの一環として本にするつもりでしたが、出版したからにはやはりたくさんの人に読んでほしいという気持ちもあります。

もし皆さんがアメリカなど海外にご友人などいらっしゃいましたら、この本をすすめていただけるとうれしいです。

ストーリーは日本を知らない人が聞いたらちょっと「おっ!」と思っていただけるような構成を意識しています。

ちなみに、これまでのリアクションをみたところ残念ながら日本人の反応はイマイチです…(ストーリの特性上、仕方ありませんが)

アメリカでしか購入できないと思っていましたが、アメリカ以外にも、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア、イギリス、そして日本のamazonでも買えることが判明!(おそらくカナダも)

各国における印刷の品質はよくわかりませんが…確かめる方法がないので。もう信じるしかありません。

嘘は言いたくないので正直に申しますと、紙質はわりと薄めです。自費出版ですし、良質の紙という選択肢はなかったので仕方がありませんが、ちょっと残念ポイントでした。

とはいえ、私にとっては、とても特別で大切な本です。

結びに…

絵本 "Yuki in the Snow" の出版はきっと小さな小さな一歩に過ぎません。

それでもいつか人種の多様性が当たり前に受け入れられる世界になるように、私なりにできることをしていきたいと思っています。

色々な気持ちがありすぎて、何をどう伝えれば良いのか…この記事をまとめるのに時間がかかってしまいました。しかも長い…

読みにくい文章だったかと思いますが、ここまでお読みいただきありがとうございました。

▼日本在住の方はこちらからご購入いただけます。

参考文献:
Davis, Simone. "The Montessori Toddler." New York, Workman Publishing, 2019.
Montessori, Maria. "The Secret of Childhood." Amsterdam, Montessori-Pierson Publishing Company, 2017.

▼こちらのnoteサークルに参加しています。メンバーの皆さんから色々教えていただきとても勉強になっています!


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