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美術館で会いましょう(絵画紹介その2)

緊急事態宣言の延長で美術館もまた休業!?と思っていたら時短営業に。
ようやく美術館に行けるチャンスが!嬉しいので今日はアートについて語ります!
美術館で絵と出会うことの素晴らしさを知ってほしい。

今回紹介する絵は、2017年BUNKAMURAミュージアム「ベルギー奇想の系譜」展で出会った1枚。

<レテ河の水を飲むダンテ>ジャン・デルヴィル
(筆者撮影のポストカードで失礼)

全体が青で描かれている中、外からやってきた者と象徴するような朱色のダンテ。とても綺麗で、なんだか苦しい思いがあるように見えて、すぐに目を奪われました。

横の解説には、レテ河の水を飲むことで恋焦がれた人への罪を忘れるダンテといったことが書いてありましたが、私はダンテについても教科書に載ってた名前だな、程度の知識…
なので今回、この絵はどんなシーンを描いたものなのかを私なりに調べてみました。

レテ河とは、黄泉の国にある河で、河の水を飲んだものは生前の記憶をなくすそうです。地下に降りた死者の魂が、転生の前に飲む水。

(話はそれますが、韓国ドラマ『トッケビ』でも死者が生前の記憶を忘れるために、死神の茶房で”現世の記憶を消すお茶”を飲むシーンがあります。水は流れ循環することから、記憶や魂を流すというイメージは共通なのでしょう。)

ダンテは実在したイタリアの詩人です。代表作『神曲』は、名前だけでも知ってる方は多いのでは。

彼は9歳のときに出会ったベアトリーチェという少女に心を奪われます。18歳の時に再会をしますが、その恋心を本人に知られたくないがために他の女性に詩を送ったりして結果ベアトリーチェに嫌われ、彼女は他へ嫁ぎダンテも許嫁と結婚。24歳でベアトリーチェが病死したことを知ると、半狂乱に取り乱したそうです。(やべえ男じゃん…)

そして生涯をかけてベアトリーチェを永遠の存在として賛美していくことを誓い、『神曲』を執筆し、作品の中でベアトリーチェを主人公ダンテを助ける永遠の淑女として描きました。


ダンテ、なんて面倒くさい男…


『神曲』は地獄編、煉獄編、天国編の三篇で構成された詩です。ダンテ自身が地獄、煉獄、そして天国を旅するというストーリー。

絵は主人公のダンテが地獄と煉獄を巡り、天国にたどり着いてそこに流れる忘却の河レテの水を飲むという場面が描かれています。

天国にたどり着いたダンテは、そこでベアトリーチェに彼女への愛を貫かなかったことで責め立てられます。悔恨の念で生き絶え絶えのダンテは卒倒。どんだけ責められたんだ…
目が覚めたダンテは淑女マテルダ(絵の女性)にレテ河へ連れていかれ、彼は前世の憂いを忘却させるその水を飲む。
ダンテの右手に持っている花はユリで、純潔を表すそうです。
懺悔し、罪を流し、純潔を誓う、そんな絵でしょうか。



今回のように自分が少し気になった絵がどんな場面を描いたものなのか、そこにどんな物語があるのか、少し深掘りしてみると面白いかもしれません。

アートを理解する、と言ってしまうとなんだか高尚で複雑な感性を求められているようで気負ってしまうけど、
「なんか好きだな」から描かれているテーマについて調べてみたり、同じテーマ、同じ作者の作品を見てみたり、枝葉を伸ばしていくような楽しみ方もあります。



心惹かれるアートに、出会いに行きませんか?



私も改めて神曲を読んでみようと思いました。





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