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1人目の客になれた話 四条河原町南編

令和4年10月8日

 涌井慎です。趣味はオープンしたお店の1人目の客になることです。今日は新規オープンではなく「リオープン」のお店があるんですが、あんまり細かいことは気にしないので行くことにしました。何のお店なのかもよくわかっていません。

 11時半オープンで地図を見てみると四条河原町を南に下がったところです。これはおそらく今日磔磔でワンマンライブをする片山ブレイカーズのベースの方が働いている、私がリニューアルオープン1人目の客になった地球屋さんの近くではないのかしら。

 四条烏丸を10時45分頃に出発。これで11時には着けるはず。四条通りを歩いていましと、何人か、私の「1人目の客Tシャツ」を奇異なものを見る目で見る人とすれ違います。それでいいのです。私はそういう目で見られたくてこれを着ているのです。「どんなTシャツを着るのも自由なんだから、そんな変わったものを見る目で見てはいけません」なんて言わないでほしいのです。私の最大の敵は無関心なのだ。

 ロレックスのお店の前に行列ができており、オープン前に並ぶとか、アホなんとちがうかなと思いました。

 四条河原町の交差点で信号待ちをしていると色褪せた赤いTシャツを着たおっさんが奇声をあげていました。手を叩き、リズムをとっていました。なるべく近寄らないでおこう。こういうおっさんには無関心を決め込むのが一番です。

 11時には、四条河原町南に到着したのですが、ここが私のアホなところで、地図でだいたいの場所を確認しておきながら、詳細な場所を確認していなかったのです。河原町沿いを北へ南へ何往復かしてみたものの、そのような店がない。一件、胡蝶蘭がやたら並んであるところがあり、「これか!」と思ったら歯医者さんでした。

 絵本のメリーゴーランドも入っている壽ビルまで南下しましたが、さすがにこれは下がりすぎやろ、と思い、再び北へ上がると、地球屋の並びにボーダーシャツのお兄さんが入口の扉を拭いているのが見えました。ひょっとしたらあれではないかと近づいてみたら、そのお兄さんが声を掛けてくれ、「オープンは11時半ですよ。来るの早すぎでしょ!」と笑ってくれました。

 お兄さんはこの店の店長さんで、オープン前の忙しい時間を割いて私に話しかけてくださったのです。オープン前にこんなに話し込んでも大丈夫なのかと思いましたが、オープンするまでは私のことを「無」のように扱うお店が多いなか、こんなに話しかけてくださるのは嬉しいことです。

 さっきから女性が私の後ろに並ぼうとするのですが、店長さんが「オムライスなら2階です」と伝えると階段を上がっていく、ということが3度ほど繰り返されました。2階はインスタグラムでもバズりまくっている人気店らしい。いっぽう、店長さんのお店は、リオープン前から、さほど繁盛しているというわけではなく、店長さんは今回のリオープンを機に店長になったそうなんですが、僕のこの手で立て直してやるんだという気概を感じました。

 そんなお店ですから、オープン前から並ぶような客は私1人でして、もちろん無事1人目の客にはなれました。レジカウンターで注文してから席につくスタイル。レジでは女性スタッフが待っており、店長さんは私の「1人目の客Tシャツ」を彼女に見てみるよう促しました。「ウケるー🤣」とか「ヤバい何それー」か忘れましたが、けっこう笑ってくれたのでよしとする。

 NYチキンオーバーライスというランチメニューを注文。ランチにはフライドポテトが付き、ドリンクセットは880円で、なかなか良心的なのです。そうかと思えば、USアンガスステーキ700グラム5千円とも書いてあり、なかなかよくわからないお店でもある。こちらのステーキはリオープン前にほとんどオーダーされたことが無いらしい。こういう店が私は好きだ。

 880円なので千円札一枚を出しますと、もちろん120円返ってきたのですが、「やばい。リオープンやのに10円玉がもう1枚しかない」と頭を抱えておられます。女性スタッフに「悪いけどその辺の自販機でジュースか何か買ってきて」とおそらく百円玉を2枚、手渡し、「110円か120円かのを買えば10円玉を稼げるからね」と説明したうえに「100円のやつ買ったらあかんよ」と丁寧に指示していたのがよかった。あんな店長さんのもとで働きたい。

 しばらく待っておりますと、NYチキンオーバーライスが出てきました。店長さんによる初NYチキンオーバーライスだったらしい。1人目の客なんだからそりゃそうだ。

 無事、女性スタッフが10円玉を稼いで帰ってきましたら、「ランチにはポテトが付くんですよ」と店長にひとこと。そう、私のNYチキンオーバーライスにはポテトが付いていなかったのです。慌ててポテト作りに取り掛かる店長さん。このドタバタした感じが私は好きだ。

 ポテトが出てくる。アイスコーヒーも出てきました。アイスコーヒーにはミルクやシロップは無い。そういうお店なのか、忘れているのか、なんにせよ、私はブラックが嫌いではないのでヨシとする。黙々と食しておりますと、店長さんが「なんか暗いな、これ、電気全部付いてないよな」と独り言のようにつぶやきまして、しばらくしたら店内がパッと明るくなりました。全部付いてなかったらしい。

 私が食べている間にも何組か2階の店へ入っていくのが見えました。相当人気らしいけど、私はこっちの店のが好きだ。

 カランコロンカラン。女性客が1人、入ってきました。おー!お客様!私も嬉しくなってしまった。すでに私はこのお店に愛着を持ち始めています。白いテーブルはガタガタいうけど、それもまた愛くるしいのだ。

 このタイミングで店長さんがお冷やを出してきました。「リオープン前までは、この店、お冷やを出さない店やったんですよ」つまり、このお冷やも店長さんのお店改革の第一歩なのです。全力で応援したい。「今度来てもらえるときまでにはコーヒーもドリップの美味しいやつにしときますんで」と言っていました。もう一度、この店に私が来ると思っておられる。暢気なものだね。まぁ、来るけど。

 令和4年10月8日、四条河原町南、地球屋横にリオープンしたアメリカンファストフード&パブの「Mookie」の1人目の客は私です。

おいしいよ!


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店長さんに撮ってもらいました。

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