見出し画像

読書の記録 『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』

 解説の今井むつみさん(この方の『英語独習法』っていう本もめちゃくちゃ面白い!)が末尾で「ともあれ、本書は最初から最後まで、たいへんわくわくする、知的好奇心を掻き立てられる一冊だ。人はなぜ言語を持つのか、言語をもって人は何をするのか。この巨大な問いを、ぜひ日本の読者のみなさんも著者といっしょに考えて頂けたら幸いである。」と書いていまして、「ほんそれ」でした。

 茶色い猫のことを英語では「オレンジ色の猫」と書いたりするらしい。これは確か、言語学者の鈴木孝夫さんも指摘していました。何も知らなければ「へえ、外国にはオレンジ色の猫がいるのか」と思い込んでしまいがちですが、実際は我々もよく見る茶色い猫のことを「オレンジ色の猫」と表現しているだけなんですよね。

 ホメロスの叙事詩『イリアス』『オデュッセイア』では、海と牛が両方とも「葡萄酒色」と表現されていて「青」はまったく出てこないそうです。だからといって、果たしてその頃の人たちは「青」を認識していなかったことになるのかしら。

 グーグ・イミディル語という言語には前後左右にあたる語がなく、すべて「東西南北」で位置を伝えるらしいんですが、じゃあ、例えばその言語話者は過去にあった恐怖体験についても「3年前に東から来たサメに襲われて〜」などという言い方をするのか?とか、男性名詞女性名詞のある言語では、例えばドイツ人にとって男性名詞である「りんご」は男らしかったりするのかしら?とか。

 今井むつみさんが「「ともあれ、本書は最初から最後まで、たいへんわくわくする、知的好奇心を掻き立てられる一冊だ。」と言うのがよくわかります。

 一つ、すげえな〜と読みながら唸ったのは、一つのことを証明するために実験が繰り返されるのですが、Aを証明するためにBを試みたらCという結果が出て、その結果によって今度はDという問題が発生したので、これを解決するためにEという実験をしたら、今度はFが・・・ということが延々と繰り返されていき、些末ともいえる事実が一つずつ積み重なっていくことにより、やがてそれが常識を覆す大発見になったりするのだということで、地道で緻密な、「そんなもん、何の役に立つねん」と馬鹿にされそうな一つ一つの地味な実験の積み重ねが如何に大切であり、また、結果を求めすぎるあまりに昨今の日本で如何に蔑ろにされてしまっているか、がわかり暗い気持ちになってしまった。と、同時に、こういう世界が存在することに生きる勇気をもらえた気もする。効率を求めるがゆえに本質を失ってしまった貧しい世界のリーダーたちに是非読んでほしい。

 効率が悪いから読まないと思うけど。

#読書  #読書の記録 #早川書房
#言語が違えば世界も違って見えるわけ
#ガイドイッチャー
#椋田直子

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?