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令和6年読書の記録『松村邦洋まさかの「光る君へ」を語る』

 コロナ禍初期に異例のヒットを記録した映画『鬼滅の刃 無限列車編』をご覧になられた方、多いと思います。私は映画は観ませんでしたが、あの大流行に乗せられてコミックは全巻購入いたしました。

 あの大流行の際に私より年配の男性の方が、「すごく流行ってるから観に行きましたけど、あれがヒットするっていうのは、僕はよくわからないですね」とおっしゃっていて、よくよく聞いてみると、どうやらなんの予備知識もなく観に行ったらしい。そりゃあ、わからないだろうと。わかるための準備もせずに観てよくわからなかったから「面白くない」と判断されたらたまったもんじゃありません。ルールも知らずに野球を観に行くのと同じです。わからないのはあなたのせいであり、作品のせいではない。

 こういうことが起こらないよう、予備知識が必要な作品には、ありがたいことに入門書やガイドブックのようなものがあります。謙虚さをどこかに忘れてきてしまった人は己の感性だけを信じて事前に下調べをせずに作品に向き合ってしまう。むしろ、そうすることこそが感性の成熟した大人の作法であるとすら思っている節がある。ああいう大人にだけはならないでおきたい。

 前置きが長くなってしまいましたが、このたび、紫式部が主人公の大河ドラマ『光る君へ』が放映されるにあたり、最低限の予備知識を入れておかねばならぬ、という思いから読み始めたのがこの本です。
 『源氏物語』は読んだことがあるのですが、紫式部と藤原道長がどんな関係だったか、とか、道長の兄弟や親、妻子のこととか全然知らないので、そういうことが書いてある本があったらいいのにな〜と思っておりましたところ、番組開始からしばらく経った頃、誕生日プレゼントとしていただきました。
 この本を読むまでは、毎回毎回、録画した『光る君へ』のオープニングのキャスト紹介のところをいちいち一時停止して、「えーと、道長が三男で、いちばん上の兄貴が井浦新で道隆ね」などとノートに相関図を書き写しながら見ておりました。普段ドラマとか見ないので、俳優さんの名前も全然わからないから、「藤原公任の人は町田啓太さんというのか」「さすがに段田安則は知ってるで」「よく見ると実は吉田羊と段田安則って似てるな」「赤染衛門て女の人なんや!」なんてことをぶつぶつ呟きながら時間をかけて鑑賞しておりました。

 松村邦洋さんは「大河ドラママニア」で、今回に限らず、大河関連の書籍を何冊か出されているみたいなんですが、松村さんの語口が優しくて易しいんですよね。ダブルの「やさしさ」のおかげで、ややこしい人間関係や当時の風習についてもスーッとやさしく頭のなかに入ってきます。塾の講師とかやったら人気が出そうですよね。ビートたけしのモノマネなんかしながらね。

 本来は放映開始前に予習したうえで見るともっとよかったのかもしれませんが、放送と並行して読むことで、わかりやすく解像度が上がっていくのが楽しかったです。いま私、『光る君へ』についてはメガネを新調したときみたいになっております。
 ちょっと詳しい感じの人たちが旧ツイッターで披露しくさる解釈がどうにも鼻について私は苦手なんですが、松村さんのこの本は、そんな私にもやさしく寄り添ってくれます。読めばさらに『光る君へ』が面白くなります。


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