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祇園祭の魅力とは

 私は滋賀県北部出身で、京都の中心部に住まうようになってもう二十年以上経つのであるが、いつまで経っても自分が京都人であるというアイデンティティは芽生えない。たぶん一生芽生えない。京都以外の町はどうかわからないが、京都は京都生まれでもないのに知った顔で京都を語るとアホに見えてしまいかねない怖い町である。しかし、そのいっぽうでアホに見えてしまうという犠牲を払ってでも語りたくなる町でもある。だからみんなが京都のことを語りたがる。

 しかし、うちの子は違う。息子二人は京都で生まれ京都で育った京都人である。友人に呉服屋の倅がいたり、独楽を作ってる職人さんの息子さんがいたりする。京都やな〜と思う。
 
 今日は小学四年生の次男の参観日であった。「総合的な学習」という私が子供の頃にはなかった授業の参観であり、今回はこの日の授業のために時間をかけて調べてきた「祇園祭の魅力」について小学四年生が三年生にレクチャーするというものであった。京都やな〜。

 うちの子のいるクラスでは、四年生が五組ほどに分かれ、それぞれの下調べの成果を三年生に向けて発表していたのであるが、うちの子のグループ含め、何組かはタブレットを駆使して発表していたので今時を感じた。そういうのは、でっかい模造紙を使ってやるもんと違うん?

 女の子四人のグループは祇園祭のお神輿について発表していた。担ぎ手たる輿丁さん、輿丁さんをサポートする留守居さん、本部の人、神社の人の役割について説明を受けた。山鉾巡行じゃなくてお神輿のほうのことを教えてくれるのか、面白いな〜と思っていたら、このクラスは全てのグループがお神輿のほうのことを調べていた。小学校があるのは壬生なので祇園祭の地元というわけではないが、京都に住む京都人にとっては祇園祭といえば、お神輿のほうなのかもしれない。お神輿は三条会商店街までやってくるので以外と山鉾よりもこのあたりの人にとっては、お神輿のほうが馴染み深いのかもしれない。

 うちの子のグループは祇園祭の魅力についてクイズ形式で三年生に出題していた。

●三若のお神輿は何トンあるでしょう?
2トン
5トン
10トン

 うーん、三択問題か。
 そうか、三若のお神輿といえば、確か三条会商店街のあたりに本部があったはず。やっぱりうちの小学校にとってはこっちのほうが身近なのだ。
 正解は「2トン」。
 知らんかった。
 しかし、選択肢に5トンと10トンがあるために妙に軽く思えてしまう。そこは三年生に「そんなに重いんや〜」と思ってもらうために他の選択肢は2トンより軽くすべきではなかったか。

 2トンのお神輿を担ぐので輿丁さんは肩がはれることがあります。という豆知識をいただきました。ラジオが伝えるどこかで聞いたことのある情報よりもよっぽど有意義である。

 お祭り当日に関係者の皆さんが食べる「みこし弁当」は体に良いでしょうか、悪いでしょうか。

 今度は二択だ。私の思ったほうが正解じゃなかったらすごい新事実なんだが、残念ながら私の思ったほうが正解であった。

 「みこし弁当」を食べるのにお金はかかるでしょうか、かからないでしょうか。

 むむむ、今度も二択ではないか。これはどう捉えるかが難しい。白ごはんに梅干し、黒ゴマ、あとはたくわんだったかな、シンプルな「みこし弁当」は作るのにもちろん材料費がかかっているのでそういう意味ではお金がかかっているが、今回の問題の場合はおそらく、無料で食べられるかそれとも有料なのか、ということだと思うので、関係者が食べるんだから、それは無料だろうと思ったら正解は「どちらも」という引っかけ問題である。

 いわく、関係者は無料なのだが、一般の人が食すこともでき、その場合は有料であるとのことであった。なかなかの難問である。

 発表者の何人かが「祇園祭の魅力」について話していて、「みんなが協力しあって作り上げているところ」という意見がいちばん多かったのだが、何人かが、「命がけでやっていること」を魅力として挙げていて、私はそれがなんだかとても恐ろしいことに思えてしまった。お祭りを命がけでしている人たちもそうなんだが、その命がけでしている姿を魅力に思う子供の視線もなんだか恐ろしかったのだ。

 24日には還幸祭がある。せっかく祇園祭のことをいろいろ教えてもらったから、今年は出かけてみようかしら。

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