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読書の記録 乗代雄介『皆のあらばしり』

新潮10月号掲載の乗代雄介『皆のあらばしり』がめちゃくちゃ面白かったから読み終えたさっきから、気分が昂揚しています。実に気分がいいので、しばらくはこの「気分いい貯金」でうまくやっていける気がします。

乗代雄介さんは『旅する練習』っていう、これまた令和3年最高傑作やないかと思う(僕が読んだなかでっていう実に狭い世界ではあるんやが)小説で三島由紀夫賞を受賞していまして、『皆のあらばしり』は受賞第一作でございます。

何が面白くて、何がここまで気分を昂揚させるんかといえば、物語に登場する関西弁のおっさんがめちゃくちゃカッコええんです。ほとんどこのおっさんと浮田青年のやり取りで構成されているといっていいお話なんですが、この謎めいたおっさんが、いちいち芯を突くことを言いよります。

「自分を偽らんのが青年の見込みあるとこやがな。下に偽るならまだしも、上に偽って背伸びされたら話が一向通じんから困ったもんやで」

「学問とは乞食袋の如きもの」
(なんでも取り込んで後で選りわけろっちゅうことやがな)

「損得勘定しかできん初手でやめてしまうアホは、そんなことも理解できんと死ぬまで打算の苦しみの中で生き続けるんやけどなー」

「この世はな、知らんことには、自分が知らんという理由だけで興味を持たれへん。それを開き直るような間抜けで埋め尽くされとんねん」

「接待術はな、結局は思わぬことを覚えておってくれたっちゅうことに尽きるんやで」

こういう実にカッコええけど、どこか胡散くさいおっさんと浮田青年が、どこからが真実でどこまでが嘘なんか、よくわからんやり取りを続けるんですが、ほんまによくわからんかったからもう一回読みたい。ほんでもう一回読んだらたぶん、また関西弁のおっさんのカッコええ台詞が見つかってメモをして、そやけど結局、またどこまでが真実でどこまでが嘘なんかよくわからずにもう一回読んで・・っていうことをしばらく続けてもいいくらい面白かったです。

これは令和3年最高傑作かもしれません。

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